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特許法94条 通常実施権の移転等

 一般的なライセンスである通常実施権は移転することができます。
 しかし、通常実施権が個人事業主から大企業に移ったりすると、大企業の方が圧倒的に実施能力(物の生産能力など)が大きいので、特許権者の利害関係への影響が大きくなります。このため、通常実施権の移転には、原則として、特許権者の承諾が必要です(94条1項)。

(利害関係への影響が大きくなる場合の具体例)
 特許権者が個人事業主であり、通常実施権が個人事業主から大企業(特許製品を大量生産可能な工場を有する)に移った場合。

(例外1)

 しかし、会社の事業を工場ごと売却したような場合には、通常実施権の移転承諾が取れない場合も考えられます。この場合、設備(工場)の荒廃の原因となってしまいます。したがって、例外として、実施の事業とともに移転する場合は、特許権者の承諾が無くても通常実施権は移転できます(94条1項)。

(例外2)
 相続等の一般承継の場合も、例外的に、特許権者の承諾が無くても通常実施権は移転できます(94条1項)
 これは、
 (i)一般承継の場合はその承継人の範囲が限定されており、特許権者が不測の損害を蒙るということはほとんどないこと、
 (ii)かりに承諾を要すると、被承継人は死亡等のためいなくなっているので、その結果、権利は消滅することになること、
からです。

(例外3)
 質権実行の際の移転にも、特許権者の承諾は不要です(94条2項)
 質権設定の承諾はその質権実行によって移転することの承諾も包含していると考えるべきだからです。

(例外4)
 例外1に関連しますが、裁定実施権(83条2項、93条2項)は、実施の事業と共にする場合には、特許権者の承諾が無くても移転できます。
 これは、
 (i)本来強制的に設定された権利が自由に他に移転できるのは適当ではなく、
 (ii)このように規定することが、パリ条約5条Aの趣旨に合致し、TRIPS協定31条(e)の規定に従うことにもなるためです。
 上記(ii)は、簡単に書くと、「制度の国際調和」


・特許法94条

(通常実施権の移転等)
第九十四条 通常実施権は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。
2 通常実施権者は、第八十三条第二項、第九十二条第三項若しくは第四項若しくは前条第二項、実用新案法第二十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権を除き、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあつては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合に限り、その通常実施権について質権を設定することができる。
3 第八十三条第二項又は前条第二項の裁定による通常実施権は、実施の事業とともにする場合に限り、移転することができる。
4 第九十二条第三項、実用新案法第二十二条第三項又は意匠法第三十三条第三項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業とともに移転したときはこれらに従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が実施の事業と分離して移転したとき、又は消滅したときは消滅する。
5 第九十二条第四項の裁定による通常実施権は、その通常実施権者の当該特許権、実用新案権又は意匠権に従つて移転し、その特許権、実用新案権又は意匠権が消滅したときは消滅する。
6 第七十三条第一項の規定は、通常実施権に準用する。

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