福建逍遥11〜一生に一度は土楼の村で一晩過ごそう!
福建省田螺坑の土楼。今回の民宿は土楼の外側に部屋があるので、厳密に言えば、土楼に泊まったことにはならない。だが、翌朝まで好きなだけ土楼を眺めていられるのだから、楽しさはほぼ変わらないと思う。(部屋は土楼外のほうが快適)

今では土楼も、かなり観光地化されている。土楼の中には観光客目当ての土産店や、簡易食堂が軒を連ねており、俗っぽさも感じる。まあ、でも細かいことは気にならないような懐の深い魅力が土楼にはあるように感じる。

様々なお店がある一方で、こんな生活空間も。そう、土楼は、世界遺産として知られる国際観光地である一方で、今でも客家の人々が暮らす一般の居住空間でもある。円楼、方楼ともに中央に共同生活空間が作られているのが特徴的で、外敵から身を守りつつ、集団生活を可能にする、清代の建物としては高度な設計思想が盛り込まれている。日中は多くの観光客であふれ返るが、夕方から早朝にかけてはのんびりムードになり、「暮らしの場」としての土楼を体感することができる。

しかしまあ、壮大な建物を作ったものだと思う。田螺坑で現存する土楼で最後のものは、実は方楼の「歩雲楼」。円楼の方は、後に修復されており、最も最近修復した土楼は「文昌楼」で1966年の建立だ。60年選手というと新しい感じさえしてしまうが、長年の歴史的風化により、レトロな雰囲気も自然に感じられるようになっている。

この建物は何だろう?小さく「飯店」の文字が見えるので、かつては土楼前の旅館だったのだろうか?日本とも台湾とも違う一昔前の中国の建物の雰囲気に魅入られてしまう。

夕飯時になり、日もとっぷり暮れてきた。薄暮の中の土楼もなかなか良い。

夜になると、こんな幻想的な空間に変貌する。土楼で一番過ごしてほしい時間は、夜だ。今は、明るくライトアップされていて、多少は現代的な雰囲気に変わっている(のだと思う)が、世界遺産に指定される前の土楼は、もっと暗く、闇の力がつよい世界だったに違いない。
夜になると、観光客の姿はほとんどない。(実は、時々ポツリと夜の土楼を散策する観光客はいるのだが、みんなわざわざ土楼の部屋や周辺の民宿に泊まる「通」なので、マナーもよい)

これは、日帰りツアーで日中のにぎやかな土楼だけ見て帰る人々には体感できない、ちょっと素敵なごほうびだ。この光景を自分の目に焼き付けるには、一泊するしかない。これが、筆者が土楼に泊まろう!と力説する最大の理由だ。

マカオのカジノ街、香港のビクトリアピーク、廈門のコロンス島にも負けない旅の目的地だと筆者は思うが、皆さんはいかがだろうか。

土楼がある田螺坑は、早朝もまた良い。この日は幸運なことに朝から快晴。山ふところに抱かれた村の風景をゆっくり堪能できる。

土楼の中庭にも、朝の暮らしの時間がやって来た。みなここで顔を洗い、歯を磨き、朝ご飯を作るのだ。

さあ、朝ごはんを食べよう。メインは麺料理。具だくさんだが野菜も多く、やや薄味で眠気が残る朝ごはんとしては、優しさが感じられる味わいだった。

そしておかずは、昨晩と同じ。そうそう、家庭のご飯って、おかずは何回も同じのものが出てきていたな。これもむしろ、家庭的な感じでよいと思った。

田螺坑は、土楼の存在がなければ、普通の山村だ。世界の温帯湿潤気候の土地ならどこでも見られそうな、ホッとする風景だ。

肉や野菜、豆などを干す光景も田舎ならでは。

名残惜しいが、そろそろ出発の時間だ。ここで、民宿のご主人が、おすすめのスポットがあるので、そこに立ち寄ってバスに乗るとよいと提案してくれた。
まだまだ百度の情報検索が下手な筆者は、近在の観光地は十分に分かっていない。というわけで、ご主人の車に乗り込んだ。
