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特許法48条の2、48条の3 出願審査請求


1.条文解説

 現在の特許法では、出願すれば出願の審査が行われるわけではありません。特許出願の審査を受けるためには、特許法48条の3に規定される出願審査請求をする必要があります。なお、出願審査請求には、所定の費用がかかります。

・出願審査請求期間を7年から3年に短縮した理由
 従来、オランダ、ドイツの例に合わせ請求期間を7年としていたが、長期間にわたり権利の帰趨が未確定な出願が大量に存在することによって次のような不利益を第三者に与えていた。
(i)審査請求を未だ行っていない段階では、明細書の範囲内で特許請求の範囲を自由に変更できるが、事業を進める第三者にとっては未請求案件が膨大であり、その発明の詳細な説明に記載された技術内容まで精査することは不可能なため、特許権を侵害するおそれがある。
(ii)特許侵害をおそれるあまり、不当に広い特許請求の範囲であっても製品の設計変更や代替手段の準備を強いられる
(iii)審査請求や補正の有無を常に監視する必要がある。
 これらの弊害を除くべく平成11年の一部改正において審査請求期間を3年に短縮した。

出願人以外の第三者にも出願審査の請求をすることを認めた理由
 その発明を実施したいと考えている等の第三者が早くその出願の決着をつけたいと考える場合があるのでその要求にこたえるものである。出願公開前に第三者が特許出願の存在を知る場合は少ないであろうが、特許出願人からの事実上の警告などにより知る場合も考えられるため、出願公開前にも第三者の出願審査の請求ができることとした。

(試験対策 論文)
・出願審査請求を審査請求と記載してはならない
 審査請求は処分庁に上級官庁がある時の不服申立手段。

2.優先権の基礎となった出願(特41条)に対する出願審査請求

 優先権を伴う特許出願をした場合、優先権の基礎となった特許出願は、基礎出願出願日から1年4月後に取下擬制となります(特許法42条1項、特許法施行規則28条の4第2項)。

特許出願等に基づく優先権主張は、基礎出願日から1年4月後は取り下げることができません(特許法42条2項、特許法施行規則第28条の4第2項)。ただし、優先権の主張を伴う後の出願が基礎出願日から1年4月以内に取り下げられると、優先権の主張が取り下げられたものとみなされます(特許法42条3項、特許法施行規則28条の4第2項)。

※PCT出願の場合、優先権の取下げだけであれば、優先日から30月経過前であれば、取下げ可能です(PCT規則90の2.3(a)、特許法第184条の15第1項)。ただし、取下擬制となった基礎出願が権利化可能な出願として復活することはありません。

 ここで、優先権の基礎となった出願についても、取下擬制となる前であれば、出願審査請求は可能です。

そして、特許庁からの何らかの通知(拒絶理由通知(特50条)、特許査定謄本送達(特52条2項、等)がなされる前に優先権の基礎となった出願が取下げ擬制となった場合、出願審査費用の一部返還請求(特195条)ができます。

3.権利存続期間と出願審査請求可能期間の延長

 優先権主張を伴う特許出願(後の出願)を行った場合、権利存続期間と出願審査請求可能期間の起算点は、優先権主張の基礎となった出願(基礎出願)の日ではなく、後の出願の出願日になります。

 このため、基礎出願の内容と、後の出願の内容とを完全に一致させた場合、実質的に、権利存続期間と出願審査請求可能期間を延長することができます。

 出願審査請求の請求可能期間は、出願から3年です。
この優先権主張を行うことにより、出願審査請求の請求可能期間を基礎出願日から3年ではなく、4年に延長することができます。

 権利存続期間は特許出願日から20年です。
 この優先権主張を行うことにより、権利存続期間を基礎出願日から20年ではなく、21年に延長することができます。

 国内優先権制度をこのように利用するのは、立法時には予定していなかったと思います。しかし、現状では禁止されていません。

現状では、高い売上品を有する分野(権利存続期間の延長に大きな意味がある)で活用されているという話を聞いたことがあります。

4.早期審査の使いみち

 出願審査請求をする際に、早期審査、スーパー早期審査の申請ができます。

 特許庁が公表した情報によると、早期審査をしてもらえる場合は、早めに審査をしてもらえるようです。

※審査に1年等の長い時間がかかるのは、1件の審査自体に1年間かかるわけではなく、審査着手までの待ち時間が長いからのようです。

通常の審査・審理に比べて、審査結果・審理結果を早く得ることができます。早期審査を申請した出願の平均審査順番待ち期間は、早期審査の申請から平均3か月以下となっており(2017年実績)、通常の出願と比べて大幅に短縮されています。また、早期審理を申請した場合には、申請後、審理可能となってから平均4か月以下で審決を発送しています(2017年実績)。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/v3souki.html

 審査が早く終わるのであれば、権利化のタイミングも早くなります。

このため、他社の実施可能性がある出願は、早期権利化すべきではないとも考えられます。

しかし、国際特許出願のうち、日本語特許出願(PCT出願を日本に国内移行させた出願のうち、日本語でなされた特許出願)では、国際調査報告(SR)を作るのが日本国特許庁である場合があります。

国際調査報告(SR)を作るのが日本国特許庁であって、
 ①国際調査報告(SR)の内容が肯定的(A評価のみ)であり、
 ②出願人側での調査では、進歩性が否定される可能性が見つかった場合、
には、早期審査を利用して権利化する意味は大きいといえます

これは、
①特許権として成立した権利を無効審判等で無効にするのは大変であり、
②自社事業を、特許面で無防備にしたくない(特許が欲しい)という意向もそれなりにある、
という理由で、権利化すること自体に意味があるからです。

5.出願人以外の者による出願審査請求

 出願審査請求は、特許出願日から3年以内であれば、何人もできるのが原則です(特許法48条の3第1項)。

つまり、出願人以外の人であっても、自ら費用負担する場合には、他人の特許出願に対する出願審査請求が可能です。

この他人による出願審査請求をする場合、特許庁に提出する書類の書類名は、

  【書類名】出願審査請求書(他人)

になるようです。

6.出願審査請求がなされたことの確認方法(J-PlatPat)

 特許庁に出願審査請求がなされたことの確認方法について確認してみました。

 出願審査請求がなされた後、特許庁の受理処理が完了すると、その翌日にJ-PlatPatの「経過情報」内「経過記録」タブ「審査記録」のエリアに「出願審査請求書」の書類名が表示され、それとほぼ同時に「出願情報」タブに”審査請求記事 審査請求数(1)”と表示されるようです。

※特許庁の受理処理にかかる期間の詳細は不明です。

※案件により「出願審査請求書」の書類名が表示されない場合があります。
その場合は「出願情報」タブに”審査請求記事 審査請求数(1)”と表示されることで出願審査請求がなされていることが分かります。

●参考情報
出願審査請求書(他人)

・特許法48条の2、48条の3

(特許出願の審査)
第四十八条の二 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。
(出願審査の請求)
第四十八条の三 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3 出願審査の請求は、取り下げることができない。
4 第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる。
6 前項の規定によりされた出願審査の請求は、第一項に規定する期間が満了する時に特許庁長官にされたものとみなす。
7 前三項の規定は、第二項に規定する期間内に出願審査の請求がなかつた場合に準用する。
8 第五項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第五項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。

・特許法施行規則28条の4

(特許出願等に基づく優先権主張の取下げ)
第二十八条の四 特許法第四十一条第一項の規定による優先権の主張の取下げは、様式第四十二によりしなければならない。
2 特許法第四十二条第一項から第三項までの経済産業省令で定める期間は、一年四月とする。

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