見出し画像

ゴシック建築:言葉にできなかった景色

年末年始、帰省したときのこと。
甥と姪に、ふいに聞かれた。

「ねえ、どんな景色が好き?」

少し考えて、言葉に詰まった。
頭の中には、
確かにいくつも浮かんでいるのに、
それを一つにして、
短く答えることができなかった。

その場では笑ってごまかしたけれど、
あとから、少しだけ悔しかった。
あのとき言えなかった「好きな景色」を、
もう一度、
自分の中で考え直してみたくなった。

あのあと、
何が思い浮かんでいたのかを辿ってみると、
山でもなく、海でもなく、
季節の風景でもなかった。

頭に浮かんだのは、
旅先で見た宗教建築だった。

天をとらえるように伸びる構造。
空気が、キンと張りつめる。
外の音がすっと遠のき、
自分の呼吸だけが、やけに大きく聞こえる。

天をとらえるように伸びる天井。
石を積み上げた天井は、
神に近づこうとした人の野望と、
その前に立ちすくむ畏れを、
重さそのままで抱え込んでいる。

上から差し込む光は、
祝福というより、試されているようで、
思わず背筋が伸びる。

あの空間が、私は大好きなのだ。
声をひそめたくなる感じも、
立ち止まって見上げてしまう感じも、
人が何百年もかけて、
目に見えないものを信じようとした痕跡も。

そんな宗教建築の中でも、
私の心を強く掴むのが、ゴシック様式だった。

石畳の一つひとつや、
装飾のひと刻みにまで、
人の祈りと時間を感じてしまう。

イギリス留学中、
『ウェストミンスター寺院』を訪れた。

Westminster Abbey 公式サイトから 重厚感と歴史の重みがすごい。


観光気分で中に入った途端、
空気が変わったのを肌で感じたことを
覚えている。
石の重さと、積み重なった時間が、
そのまま空間になっている場所だった。

あのとき感じた、
キンとした緊張感と、静かな畏れ。

それが、私にとってのゴシック建築であり、
あのとき言葉にできなかった
「好きな景色」なのだと思う。

#エッセイ
#ゴシック建築
#建築
#世界遺産
#ヨーロッパ文化
#好きな景色
#旅の記憶

いいなと思ったら応援しよう!

あんこ🍡/五感で綴る半径1mのユーモア 「ちょっと応援してもいいかも」と思ってくださった方へ🍡いただいたチップは、あんこの執筆燃料として大切に使わせていただきます。