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【国際法】武力不行使原則

※この記事は国際法の専門家が書いたものではなく、法学部生によって書かれたものです。多少の誤りがあるかもしれませんが、あたたかい目で読んでください。いい勉強になりますので、誤りについてはご指摘いただければうれしいです。

※この記事は特定の国や人物たちを批判する意図で書かれたものではありません。

国連憲章2条4項
 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
 All Members shall refrain in their international relations from the threat or use of force against the territorial integrity or political independence of any state, or in any other manner inconsistent with the Purposes of the United Nations.

武力の行使と国内法執行上の実力の行使
 武力の行使と国内法執行上の実力の行使の区別については、学説上、主に二つの見解があります。
 第一に、実力の「量」に着目し、武力の行使と最小限度の実力の行使を区別する見解です。
 第二に、実力行使主体の「敵対的意図」に着目し、明確な敵対意思を伴うものを武力の行使とし、偶発的な実力行使をこれから除外する見解です。
 国際裁判例も、両者を区別する立場を採用していると解されています。また、国内法執行上の実力行使についても、国際法上許容されるものと違法となるものとを区別しています。
 例えば、スペイン対カナダ漁業管轄権事件において、国際司法裁判所は、カナダの実力行使について、資源管理措置の執行として一般的に理解される範囲内のものであるとして、武力の行使には当たらないと判断しました。これは、国内法執行上の実力行使と武力の行使とを区別したものと解されています。
 また、2019年のウクライナ対ロシア暫定措置事件において、国際海洋法裁判所は、ロシアによるウクライナ艦船の拿捕・抑留について、停船命令違反を受けた警告射撃や船体射撃という文脈を踏まえ、法執行活動として評価しました。
 他方、2007年のガイアナ対スリナム海洋境界画定事件では、スリナム海軍による「退去しなければ結果に責任を負うことになる」との警告について、通常の法執行に伴う警告の範囲を超えるものとして、武力による威嚇に該当すると判断されました。
 さらに、核兵器の威嚇又は使用の合法性に関する勧告的意見において、国際司法裁判所は、武力の行使それ自体が違法である場合には、そのような武力による威嚇も同様に違法であると述べており、武力の行使と威嚇との密接な関連性を認めています。
 以上を踏まえると、国内法執行の名の下であっても、その態様が通常の執行の範囲を逸脱する場合には、国際法上違法な武力の行使に該当し得ると解されます。
 また、国際裁判例は、許容される国内法執行上の実力行使について、必要最小限度性および最終手段性を要求しています。例えば、1999年のサイガ号事件(No.2)において、国際海洋法裁判所は、実力行使は可能な限り回避されるべきであり、不可避の場合であっても合理的かつ必要な範囲に限定され、かつ最後の手段としてのみ許容されると判示しました。

武力行使禁止の範囲
① 経済的強制は武力の行使に含まれるか
 国連憲章2条4項の起草過程において、「経済的手段による威嚇又はその行使」を明文で含める提案が採用されなかったことから、一般に、経済的圧力は武力の行使には含まれないと解されています。
② 叛徒への支援は武力行使に当たるか
 国際司法裁判所はニカラグア事件において、兵器供与や後方支援などの形態による叛徒への援助は、武力による威嚇又は武力の行使に該当し得ると述べました。
 もっとも、資金援助については、武力の行使ではなく、不干渉原則違反にとどまるとされています。
③ 「領土保全・政治的独立」要件の解釈
 「いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも」および「国際連合の目的と両立しない方法によるものも」という文言は、武力行使の禁止を限定する趣旨ではなく、むしろ これを強調する趣旨で挿入されたものと解されています。したがって、特定の目的の下であれば武力行使が許容されるという趣旨ではありません。
④ 内戦と武力不行使原則
 国連憲章2条4項は、「国際関係において」武力の行使を禁止しているため、一国内における政府と叛徒との間の内戦には直接適用されません。
 しかし、第三国が武器供与などにより叛徒を支援する場合には、その行為は国家間関係における武力の行使として評価され、武力不行使原則に抵触する可能性があります。

<参考文献>
【書籍】
・加藤信之、萬歳寛之、山田卓平編『概説国際法』(2024年、有斐閣)第15章「安全保障」Ⅰ「武力行使禁止」2「武力行使禁止の内容」395-396頁。
・兼原敦子、酒井啓旦、西村弓編『国際法判例百選〔第3版〕』(2021年、有斐閣)XV「平和と安全の維持」「「武力の行使」と「実力の行使」との区別-ガイアナ対スリナム海洋境界画定事件」216-217頁。

【論文】
・坂本茂樹「中国海警法制定後の海上保安-武器の使用基準をめぐって」奥脇直也、坂元茂 樹編『海上保安法制の現状と展開 : 多様化する海上保安任務』( 2023年、有斐閣)206- 225 頁。


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