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指先が覚えている残像

カーテンの隙間から差し込む光が、私のまどろみを柔らかく解いた。
シーツの皺、部屋の空気。すべてが「彼がそこにいた」という証拠を並べていた。寝ぼけた脳は当たり前のように、枕元にあるスマホを引き寄せる。
「あ、今日何時に終わるんだっけ」
唇が、声にならない音を紡ごうとした。指が画面をなぞり、数通の通知をスワイプする。

そこで、世界が凍りついた。

画面に並ぶのは、SNSの更新通知と、天気予報と、広告。彼の名前なんて、このデバイスのどこにも記録されていない。
一分前の自分には、確かに彼の鼓動が聞こえていたのに。
液晶の冷たさが、私の妄想を無慈悲に突き放す。あぁ、そうだった。私はただ、彼の背中を追いかけるだけの「その他大勢」に過ぎなかった。
夢の中で重ねた指の感触は、私の脳が勝手に作り上げた、あまりにも美しく、どうしようもない欠陥だった。



あの頃。
夢小説を執筆したり、メルマガでショートストーリーを載せて配信していたことを思い出して懐かしくなったので、久々に。

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