【木工用バント】#毎週ショートショートnote
草野球チーム「ウッドスターズ」の新人、木村はとにかく打てなかった。
三振、三振、また三振。監督も頭を抱え、「せめてバントくらい覚えろ」と言った。
だが木村は真面目すぎた。
次の試合の日、彼は自信満々で打席に立った。
ピッチャーが投げる。木村は見事にバントの構え。
カン、と軽い音。ボールはコロコロと転がり、三塁線ぎりぎりで止まった。
「うまいぞ!」
ベンチがどよめいた。三塁手が慌てて駆け寄る。
…が、ボールは動かない。
つついても、引っ張っても、ビクともしない。
審判も不思議そうに近づいた。
三塁手が恐る恐る触ると、指にベッタリ何かがついた。
「……これ、接着剤じゃないか?」
ベンチの木村は胸を張った。
「はい!監督が確実に止めろって言ったんで、
バットに木工用ボンド塗ってきました!」
グラウンドは静まり返り、やがて監督が天を仰いだ。
その日、野球史上初の記録が生まれた。
「接着バントによるアウト」である。
(390字)
たはらかにさんの企画「#毎週ショートショートnote」に参加させていただきました!
いいなと思ったら応援しよう!
読んでくださってありがとうございます! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます。