【国際法でみる『王様戦隊キングオージャー』】 第47話より 王様戦隊の避難計画―執行管轄権の域外適用―
※この記事は国際法の専門家が書いたものではなく、特撮好きの法学部生によって書かれたものです。多少の誤りがあるかもしれませんが、あたたかい目で読んでください。いい勉強になりますので、誤りについてはご指摘いただければうれしいです。
※この記事は作品や作品の登場人物たちを批判する意図で書かれたものではありません。あくまで作品の楽しみ方の一つとして捉えてくだされば幸いです。
※ネタばれ含みます
第47話「神を黙らせよ」あらすじ
覚醒したグローディ(天野浩成)によって、17年前の悪夢「神の怒り」が再び起きた…! 「神の怒り」がチキューを覆い尽くすまでのタイムリミットは、数時間しかない。
この緊急事態からチキューの民全員を守るべく、ギラ(酒井大成)たちは「対『神の怒り』用避難計画」を発動することに。シュゴッダムは救護・避難用シュゴッドを配備し、ンコソパはウルトラコンピュータで被害範囲を予測した後に民の避難誘導をし、イシャバーナは各国のケガ人の救護・治療をし、トウフは国民1人につき米俵1つを持って食で避難生活を支援し、ゴッカンは囚人たちが他の民たちを避難誘導し、狭間の国バグナラクは地下の避難所へやってきた民たちを受け入れた。この計画で6人の王様と、各側近たち、そしてラクレス(矢野聖人)の心の中にあったのは、「誰も死なせない」「必ず全員助ける」「誰一人見捨てたりしない」といった強い想いだ。17年前にはなかったこの団結によって、王様たちはタイムリミット内に民全員を避難させることに成功した。
やがてギラたち王様とラクレスは王鎧武装で変身し、ゴッドキングオージャーを召喚! 7人が乗ったゴッドキングオージャーは、チキューの上空を覆うセミシュゴッドを次々と爆散させ、巨大化したグローディと戦うことに。そして激しい戦闘の末に、ゴッドキングオージャーの必殺技でグローディは倒された。ついに死んで死の国ハーカバーカにやってきたグローディは、静かに眠る…ことは許されず、無数の死者たちに取り囲まれて終わらない苦しみを味わうのだった…。
一方チキューでは、王様たちがシュゴッダムの城の前に集まっていた。イシャバーナ医療班からの最終報告によると、避難したケガ人の治療は完了しており、今回の「神の怒り」における死亡者数はゼロだった…! チキュー上の全員の命が救われたことに7人は安堵し、笑顔で肩を組み、喜びを分かち合った。こうして再びチキューの危機を救った王様たちは、いよいよ宇蟲王ダグデドとの決戦に挑む。『王様戦隊キングオージャー』最終章の幕が開けるのは、また次のお話…。
テレビ朝日「ストーリー|王様戦隊キングオージャー」(https://www.tv-asahi.co.jp/king-ohger/story/0047)」より引用
執行管轄権は、国家が法令を実際に執行するための管轄権であり、物理的強制力を伴うことから、他国の領域主権との抵触が大きいという特徴があります。そのため、一般国際法上、執行管轄権は原則として自国領域内でのみ行使することが認められ、自国領域外における一方的な行使は禁止されています。例外として、公海上における追跡権の行使など、国際法上明確な根拠が認められる場合に限り、域外における執行管轄権の行使が許容されています。
もっとも、近年の国際社会では、国家が域外で執行管轄権を一方的に行使する事例がみられます。とりわけ、2001年の米国同時多発テロ以降は、テロリストの不処罰や逃亡先の安全地帯化を防止する観点から、犯人・容疑者を拘束するための域外法執行を正当化する主張が強まっています。特に、テロリストの滞在国がこれを取り締まる意思又は能力を欠く場合や、国際連合安全保障理事会等の国際的な対応が期待できない場合には、このような主張はより強く展開されています。
このような国際社会の現実を踏まえ、学説上は、①犯罪の重大性及び対応の必要性・緊急性、②執行国が当該事案について緊密かつ重要な管轄権上の連関を有し、被執行国が破綻国家又はこれに類する状況にあること、③執行の手段・方法が必要最小限度であり、目的との関係で合理的であること、という要件を満たす場合には、一方的な域外執行を国際法上違法と評価するのではなく、対抗力を有する法的行為として認めるべきであるとの見解も示されています。
