【雨乞い難民】#毎週ショートショートnote
その町は、三ヶ月も雨が降っていなかった。
貯水池は底を見せ、市役所の噴水は「節水のため涙を自粛中」という看板を立てている。
そこで町は、伝統にすがった。雨乞いだ。
だが若者は踊らない。動画配信のほうが忙しい。
神主はクラウドファンディングを始め、巫女はスポンサーのロゴ入り装束で舞った。
雨は降らなかった。
やがて町民は隣町へ「雨乞い移住」を始めた。
「こちらは昨年の成功率90%!」という広告に吸い寄せられ、スーツケース片手に民族舞踊を習う。
彼らは自らを「雨乞い難民」と呼んだ。
数週間後。
隣町も晴天続きになった。
原因は単純だった。
町を移るたびに、彼らは雨雲の下から出ていっていたのだ。
気象予報士は小さくつぶやく。
「……定住、という儀式を忘れてますね」
その夜、ようやく空が曇った。
だが町に残っていたのは、踊る気のない老人と、スポンサー契約を失った巫女だけ。
ぽつり。
降り始めた雨の中、老人は言った。
「雨はな、追うもんじゃない。待つもんだ」
翌朝、町は水であふれた。
排水対策の予算は、すべて雨乞いPR動画に使われていた。
(450字)
たはらかにさんの企画「#毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださってありがとうございます! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。