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特許法 先使用権が及ぶ範囲

●ポイント

 実施又は準備をしている発明の範囲とは、先使用権者による実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいい、先使用権の効力は、特許出願の際に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶ

●解説

 先使用権が及ぶ範囲ですが、「その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」(特許法79条)とされています。
 
 以前は、「その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内」の具体的な意味について、
①特許出願の際に、現に実施している実施形式に限定されるという説と、
②現に実施している実施形式に表現された技術と発明思想上同一範疇に属する技術を含むという説(発明思想説)と、
がありました。

 この点について、最高裁は、ウォーキングビーム事件(最判昭和61年10月3日・民集40巻6号1068頁)において、発明思想説の立場から、
「『実施又は準備をしている発明の範囲』とは、特許発明の特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に日本国内において実施又は準備をしていた実施形式に限定されるものではなく、その実施形式に具現されている技術的思想すなわち発明の範囲をいうものであり、したがつて、先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である」と判示し、
具体例として、「その実施形式に具現された発明が特許発明の一部にしか相当しないときは、先使用権の効力は当該特許発明の当該一部にしか及ばないのはもちろんであるが、右発明の範囲が特許発明の範囲と一致するときは、先使用権の効力は当該特許発明の全範囲に及ぶものというべきである。」と判示しています。

●参考文献
・小泉直樹・田村善之(編)『特許判例百選 第5版』(有斐閣,2019年)56,57ページ

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