にこにこファイナンス
ネット広告で、若い子が笑顔で言う。
「すぐ借りれる!」
「ほかで審査に通らないひとも!」
「誰にもバレない!」
「50万までは収入証明不要!」
「15分で振り込み!」
女子も男子も、ひとりもふたりも、みんなニコニコしている。
「ヤバい!」
「救われました!」
いや、ヤバいのはこの広告だろう。
ほかで審査に通らないということは、少なくとも他社では貸付可能と判断されなかったということだ。その理由までは広告からは分からない。それを「うちなら大丈夫」と、むしろメリットとして掲げる。
収入証明はいらない。
誰にも知られない。
すぐに振り込まれる。
借りるまでに立ち止まる要素を、一つずつ取り除いていく。
そして最後に「救われました」。
借金は十五分でできる。
でも、本当に救われたかどうかが分かるのは、返済が終わった後ではないのか。
そもそも貸金業者が「スマイル」とか「ニコニコ」とか「しあわせ」とか「ハッピー」とか、そういうものを全面に押し出してくると、それだけで怖い。
金を貸すこと自体が悪いわけではない。
だからこそ、なぜそんなに幸福の記号で覆わなければならないのか。
カウカウファイナンスかよ、と思う。
ところが考えてみれば、『闇金ウシジマくん』のほうがよほど分かりやすい。
カオルちゃんは笑わない。
客は青ざめる。
読んでいるこちらにも「ここは危ない」とちゃんと伝わる。
借りた瞬間には助かる。
今日を越えられる。
困っていたことが一旦消える。
でも、その金は返さなければならない。
『闇金ウシジマくん』は、その先まで見せ続けた。
「借金は怖いですよ」と説教するのではなく、借りた人間がその後どうなっていくのかを、何十巻もかけて見せた。
教えてくれてありがとう、カオルちゃん。
あの漫画で、どれだけの人が道を踏み外さずに済んだのだろう。
ありがとう、真鍋昌平。
そう考えると、『ナニワ金融道』も同じだった。
あちらは借金だけではない。
保証人、連帯保証、手形、抵当、差押え、倒産、利息。
世の中には、意味を知らなくても署名したら動き出す仕組みがあることを、漫画で叩き込んできた。
『闇金ウシジマくん』が、金に困った人間がさらに条件の悪い金へ手を出した先を人間ごと見せる漫画なら、『ナニワ金融道』は、契約や制度は「知らなかった」では止まってくれないことを見せる漫画だった。
どちらも人気漫画で、娯楽として読める。
なのに読み終わった人間には、
知らない契約書には判を押さない。
簡単に保証人にならない。
返せない金は借りない。
うますぎる融資話は警戒する。
そんなものが残る。
青木雄二と真鍋昌平が何十巻もかけて築いた防波堤に、
「他で審査に落ちても大丈夫!」
「収入証明不要!」
「誰にもバレない!」
「15分で振り込み!」
「救われました!」
ニコニコ。
満面の笑顔で穴を開けに来るな。
