商標法70条 登録商標に類似する商標等についての特則
本条では、登録商標と「同一」ではなく、「類似」する商標に関する特則が規定されています。本条の規定を簡単にして、色違い類似商標は登録商標と同一、と言われることもあります。
商標の構成要素には色彩が含まれます。このため、文字や図形の色だけを変更した商標というのもあり得ます。そこで、商標の色彩を変えると非類似となる商標を除き、商標の色彩を変えただけの商標であって類似する商標は、登録商標と同一の商標と擬制することとしています(商70条1項)。
注意すべきなのは、文字等が同一であれば、色彩を変更しても同一商標と擬制されるわけではない点です。別の見方をすると、文字等が同一であっても、色彩を付することによって非類似になる場合は、非類似商標になります。
商70条1項で登録商標と同一の商標と擬制された場合に適用されるのは、(a)専用権範囲(商25条)、(b)商標権の効力制限(商29条)、(c)使用権(商30条2項、31条2項、31条の2第1項)、(d)質権設定(商34条1項)、(e)損害賠償請求(商38条3項)、(f)不使用取消審判における商標使用実績(商50条)、(g)移転後の不正使用取消審判(商52条の2第1項)、(h)再審により回復した商標権の効力制限(商59条1号)、(i)防護標章登録要件(商64条)、(j)商標登録表示(商73条)、(k)虚偽表示禁止(商74条)、です。
また、登録防護標章についても、色違い類似商標は登録商標と同一の規定が適用されます(商70条2項)。
登録商標に類似する商標のうち、色違い類似商標であって登録商標と同一と擬制される商標は、使用しても不正使用取消審判の対象外です(商70条3項)。これは、商70条1項で色違い類似商標であって登録商標と同一と擬制される商標に商25条(専用権範囲)を適用しているためです。
ただし、故意に一部着色して他人の著名商標にフリーライドしようとした場合には、例外的に、不使用取消審判の対象になると考えられます。例えば、商標「NELSONYARN」の「SONY」の部分を赤色とし、他の部分を黒色とした場合です。
・商標法70条
(登録商標に類似する商標等についての特則)
第七十条 第二十五条、第二十九条、第三十条第二項、第三十一条第二項、第三十一条の二第一項、第三十四条第一項、第三十八条第三項若しくは第四項、第五十条、第五十二条の二第一項、第五十九条第一号、第六十四条、第七十三条又は第七十四条における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。
2 第四条第一項第十二号又は第六十七条における「登録防護標章」には、その登録防護標章に類似する標章であつて、色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一の標章であると認められるものを含むものとする。
3 第三十七条第一号又は第五十一条第一項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。
4 前三項の規定は、色彩のみからなる登録商標については、適用しない。
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