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【詩】君の知らない所で

君の目と太陽が
まっすぐに重なった朝

強すぎる光を
少しだけやわらげるために
雲は
空の端から駆けつける

君はそれを
ただの曇り空だと思っている

君が一人で
うつむいて歩く朝

視界を塞いでいた朝靄あさもや
君の足音を聞くなり
ゆっくりとほどけていく

君はそれを
ただ晴れてきただけだと思っている

君の手が
冷たくかじかむ夜

どこからともなく吹いた風が
街じゅうにこぼれた溜息を拾い集め
そっと両手で包みなおし
小さな温もりに変えている

君はそれを
たまたま風が止んだだけだと思っている

君の涙が
誰にも見つからない場所へ
落ちていった時

土は黙ってそれを受け取り
暗い根の先へ
ほんの少しだけ分け与える

春になって
知らない花が咲いても

君はきっと
それが自分の涙から
生まれた色だとは気づかない

君が眠れない夜

遠くの窓に灯る明かりも
終電を待つホームの白線も
コンビニの冷たい蛍光灯も

みんな少しずつ
君の孤独を薄めるために
夜の中へ残っている

君は何も知らずに
今日も窓辺で
やわらかな朝を受け取っている

まるで
自分ひとりで
ここまで歩いてきたような顔をして

それでも世界は
君を責めない

君が気づかなくても
君が礼を言わなくても
君が背中を向けたままでも

雲は雲として流れ
靄は靄としてほどけ
風は風として
誰かの冷えた手を探しにいく

世界は
一人の力で廻っているわけじゃない

君の知らない所で
誰かの知らない所で

名もないものたちが
ほんの少しずつ
互いの重さを引き受けながら

今日という一日を
倒れないように支えている

だから君が
何も知らずに笑っているのなら

それは
無知ではなく

世界が今日も
君の知らない所で
ちゃんと働いていた証なのだ

そしてたぶん
君もまた

気づかないうちに
誰かの空の
雲になっている



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