22時の地下マックは無法地帯
今日は低気圧のせいか、晴れ予報だと思って昨日疲れた身体にムチ打って洗濯物を干して出てきたのに普通に雨降っていて、さすがにこれは干し直しかぁ?と萎えていたのもあるし、私の推しが大阪で凱旋ライブをしているのに行けないのも、今日公開の映画「ミーツ・ザ・ワールド」を見にいけなかったことも相まって、なんだか心の内が曇り模様で進んでいた。
極め付けは退社間際の出来事。
いつもは音楽がかかっているのに漫画のように「シーン」という言葉がオフィスに浮いてみえるほど皆が地蔵で静かなオフィス空間が、ひとつの話題で盛り上がっていた。私はその話題のコトを知らないので、トークには参加せずに1人黙々とPCと睨めっこしながら、〈もういい時間だし集中力もここまでか…〉と思って帰る準備をした。
リュックを背負って「お先に失礼します」とトークが盛り上がってほとんどの人に届いていないなか、そそくさとオフィスの玄関ドアへの方へと向かった。
私が帰るのに気づいた社長が後ろから「おつかれーすっ」と声を投げてきたのがギリ聞こえてきたので、お疲れさまです! とまた小さく返してオフィスのドアを開ける。
奥の方から「怒ってる⁈」という声まで聞こえてきて、誰かがなにかフォローしているのが、エレベーターを待っている間、閉まったドアからボワボワと聞こえてくる。そしてドッと笑い声が聞こえてくる。
いやな金曜日。
金曜日は休みを迎える素晴らしい日なはずなのに。
昔から「笑ってください」とか「怒ってる?」とかよく言われるけど、社会的に必要なくらいは笑ってるつもりだし当然に怒ってもない。申し訳ないけど生まれつきこういう顔なんです。
新卒のときに部長から「笑って」と言われた、こっちからしたら理不尽な言葉まで芋蔓式に思い出されて、ますますモヤモヤな帰り道。
映画館の入った建物を横目に
あー映画見たかったな、
と思いながら駅へ向かう。
今日は華の金曜日なのに。
夜ご飯を作るのを考えるだけで億劫になり、
なんとか今日を挽回しようと、カフェに寄って本を読もう!と決めた。
最寄りから少し手前のターミナル駅で降りて、22:30までやっているスタバに入るもまさかの満席。
この駅ではココくらししか遅くまでやっているカフェはない。諦めて帰ろうとしたが、どうも家に帰りたくなくて最終手段のマックに入った。
何を食べるか決まらぬうちに、注文をする巨大タッチパネルの列が私の番になり、内心あわあわしながらメニューをスクロールする。
このタッチパネル、バーガーというか一つ一つのメニューに対して値段が書いてない・・⁈
なんと恐ろしい。
たかだか数百円の違いなんぞ気にするなってか。
もうなんとでもなれっと思いながらいつかXでバズっていた「サムライマックのトリプルを食べたらストレス吹っ飛ぶぞ」というのを思い出してここはジャンキーなやつ行ってやろうじゃねーかと値段のない写真だけでなんだかジャンクそうな「炙り醤油風 たまごベーコン肉厚ビーフ」をチョイス。22時前のなかなかにいい時間だが今日という日は背徳ヤケクソナイトだ。セットのポテトとドリンクのサイズまで選択してようやく「¥880」とNOと言わせない金額に出会えた。
しばらくして「ニーニーサン、ナナのお客様ッ」と、区切るとこそこなんだと思いながらやたら通る声で私の番号が呼ばれて、レシートの「2237」を見せてトレーを受け取り、地下の座席への向かう。階段を下りながら既に酸素が薄くなりつつある空気と、油と甘さが混じった独特の匂いに嫌な予感がした。
階段を抜けると、全員が文化祭帰りのような勢いを背負ったティーンエイジャーとPCワーカーとでゴッタ返していた。
げっ。
これは、、無法地帯だ。
運良く2名掛けのテーブルが空いていたけど、その隣は2名掛けテーブルが3つ連合された6名掛けにされた若者の島と化していて、ソファ席側はその子たちの荷物がこちらのテリトリーまで侵食していた。
ノイズキャンセリングをmaxにして音量を上げてお目当てのサムライマックにがっつき、冷めたポテトを2、3本セットで頬張りながら、人が喋りすぎて確実に酸素が足りていないこの無法地帯をよくよく観察していると不思議とさっきまでモヤモヤしてたのが薄れていく。
大きなハイテーブルを自分たちのテリトリーにするグループ。演劇で使うような背中に背負う羽が足元の荷物置きに置かれていたり、ノイキャンを突き破ってくるほどの「バイバーイ★」「お疲れぇ卍」の仲間を見送る声。40代らしき女性2人組がポテトのLを3つトレーにのせて頬張っている。一体何時までトーキングするつもりなのだろか。
このアジアの国の夜のような乱雑な空間と多種多様な人たちにもはや今食べてるこのバーガーに異物混入していても納得できるとすら思えてくる。
雑多すぎる22時のマックの地下空間に、私の煩悩もゴマスリのように擦られてこの変な匂いに溶けていく気がした。
