特許法2条1項 発明

 特許法2条1項では、特許法の保護対象である発明についての定義がなされている。「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう(2条1項)

自然法則
 自然界において経験によって見出される法則をいい、例えば、万有引力の法則をいう。自然科学上の法則に限らず、経験上一定の原因によって一定の結果が生ずる経験則も含まれる。自然法則自体、人為的な取決め、数学公式、人間の精神活動にあたるとき、又は、これらのみを利用しているときは、発明に該当しない。

利用
 利用とは全体としての利用をいう。一部に利用しないものがあっても、全体として利用すれば足りる。また、結果として利用すれば十分と考えられる。一定の確実性をもって同一結果を反復できるものであれば足り、その再現性は必ずしも100%である必要性はない。
 再現される確率が低かったものとしては、クローン方法が挙げられる。有名なミキモト特許(特許第2670号、真珠素質被着法)も、初期は再現される確率が低かったのではないかと思う。
 
技術的思想
 技術とは一定の目的を達成するための具体的手段であって、客観性、有用性があるものをいう。思想とは、より抽象的な観念又は概念であるが、一定限度の具体性を要する。そのため、知識として第三者に伝達できる客観性が欠如した技能(フォークボール投球方法等)、情報の単なる提示(機械の操作方法のマニュアル等)、単なる美的創造物(絵画等)は技術的思想たりえない。

・ 創作
 新しく作り出した自明でないもの。単なる発見は創作に該当しない。ここで、新しさは新規性(29条1項)までも要求するものではなく、主観的に新しければよい。作り出したものであるため、単なる発見は該当しない。自明でないとは、創作時に通常の専門家を基準にきわめて容易に考えす事ができない程度であることを要する。


自然法則を利用した発明の具体的条件
(1)反復可能性が必要であるが、その可能性は必ずしも確率が高いことを要しない (最高裁H12/2/29)
(2)反復実施して目的とする技術的効果を奏することができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていないものは発明として未完成であり(未完成発明)、特許法上の発明に該当しない(最高裁S50/10/13)

・ソフトウェア関連発明
 ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を通じて具体的に実現されていることが必要[審査基準]
 ハードウェアと協働して動作する情報処理装置も特許法上の発明である

・用途発明
 用途発明とは、物の特定の性質を発見し、この性質を専ら利用する発明をいう

・物の発明と方法の発明の境界
 方法の発明には時間的(経時的)要素が含まれるが、物の発明には含まれない

・方法の発明と物を生産する方法の発明は厳密に区分される(最高裁H11/07/16 生理活性物質測定法事件)
 本件特許発明は、測定法という方法の発明で、物を生産する方法の発明ではない。そうすると、本件特許権の効力が及ぶのは、2条3項2号の「使用」する行為のみとなり、2条3項1号の「その物の生産」等や、2条3項3号の「その方法により生産した物の使用」等には、特許権の効力が及ばないこととなる。ところが、本件特許発明は、本件特許発明に係る測定法を使用すると、必ず医薬品が製造されるものという特徴がある。方法の使用が同時に医薬品の製造になったとしても、本件特許権の効力は、方法を使用する行為にのみ及び、方法を使用して医薬品を製造する行為には及ばない。すなわち、発明の実施行為としては、方法の使用と医薬品の製造とは同一視することができない。本件特許発明に係る方法を使用すると必ず医薬品が製造されるが、この場合でも、本件特許権の効力は、医薬品を製造する行為には及ばないこととなる。

試験対応)産業上利用できる発明ではないものについて出願すると、29条1項柱書違反で拒絶される。例えば、以下の(1)~(4)である。
  (1) 自然法則自体
  (2) 人間を手術、治療、診断する方法
  (3) その発明が業として利用できない発明
  (4) 実際上、明らかに実施できない発明

試験対応)発明か否かの確認
 問題で、「物α」等の表現を使っており、発明であるか否かが不明である場合には、発明として成立することを確認する。発明イと書かれている場合は、発明として成立している。

いいなと思ったら応援しよう!