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#25|値段を相手任せにするな─3分の裏にある20年

年末の忘年会にて、こんな話を聞きました。

友人の親御さんが家のカギを無くしてしまい、カギ屋さんを呼んだら3分で開けてもらえたけど、料金は1万円。
「3分で開いたんやから、もうちょっと安くしてや」って値切って、カギ屋さんは値引きに応じたそうです。

この話、どう思います?




1.時間で値段を決める、という落とし穴


正直、家主の気持ち、分からんでもないですよね。
3分で1万円って、時給20万円ですよ。
「高っ!」って思うのは、まあ普通の感覚かもしれません。

わたしたちって、小さい頃から「働いた時間=お金」って考え方で育ってきてますからね。
時給いくら、日当いくら。
だから、かかった時間で価値を測ってしまう。
これはもう、染み付いた癖みたいなもんです。

でもちょっと待ってください。
もしこのカギ屋さんが来るのが遅くて、しかも1時間もガチャガチャやってたら、家主は文句言わずに1万円払ったんでしょうか?

一番助かったのは「すぐに家に入れた」ってこと。

外は雨だったかもしれない、客先との約束に遅れそうだったかもしれない。
そんな困った状況を3分で解決してくれたこと、これが一番の価値なんです。

問題が早く片付いたことが最大のメリットなのに、不思議なことに、その「早さ」が「安くすべき理由」にすり替わってしまう。
おかしな話ですよね。


2.3分の裏にある20年


なんでこのカギ屋さんは3分で開けることができたんでしょう。

もし昨日カギ屋さんになったばかりの新人さんだったら、1時間やっても開かないかもしれない。
下手すりゃ鍵を壊してしまう。

もしこの人が20年のベテランだとしたら、その3分は、ただの3分じゃないんです。
氷山の一角みたいなもんで、水面の下には20年分の経験と知識がどっさり隠れてる。

その20年って何か。
まず、カギ屋さんになるための勉強と修行の時間がありますよね。
親方について習ったのか、学校に通ったのか。
何十、何百時間もかけて、いろんなカギの仕組みを覚えて、バラして、組み立ててを繰り返したはずです。

それからプロになって20年。
何千、何万という現場を経験してきた。

古くてサビだらけの鍵、最新の電子ロック。
うまくいかなくてお客に怒られた失敗もあれば、新しい道具に何十万円も使ったこともある。
仲間と情報交換したり勉強会に行ったり、全部ひっくるめて「20年」なんです。

これだけの経験が頭に入ってるから、カギを見た瞬間に「あ、このタイプね。あの方法で一発だ」ってピンとくる。
家主は、3分の手間賃を払ったんじゃないんです。
20年分のノウハウが詰まった、最高の解決策を買ったんです。


3.値段は誰が決めるのか


この話の残念なところは、カギ屋さんが値引きに応じてしまったことです。
自分の価値を決める権利を、分かってない相手に渡してしまった。

とは言え、その場で「この3分には俺の20年が詰まってるんですよ」なんて説明するのも、なんか言い訳っぽくて言いにくい。
多くの職人が同じ悩みを抱えてます。

だからこそ大事なのが、自分の価値を相手に分かるように説明する力です。

例えば、こう言えたかもしれない。

「お待たせしました。すぐ開いてよかったです。実はこのタイプのカギ、ちょっと特殊でして、慣れてないと1時間以上かかったり、カギを壊しちゃうこともあるんですよ。長年やってるおかげで、すぐに解決できました」

自慢じゃなく、事実として相手が得した部分をサラッと伝える。
自分の仕事の見えない部分を、見えるようにしてあげる。
これからの職人には、腕がいいだけじゃなく、こういう説明する力も必要になってくると思います。


4.時間じゃなく、仕上がりで決まる


時間がかかれば高くていいってもんでもない、ってことです。

例えば、下手な歯医者さんが簡単な虫歯治療に1時間もかけて、「丁寧にやったから高いです」って言われたら、誰だって怒りますよね。
それはただ下手なだけですから。

大事なのは、時間の長い短いじゃない。
その職人が持ってる経験と腕、そしてそれが生み出す「最高の仕上がり」なんです。

カギ屋さんの場合、「3分で開ける」が最高の仕上がり。
歯医者さんの場合は「丁寧で早くて、痛くない治療」が最高の仕上がり。

腕が足りなくて最高の仕上がりができなければ、いくら時間かけても価値は上がりません。


5.職人へのリスペクト


これは、サービスを受ける側にとっても大事な話です。

プロがめちゃくちゃ手際よく問題を片付けてくれたとき、「なんや、簡単やんけ」って思うのか、「さすがやな。長年やってるからこその速さやわ」って思うのか。
この差は大きいです。

最初の話が教えてくれるのは、目に見える作業時間ってのは表面だけでその裏にある見えない経験の時間にこそ本当の価値がある、ってことです。

何と評価されるかを相手任せにしてはいけない
つまり「値段を相手任せにするな」ってことです。


6.ちょっと考えてみてください


最近、プロにお金を払って何か頼んだときのこと、思い出してみてください。
機械の修理でも、美容師さんでも、誰でもいいです。

もし思ったよりずっと早く終わったとしたら、あなたはどう思いました?
「簡単やったんやな」ですか?
それとも「さすがプロやな」ですか?

今日の話を聞いて、その価値、どう見直せますか?

そして、もしあなたが職人として誰かに何かを提供する立場なら、自分の「20年と3分」の価値、ちゃんと伝えられてますか?

ぜひ一度、考えてみてください。


✨️この記事書いた人✨️

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