青ブラ文学部 | 指
「うきゃ!」
今のまー(孫なので、まー:以下略)の最大限の喜びの表現のようだ。
人見知りはまだなのだろう、かまえば節操なく愛想を振りまいているように見えるが、放置すればしん、としている。
かまって貰いたいのは根源的な欲求なのかもしれない、マズローの5段階欲求にはなかったはずだけれど…かまって、かまってと表現できないから、しん、としているのだろうけれど、黙っててもかまって貰えるのが分かっているようにも見えるから不思議だ。
お気に入りらしい、ファイティングポーズで固まったまま、上に伸ばした左手を見つめて、哲学者の一面をのぞかせ、考え込んでいる。
まー、婆はもう分かっちゃってるよ。
手は発見したし動かすこともできる。その先にあるこのちっちゃいものが気になるんでしょ?
これは何なのか? 自分で動かせるのか?
これは、夢を希望に、希望を現実に変えてゆく指だ。
一人では成しえないことにも、道具を作り、それを使い、人間は進化してきた。
目指すものをつかめるようにできている。
手のひらと連動して、愛するものを慈しみ、守りたいものを守ることもできる。
いろんなものに触れて、いろんな感触を感じて、自分の意思で自由に動かすことができるようになった頃、きっとかけがえのない相棒になってくれる。
まーの目の前でピースをしてみる。
— ん?
ほら、予想通り、びっくりした目になってる。
ピースから三本指へ。
三本指からキツネの形に変えて、動かしてみる。
— ん、んー?
興味深げに注目し、目線を動かすまーを見て、図らずも、ドヤ顔をしているに違いない自分に苦笑する。
動物たちは、産まれ落ちて数時間もすれば、自身で立ち歩くことができるが、人間は一年近くの時間を必要とする。
それにはきっと理由があるのだろう。
不完全なままに産まれて来るというけれど、まーを見ていると、本当なんだろうか、と思ったりもし、大人から見て『不完全』であるという理屈でしかないようにも思えてしまう。
まーの左手を開き、赤ちゃんあるあるの、握りしめられた埃のような、細い綿毛のようなものをつまみ取る。
驚くほどに長い生命線が頼もしい。
言葉を持たない世界に生きる今、感覚からの波動を受け取り、深層に干渉して、この後の人間としてのまーのベースになりはしないのか?
そんな可能性が拭えず、さまざまな思いを、若干ひからびた婆の指の感覚にまぶして、彼の指をなぞる。
銃の引き金を引くために、この指を使うことのない世界であってほしいとの願いも込めて。
山根あきらさんの企画、裏お題に参加させて頂きたく存じますが、エッセイになっちゃいましたが、可能でしょうか?
今回の募集が創作縛りでしたら、タイトル修正しますので、放置して下さいませ🙏
いつもありがとうございます😊
