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華やか浅草の美人と、郊外の清楚な美人🍠

久しぶりに、彼と車でデートをした。
少し郊外の道を、走っていた。

信号待ちの合間、彼がふと横を見た。
ほんの数秒。

「あの大学いも屋さん、なかなか渋いな」
(え?どこよ)

私の目には、かすかに古びた建物が
よぎっただけだった。
店だったのかどうかも、正直あやしい。

「え?そんなんあった?」

彼は答えず、そのまま車を走らせる。
そして次の角を、ナビとは違う方向へ
曲がった。

(ん?…)

少しして、彼がニヤニヤしながら言う。
「寄ってもいい?大学いも屋さん」

——やっぱりね。

彼は甘党だ。
大学いもが好きなのも、知っている。
時間にも余裕のあるドライブだったから、
私は素直にうなずいた。


車を停めて店に向かう。
長年営んできた、妙に整った佇まいだった。

小さな店先。
年季の入ったショーケース。
その中に大学いもが、少しだけのった大皿

そして、椅子に腰かけた上品なたたずまいの
ご主人が、静かにこちらを見ていた。

「大学いも、200グラムを2つください」

関西なまりで、彼が注文する。

(わーい♪、私の分もだ)

ショーケースの中には、
かわいらしいスイートポテトもあった。
目で訴えてみたけれど——

「大学いもやろーが!」

即却下( ノД`)シクシク…

…まあ、買っていただけるだけありがたい。

大皿から、芋をひとつひとつ選ぶご主人。
形はばらばら、どれも金色の蜜を
まとっている。

「こちらで、ちょうど200グラムでございます」

量りのメモリが
「ぴったり200グラムですやん!」
思わず彼が突っ込む。

ご主人は少し照れたように、静かに笑った。

長年の勘なのか、手の感覚なのか。
あの手には、
芋の重さがわかるのかもしれない。

ビニール袋に入った、
ほんのり温かい大学いも。
彼は上機嫌でそれを持って、車へ戻る。
その一つを私に渡しながら

「なぁなぁ、そっちのちょっとつまんでみてよ」

——自分のは食べへんのかいっ!

心の中でツッコミながら、袋を開ける。
蜜で手が汚れないように、少し慎重に。

ひとくち、かじる。

ほっこり、とした甘さだった。
控えめで、どこかやさしい。
黒ごまが、いいアクセントになっている。
私は好きなタイプの大学いもだ。

浅草で食べた、あの有名な大学いもが、
『目鼻立ちのはっきりした“美人”』だとしたら
ここのは、
『静かに佇む“清楚な美人”』。

私は清楚系がすき。

私の顔を覗き込み、
感想を待っていた彼にそのまま伝えてみた。

それを聞いた彼は、
少しだけ間を置いて言った。

「大学いもは、大学いもやで」


私たちはよく好みが食い違う。
でも、そのズレをお互い認めている
だから、案外うまくいっているのかも
しれない。

——彼は、浅草のほうが好きらしい。
🍠🍡🍠

#エッセイ  
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#大人の恋愛
#価値観
#デート
#ズレ


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