特許法134条の2 特許無効審判における訂正の請求
ここからは、少し難しくなります。
特許法134条の2では、特許無効審判が請求された場合の特許権者側の対応策の一つが規定されています。具体的には、「訂正の請求」です。
特許権者は、この訂正の請求により、特許請求の範囲を無効理由のない形に訂正(補正ではない)することで、無効理由を解消できます。無効理由を解消できれば、特許無効審判によって、特許権が無効になることはありません。
訂正請求の要件と、最後の拒絶理由通知に対する補正の要件とで、特に異なるのは、「特許請求の範囲の減縮」が限定的減縮であるか否かです。
訂正請求では、限定的減縮でなくてもよいので、発明特定事項の外的付加もできます。
無効審判に対する訂正請求ができるのは、本条1項に規定する5つの期間だけです。具体的には、
①無効審判請求書副本の送達に伴う答弁書提出期間(特134条1項)、
② 審判長が審判請求書の請求の理由の要旨を変更する補正を許可したときにおいて、その審判請求書の手続補正書の副本送達後における答弁書提出期間(特134条2項)、
③審決取消訴訟において権利維持審決が判決により取り消されたときに権利者の求めに応じて行う訂正の請求のための指定期間(特134条 の 3)、
④職権によりされた無効理由通知に対する意見書提出期間(特153条2項)、
⑤審決の予告に対する訂正の請求のための指定期間(特164 の 2第2項)、
です。
複数回訂正請求した場合、最後の訂正請求のみが有効になります(134条の2第6項)。これは、複数回訂正請求するのは、前の訂正請求に間違いあったためと考えられます。つまり、特許権者の意思をもっとも良く反映しているのは、最後の訂正請求と考えられるからです。
訂正請求の一部取下げはできません(134条の2第7項)。一部取下げをした場合は、訂正明細書の補正により訂正事項の一部削除を行います。
・特許法134条の2
(特許無効審判における訂正の請求)
第百三十四条の二 特許無効審判の被請求人は、前条第一項若しくは第二項、次条、第百五十三条第二項又は第百六十四条の二第二項の規定により指定された期間内に限り、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。
2 二以上の請求項に係る願書に添付した特許請求の範囲の訂正をする場合には、請求項ごとに前項の訂正の請求をすることができる。ただし、特許無効審判が請求項ごとに請求された場合にあつては、請求項ごとに同項の訂正の請求をしなければならない。
3 前項の場合において、当該請求項の中に一群の請求項があるときは、当該一群の請求項ごとに当該請求をしなければならない。
4 審判長は、第一項の訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面を受理したときは、これらの副本を請求人に送達しなければならない。
5 審判官は、第一項の訂正の請求が同項ただし書各号に掲げる事項を目的とせず、又は第九項において読み替えて準用する第百二十六条第五項から第七項までの規定に適合しないことについて、当事者又は参加人が申し立てない理由についても、審理することができる。この場合において、当該理由により訂正の請求を認めないときは、審判長は、審理の結果を当事者及び参加人に通知し、相当の期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えなければならない。
6 第一項の訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす。
7 第一項の訂正の請求は、同項の訂正の請求書に添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面について第十七条の五第二項の補正をすることができる期間内に限り、取り下げることができる。この場合において、第一項の訂正の請求を第二項又は第三項の規定により請求項ごとに又は一群の請求項ごとにしたときは、その全ての請求を取り下げなければならない。
8 第百五十五条第三項の規定により特許無効審判の請求が請求項ごとに取り下げられたときは、第一項の訂正の請求は、当該請求項ごとに取り下げられたものとみなし、特許無効審判の審判事件に係る全ての請求が取り下げられたときは、当該審判事件に係る同項の訂正の請求は、全て取り下げられたものとみなす。
9 第百二十六条第四項から第八項まで、第百二十七条、第百二十八条、第百三十一条第一項、第三項及び第四項、第百三十一条の二第一項、第百三十二条第三項及び第四項並びに第百三十三条第一項、第三項及び第四項の規定は、第一項の場合に準用する。この場合において、第百二十六条第七項中「第一項ただし書第一号又は第二号」とあるのは、「特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第一項ただし書第一号又は第二号」と読み替えるものとする。
