【国際法】武力の行使と国内法執行上の実力の行使
※この記事は国際法の専門家が書いたものではなく、法学部生によって書かれたものです。多少の誤りがあるかもしれませんが、あたたかい目で読んでください。いい勉強になりますので、誤りについてはご指摘いただければうれしいです。
※この記事は特定の国や人物たちを批判する意図で書かれたものではありません。
武力の行使と国内法執行上の実力の行使の区別については、学説上、主に二つの見解があります。
第一に、実力の「量」に着目し、武力の行使と最小限度の実力の行使を区別する見解です。
第二に、実力行使主体の「敵対的意図」に着目し、明確な敵対意思を伴うものを武力の行使とし、偶発的な実力行使をこれから除外する見解です。
国際裁判例も、両者を区別する立場を採用していると解されています。また、国内法執行上の実力行使についても、国際法上許容されるものと違法となるものとを区別しています。
例えば、スペイン対カナダ漁業管轄権事件において、国際司法裁判所は、カナダの実力行使について、資源管理措置の執行として一般的に理解される範囲内のものであるとして、武力の行使には当たらないと判断しました。これは、国内法執行上の実力行使と武力の行使とを区別したものと解されています。
また、2019年のウクライナ対ロシア暫定措置事件において、国際海洋法裁判所は、ロシアによるウクライナ艦船の拿捕・抑留について、停船命令違反を受けた警告射撃や船体射撃という文脈を踏まえ、法執行活動として評価しました。
他方、2007年のガイアナ対スリナム海洋境界画定事件では、スリナム海軍による「退去しなければ結果に責任を負うことになる」との警告について、通常の法執行に伴う警告の範囲を超えるものとして、武力による威嚇に該当すると判断されました。
さらに、核兵器の威嚇又は使用の合法性に関する勧告的意見において、国際司法裁判所は、武力の行使それ自体が違法である場合には、そのような武力による威嚇も同様に違法であると述べており、武力の行使と威嚇との密接な関連性を認めています。
以上を踏まえると、国内法執行の名の下であっても、その態様が通常の執行の範囲を逸脱する場合には、国際法上違法な武力の行使に該当し得ると解されます。
また、国際裁判例は、許容される国内法執行上の実力行使について、必要最小限度性および最終手段性を要求しています。例えば、1999年のサイガ号事件(No.2)において、国際海洋法裁判所は、実力行使は可能な限り回避されるべきであり、不可避の場合であっても合理的かつ必要な範囲に限定され、かつ最後の手段としてのみ許容されると判示しました。
<参考文献>
【書籍】
・加藤信之、萬歳寛之、山田卓平編『概説国際
法』(2024年、有斐閣)第15章「安全保障」Ⅰ
「武力行使禁止」2「武力行使禁止の内容」
395-396頁。
・兼原敦子、酒井啓旦、西村弓編『国際法判例
百選〔第3版〕』(2021年、有斐閣)XV「平和
と安全の維持」「「武力の行使」と「実力の行
使」との区別-ガイアナ対スリナム海洋境界画
定事件」216-217頁。
【論文】
・坂元茂樹「中国海警法制定後の海上保安-武器
の使用基準をめぐって」奥脇直也、坂元茂樹
編『海上保安法制の現状と展開 : 多様化する
海上保安任務』( 2023年、有斐閣)206- 225
頁。
