ソフトクリーム~ショートショート #風まかせ文芸部
深夜の街角、灯りもまばらな公園で、彼女は僕の手にソフトクリームを押しつけた。
「ねえ、冷たいでしょう? でも、すぐに溶けて、なくなっちゃうのよ」
彼女の声は甘く、けれど狂おしい。白いクリームが僕の指先を伝い落ちるのを、彼女は恍惚とした目で見つめていた。
「あなたがいなきゃ、私も溶けて消えちゃう」
彼女は舌で僕の指についた雫を舐めとった。心臓が軋むように痛む。理性は逃げろと叫ぶのに、身体は逆らえない。
僕の家族の話をすると、彼女は笑った。ひどく静かに、震えるほど優しく。
「いいの。全部捨てて。あなたの未来も、名前も、何もかも。私だけでいいの。」
彼女の瞳に映るのは僕だけ。その視線が、甘く絡みつき、逃げ道を塞ぐ。
ソフトクリームはすっかり形を失い、どろどろに溶けていた。
僕らの関係と同じように――もう、戻れない……
こちらの企画に参加させていただきました。
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