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【夜行性の黒板消し】 #毎週ショートショートnote
深夜二時。
誰もいないはずの校舎で、「キュッ……キュッ……」という音が響いていた。
警備員の佐藤は懐中電灯を握りしめ、三階の二年B組へ向かった。最近、「夜中に黒板が勝手に消えている」という奇妙な噂が続いていたのだ。
ガラッ。
教室の扉を開けると、そこには――黒板消しがいた。
しかも、二つ。
一つは黒板を猛烈な勢いで左右に滑走し、もう一つは窓際で待機している。
「な、何してる!?」
思わず叫ぶと、黒板消したちはピタッと止まった。
そして、先頭の黒板消しが低い声で言った。
「……昼間は働けないんです」
「は?」
「我々、夜行性なので」
意味が分からない。
よく見ると、彼らはかなり疲れていた。スポンジ部分も擦り減り、白い粉だらけだ。
「昼間の人間たち、ひどいんですよ……」
別の黒板消しが震える声で続けた。
「叩く! 振る! 廊下でパンパンする! あれ、肺にきます!」
「肺あるの!?」
「しかも最近はホワイトボード化が進み、我々の仕事は減少……」
急に社会派だった。
すると先頭の黒板消しが、小さくつぶやいた。
「だからせめて、誰もいない夜だけでも、ちゃんと黒板を綺麗にしたいんです……」
佐藤は少し胸が熱くなった。
「……お前ら、健気だな」
その瞬間だった。
黒板消したちが一斉に佐藤へ向き直る。
「では今夜も、仕上げをお願いします」
「え?」
次の瞬間、十数個の黒板消しがロッカーから飛び出した。
バン! ババン! バババン!!
佐藤の制服は、一瞬で真っ白になった。
翌朝。
職員室ではこう噂された。
「佐藤さん、夜中にチョーク吸ってるらしいよ」
(634字)
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