3〜4月ベストオブ読了本レビュー(ネタバレなし)
毎日、次々入る現実世界のニュースに気が滅入っているせいで、いつもより強く別世界を求めている気がする。そして1冊が終わる度、この世界に本があって良かったとしみじみ思う。
▶ガダラの豚 1~3巻

アフリカの呪術や超能力、新興宗教を巡る人間ドラマを描いた長編小説
なんだこれは。面白いではないか。
呪術と聞くと、なんだか奇妙な話なのかと思いきや、話の要素は多岐にわたる。ミステリーっぽさもあり、途中でホラーっぽい様子もあり、なんとアクションもある。そして、なんとなく社会の枠にハマらないような常軌を逸した雰囲気を醸し出し、発する言葉はいつも皮肉めいている主人公。皮肉だが、読んでいるこちらが不愉快に感じることがなく、全部面白い。アフリカ人の通訳者にも関西弁(それもコッテコテの関西弁)をしゃべらせる。さすがに大阪・尼崎生まれ、中島らもである。常にジメッと漂う不気味な雰囲気と、個性の強い登場人物たち、予測のつかない話の展開…。ちょっくら冒険してかえってきたみたいな読後感でした。文章も、ユーモアも、話の内容も、最高に面白かった。
▶砂糖の世界史

甘くて白くて誰もが好むひとつのモノにスポットをあて、近代以降の世界史の流れをダイナミックに描くジュニア新書
どこかでお勧めされたと思ったら、本屋の入り口にも並べられているではないか。これは買うしかねえ…と思い即購入。この本は砂糖の生産方法や、用途、流通ルート以外に、どのような人が砂糖生産に関わってきたのかというところが興味深い。アフリカから黒人たちが奴隷として連れてこられた航海がどのようなものであったのか、黒人たちがどういう生活を強いられたのか…。白人たちが好んだ「上品」で「高貴」と言われた砂糖は、「下品」で「野蛮」だと思われていたアフリカ人たちの汗と涙の結晶だった。そんな人種差別を真っ向から突き付けられる砂糖の歴史に、まあ読んでいて中指を立てたくなるような気持ちにはなる。が、ジュニア新書をなめてはいけない。こちらは大人こそ読むべき本だ。
▶母という呪縛 娘という牢獄

母を殺した娘の背景にあったのは、医学部入学を目指した9年間の浪人生活だった
こちらの口コミは、キックボクシングのトレーナーからだった。大学院で刑務所の中の人権問題について論文を書いたと言う話をしていたら、お勧めをしてくれた。お勧めされたのが約2年前。訳あって今の今まで手が出せなかった。「殺人」はいかなる場合でも許されることではないが、私が主人公だったら…と考えた時に残念ながら別の逃げ道が思い浮かばない。相手が倒れるか、自分が倒れるかという選択肢はあまりにも究極だが、そうするしかないように思えてしまう。『親ガチャ失敗』と現代の言葉では言うのだろうが、こんな簡単な言葉で説明ができないほど、辛い。毒親の元に生まれるのは決して自分の意志ではないのに、生まれた後に「生きる」選択肢しかないこの世は残酷だ。経済的にも物理的にも自立できない時期に、こういう経験をしている人はきっとたくさんいると思う。そしてそのトラウマは何十年経っても消えることはない。そういう人達の状況を理解し、寄り添える大人でありたいと思った読書体験だった。
▶なぜ東大は男だらけなのか

なぜ東大が女性の“いない”キャンパスなのか、大学と社会の在り方を問い直す一冊
東大は男だらけらしい。ここだけ聞くと、たまたま入学した優秀な人達が男だったという話なのだろうと思ってしまいがちだが、蓋を開けてみるとそうではないようだ。東大女子お断りのサークルの存在、時代遅れのジェンダーバイアス、いまだに蔓延る家父長制など、戦後男子校として開校された東大が共学になってから今に至るまで、今なお根本的に見直さなければならない倫理観と制度があった。東大に進学した戦後の女性が実際に残した記録や、アメリカの大学共学化と比較した時の日本の意識の違いが、明確に記されていてとても興味深い。【やばすぎ怒】と書いた付箋をたくさんつけてしまうほど腹立たしい記録も多いが、この本を読まなければ日本のトップと言われる東大の実情は知らないままだったと思う。8割が男性学生という現状は、まだ日本が世界に遅れをとっているという点で考えるべきテーマなのかもしれない。
