見出し画像

特許法83条 不実施裁定

 特許法では、発明の保護と利用を通じて産業の発達に寄与することを目的とします(1条)。したがって、発明が利用(実施等)されない場合、特許法の目的を達成することはできませんこの場合の対策として、83条の規定は設けられています。

・過去に3年以上不実施であっても、現在実施中であれば、対象外。

・正当な理由
 特許発明の実施に必要な資金、原料、設備等をやむを得ない事情によって整備することができない場合等

・設定と許諾
 裁定による通常実施権のみが「設定」される。それに対し、通常実施権、仮通常実施権は「許諾」するものである。


(論文試験対策)
 たしか、基本書には、適当に実施されていないの解釈として、(i)単なる名目的な実施をするだけで国内需要に見合うだけの実施をしない場合(量的不適当)と、(ii)特許発明に係る物の輸入のみを行って国内生産をしない場合(質的不適当)との2通りを記載しているケースがあったと思います。量的不適当は論文試験で記載しても問題ないと思いますが、質的不適当はTRIPS27条違反の可能性があります。質的不適当を論文試験で書く場合には、書く前に、TRIPS27条の規定を確認してください。

--------------------
20/12.20追記
--------------------
・特許法83条の特許発明の実施主体について
 特許法を含む法律の大まかな目的は、法律というルールを皆に守らせることで、世の中を良くすることです(特許法であれば、産業発達により世の中を良くする)。
 特許法83条では、特許発明の実施主体は明確にされていません。このため、実施主体が不明だとの疑問が生じるかもしれません。しかし、ルールを守らせることが前提の特許法において、特許権侵害者(ルール違反者)を特許法83条の実施主体に含める解釈は、適切とは思えません。したがって、特許法83条の実施主体は、特許権者、専用実施権者、通常実施権者と思われます。
 この通常実施権者には、許諾による通常実施権者の他に、特許法35条1項の通常実施権者は含まれるはずです(設立趣旨から考えて)。このため、法定通常実施権者も、特許法83条の実施主体に含まれると考えます。

・特許法83条

(不実施の場合の通常実施権の設定の裁定)
第八十三条 特許発明の実施が継続して三年以上日本国内において適当にされていないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。ただし、その特許発明に係る特許出願の日から四年を経過していないときは、この限りでない。
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許庁長官の裁定を請求することができる。

・TRIPS27条

第27条 特許の対象
(1) (2)及び(3)の規定に従うことを条件として,特許は,新規性,進歩性及び産業上の利用可能性(注)のあるすべての技術分野の発明(物であるか方法であるかを問わない。)について与えられる。第65条(4),第70条(8)及びこの条の(3)の規定に従うことを条件として,発明地及び技術分野並びに物が輸入されたものであるか国内で生産されたものであるかについて差別することなく,特許が与えられ,及び特許権が享受される。
(注)
この条の規定の適用上,加盟国は,「進歩性」及び「産業上の利用可能性」の用語を,それぞれ「自明のものではないこと」及び「有用性」と同一の意義を有するとみなすことができる。
(2) 加盟国は,公の秩序又は善良の風俗を守ること(人,動物若しくは植物の生命若しくは健康を保護し又は環境に対する重大な損害を回避することを含む。)を目的として,商業的な実施を自国の領域内において防止する必要がある発明を特許の対象から除外することができる。ただし,その除外が,単に当該加盟国の国内法令によって当該実施が禁止されていることを理由として行われたものでないことを条件とする。
(3) 加盟国は,また,次のものを特許の対象から除外することができる。
(a) 人又は動物の治療のための診断方法,治療方法及び外科的方法
(b) 微生物以外の動植物並びに非生物学的方法及び微生物学的方法以外の動植物の生産のための本質的に生物学的な方法。ただし,加盟国は,特許若しくは効果的な特別の制度又はこれらの組合せによって植物の品種の保護を定める。この(b)の規定は,世界貿易機関協定の効力発生の日から4年後に検討されるものとする。

いいなと思ったら応援しよう!