もっとも、一般国際法上、国家管轄権の拡張的行使について明確な基準は確立されていません。そのため、従来は、明らかに過剰な事例でない限り、適法性そのものの問題としてではなく、他国が異議を唱えるか否かという対抗力の問題として処理されてきたとされています。もっとも、このような対抗力の議論は、従来は主として規律管轄権や裁判管轄権の域外行使について論じられてきたものであり、これを執行管轄権の域外行使にも適用しようとする点に、上記学説の特徴があります。
また、近年では、国家は国際社会共通の利益を実現するため、条約に基づいて一定の国家管轄権を行使することが求められる場面が増えています。しかし、公海上の海賊行為への対応などを除けば、条約が執行管轄権の域外行使まで認める例は依然として少数です。そのため、国際社会共通の利益の実現が要請される場合であっても、執行管轄権の域外行使は原則として制約され、国家の同意又は当該利益実現のための必要性が認められる場合に限り、例外的に許容されると考えられます。
さらに、国際社会共通の利益の実現を目的とする条約は、その起草過程における国家間交渉を通じて各国の利害調整を経て成立していることから、その条約の文言及び趣旨に従った域外法執行は、たとえ結果として自国利益の実現にも資するものであったとしても、国際社会共通の利益に適合するものとして評価され得ます。他方、このような利害調整済みの条約上の枠組みを逸脱する域外法執行については、自国利益のみを理由とする域外法執行以上に厳格な審査が求められると考えられます。
王様戦隊の避難計画
王様たちは、王様戦隊が策定した避難計画に基づき、「神の怒り」に際して各国の民の避難を成功させました。
もっとも、この避難計画を実施するに当たり、六王国は互いの領域内において、本来であれば他国の執行管轄権との抵触が問題となり得る措置をいくつか講じています。具体的には、①ンコソパ王・ヤンマが他国民に対して避難を呼びかけたこと、②イシャバーナが他国へ医療団を派遣したこと、③六王国が自国民をバグナラク国へ避難させたこと、④トウフ国王・カグラギがヤンマおよびその側近を避難させるため、相手国の承諾を得ることなく避難装置を設置させたことなどが挙げられます。
これらはいずれも、国家が自国の執行管轄権を他国領域において行使したものとして評価される余地があります。一般に、執行管轄権の域外行使は、相手国の同意や国際法上の根拠がない限り、主権平等原則に反し、国際法上違法となるのが原則です。
しかし、本件では、これらの措置が王様戦隊という六王国の共同意思決定機関とも評価し得る組織の策定した避難計画に基づいて実施された点が重要です。①から③については、六王国があらかじめ王様戦隊の避難計画を受け入れ、その実施に必要な国内法上の権限を整備した上で相互に協力していたのであれば、各国は互いの領域における執行活動について事前に同意していたと評価できます。その結果、これらの域外執行は国際法上も適法と評価する余地があります。
他方、④については事情が異なります。カグラギが緊急の判断として独自に命じた措置であり、トウフ国内法上は国王の命令として根拠があるとしても、他国における執行活動を正当化する国際法上の根拠が存在したとは必ずしもいえません。そのため、原則としては国際法上違法となる可能性があります。
もっとも、本件は災害という極めて切迫した状況の下で、人命救助を目的として行われた措置でもあります。そのため、国際法上の緊急避難といった違法性阻却事由を類推する余地があり、少なくとも違法性の評価を緩和する事情として考慮することには一定の合理性があるでしょう。
参考文献
<書籍>
・加藤信之、萬歳寛之、山田卓平編『概説国際法』(2024年、有斐閣)第4章「国家」IV「国家管轄権」104-110頁。
・萬歳寛之編『海洋法』(2024年、信山社)12「公海」「旗国主義の例外」50-51頁。
・村瀬信也『国際法論集』(2012年、信山社)10「国際法における国家管轄権の域外執行-国際テロリズムへの対応-」171-202頁。
