特許法113条 特許異議の申立て
1.条文解説
ここからは少し難しくなります。特許法では、成立した特許権の見直や、無効化の制度として特許異議申立(特許法113条)と、特許無効審判(特許法123条)と、を設けています。
具体的事例を使って説明します。
特許庁審査官も、(特許査定すべきではないのに)間違って特許査定を出してしまうことはあるわけです。特許査定が出た後、特許料納付がされると、特許権が新たに設定登録されます。
特許権が新たに設定登録された場合、(1)特許権設定登録されました。良かった!で終わる場合と、(2)良かった!で終わらない場合があります。
これらについて、場合を分けて説明します。
(1)良かった!で終わる場合 について
特許査定出て、特許権が設定登録されると、
(i)出願人は特許権者に昇格し(良かった!)、(ii)特許庁は特許料を得られ(良かった!)、(iii)特許事務所経由の出願の場合には、実績ができ、運が良ければ成功報酬を貰えます(良かった!)。
(2)良かった!で終わらない場合 について
新たに設定登録された特許権に関する技術を使っている会社等が有る場合、特許権が新たにできると困ります。自社の製品生産等が、特許権侵害になる可能性があるからです。
このような場合、その会社にとっては、特許権が無くなれば問題ないわけです。この特許権をなくす手段として、特許権設定登録「直後」の場合には、特許異議申立があり、特許権設定登録「直後以外」の場合には、特許無効審判が設けられています。
なお、特許異議申立は、「何人も」できることになっています。このため、実際に特許権を無くしたい会社等ではなく、ダミーの申立人の名義を借りて申立てを行うことが多く見られます。
これは、特許権を無くしたい会社等が直接特許異議申し立てをした場合、その会社が特許発明を実施している可能性が高いと判断されるためです。つまり、特許異議申立で特許権が無くならなかった場合、特許権者は、直ぐにライセンス交渉や、特許権の行使に移ると思われます。このため、一般的には、ダミーの申立人の名義を借りて申立てが行われています。
2.特許異議申立人が死亡又は合併により消滅した場合、特許異議申立人の地位は承継できない
特許権者が死亡した場合、相続人がいれば特許権を相続することができます。
一方、特許異議申立人が死亡又は合併により消滅した場合、特許異議申立人の地位は承継できないようです(審判便覧22-01, 67-02)。
・審判便覧(第19版)22-01 当事者
特許(商標登録)異議申立事件においては、特許(商標登録)異議申立人の地位は承継できないので、受継のための手続は不要である。取消理由を通知した後であれば、そのまま審理し、決定をするが、取消理由を通知する前のときには、当該特許(商標登録)異議の申立てを、不適法なものとして却下する。
・審判便覧(第19版)67-02 特許権者、特許異議申立人、参加人
2. 特許異議申立人 特許異議の申立ては、利害関係人に限定されず「何人も」することができる(特§113)。具体的には、自然人、法人及び法人でない社団又は財団であって代表者又は管理人の定めのあるもの(特§6①二)が該当する。ただし、匿名では特許異議の申立てをすることはできない(特§115①一)。 なお、特許異議申立人が死亡したときや合併により消滅したときは、申立てについての地位を承継することはできない(→22―01、26―01)。
(参考裁判例)(平成7年12月31日以前の付与前異議のもの) 「異議申立制度は、利害関係の有無にかかわらず何人でも異議の申立ができるものとすることによって、商標登録出願の審査の過誤を排除し、その適正を期するという公益的見地から設けられたものであって、異議申立人たる会社が合併により消滅したときは、それによって異議申立は失効し、異議申立人たる地位が合併後存続する会社に承継される余地はない。」 (最高判昭56.6.19(昭53(行ツ)103号))
・特許法113条
第五章 特許異議の申立て
(特許異議の申立て)
第百十三条 何人も、特許掲載公報の発行の日から六月以内に限り、特許庁長官に、特許が次の各号のいずれかに該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の請求項に係る特許については、請求項ごとに特許異議の申立てをすることができる。
一 その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたこと。
二 その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたこと。
三 その特許が条約に違反してされたこと。
四 その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたこと。
五 外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないこと。
