民法 不動産賃貸借権の物件化と、不動産賃貸借権に強い保護を与えることについて
1.不動産賃貸借権の物件化の内容
人が安定した社会生活の基盤たる建物を所有する場合、その建物が建てられた土地の所有権(民法206条)を確保することが最も望ましい。
しかし、経済的事情により土地の所有権を確保できない場合、地上権(民法265条)の保有を検討することとなる。
地上権は強力な権利であるため、地上権が設定されると土地所有者に大きな負担となる。このため、実際には地上権ではなく、債権である貸借権が用いられることが多い。
債権である賃借権では長期的で安定した土地利用の確保が難しいという欠点がある。そこで、社会生活の基盤たる建物所有を目的とする土地貸借権において、賃借人の地位の保護・強化が課題となっていた。
このような状況・課題を受け、借地借家法は、建物所有を目的とする地上権に借地権という概念を与えて統一的な規律に服させ(借地借家法2条1号)、借地権者(建物所有を目的とする土地貸借人・地上権者)の地位の保護・強化を図っている。
借地権による保護では、①対抗力、②存続期間、③譲渡・転貸が重要である。
まず、対抗力の点では、借地権自体の登記が無くても、土地の上に借地権者が登記された建物を所有していれば、借地権の対抗力が認められる(借地借家法10条1項)。
次に、存続期間の点では、借地権の存続期間は30年以上である(借地借家法3条)。さらに、借地権の存続期間満了の際、一定の場合には契約が更新されたものとみなされる(借地借家法5条、6条)。
次に、譲渡・転貸の点では、借地権設定者(土地所有者)が土地貸借権の譲渡・転貸を承諾しない時でも、借地権者の申立てにより、裁判所が借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができるとする制度が設けられた(借地借家法19条、20条)。この制度は、譲渡・転貸が制限された土地貸借権にとって重要な意味があり、地上権との相違を実質的に縮小している。
このように、現在では、建物所有を特的とする土地貸借権も地上権に類似する効力を持つに至っている。このことを、不動産貸借権の物件化と呼ぶ。
2.不動産賃貸借権に強い保護を与えることについて
前述のように、建物は社会生活の基盤である。この社会生活の基盤である建物が容易に奪われることになると、日本国内における社会生活の基盤が脅かされる可能性がある。このため、不動産賃貸借権に強い保護を与えることは適切と考える。
ただし、不動産賃貸借権に強い保護を与えることは、土地所有者等にとって不利益となる。この不利益を抑制するため、民法は一回の賃貸借契約における最大期間を定めていると考えられる(民法602条)。
さらに、民法は、賃貸借契約の更新を定め(民法603条、604条)、実質的に長期間の賃貸借契約を許容することで、社会生活の基盤である建物が容易に奪われることを防いでいると考える。
●参考文献
・石田剛・武川幸嗣・占部洋之・田髙寛貴・秋山靖浩(著)『民法II 物権 第3版』(有斐閣,2019)187, 188ページ
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