【建設DX】現地調査を“あとから使えるデータ”に変える。Matterportと360度記録ツールで建物を丸ごと残す価値
建物や敷地の現地調査に行ったあと、
「あの部分の写真を撮っていなかった」
「あそこの寸法を測っていなかった」
「天井裏や設備まわりの状況が、写真だけでは分からない」
そんな経験はないでしょうか。
特に改修工事や既存建物の調査では、現場に行ったその場では分かったつもりでも、あとから図面を見ていると、もう一度確認したくなることがよくあります。
写真はたくさん撮った。
でも、肝心なところが写っていない。
全体のつながりが分からない。
関係者に説明しようとしても、写真だけではよく伝わらない。
現場にもう一度行けば確認できるけど、毎回それができるとは限りませんし、相当に手間です。
遠方の現場もあるし、稼働中の施設もある。
病院、工場、商業施設のように、簡単に何度も入れない建物もある。
そうなると、建築・設備管理では、現況をしっかり記録しておくことが重要になってきます。ただ、写真として残すだけでは足りません。
あとから見る。測る。
説明する。図面化する。
BIM化の下地にする。
「あとから使えるデータ」として現地の記録を残すことが、デジタル活用ウをする上で重要になってきます。
何をしたいのかを整理する
360度カメラや3Dスキャンのツールはいろいろあります。
大事なのは、目的の整理です。
何をしたいのか。
何に困っているのか。
どこまでのデータが必要なのか。
建物や現場を360度・3Dで記録する仕組みは、Matterportなど、様々なサービスがでています。目的別では、次のような選択肢があります。
1.建物を丸ごと記録して、あとから歩くように確認したい
向いているツール例:Matterport
使いどころ:改修前調査、既存建物記録、施主説明、設備確認
2.360度写真を図面に紐づけて共有したい
向いているツール例:RICOH360 Projects
使いどころ:施工記録、設備点検、関係者共有、遠隔確認
3.施工中の現場を継続的に記録したい
向いているツール例:OpenSpace
使いどころ:進捗確認、図面・BIMとの紐づけ、日々の現場記録
4.360度映像から進捗管理やBIM連携まで広げたい
向いているツール例:CupixWorks
使いどころ:大規模現場、BIM活用、進捗管理、現場と設計の差分確認
5.点群・360度写真・BIMデータを一元管理したい
向いているツール例:FARO Sphere XG / NavVis IVION
使いどころ:工場、プラント、大規模施設、Scan to BIM、施設管理
こうして見ると、同じ「360度記録」や「3D空間の記録」といっても、用途は少しずつ違います。
現地調査の撮り漏れを減らしたいのか。
施工中の現場を継続的に記録したいのか。
BIMや点群データまで活用したいのか。
施設管理まで見据えてデータを残したいのか。
目的によって、選ぶべきものは変わります。ただ、実際にこれらをすべて試すのは難しい。試すにしてもそれなりのコストがかかる。
この中で、私が実際に使ってみたのがMatterport。
建物を丸ごと記録するのに非常に分かりやすいものでした。。
Matterportで建物を丸ごと記録する
Matterportの良さは、単に360度写真が見られることと、あとから建物の中を歩き直せるようになること。
通常の写真だと、撮影した人の視点の画角でしか残りません。
反対側の写真はない。
天井まわりが見切れている。
設備の裏側が分からない。
360度で空間を記録しておくと、あとから見返したときに、かなり多くの情報を拾うことができます。
現地に行った人だけが持っていた情報を、あとから関係者で共有できる。ここに大きな価値があります。
実際に使って感じた5つのポイント
Matterportを実際に使ってみて、特に便利だと感じたポイントは5つあります。
1. ウォークスルーで確認できる
撮影した空間を、ストリートビューのように移動しながら確認できます。現地に行っていない人でも、建物の中を歩いているような感覚で確認できます。
施主、設計者、施工者、設備担当者などが、同じ画面を見ながら話せるのは大きなメリットです。写真を何十枚も並べて説明するより、空間そのものを見せた方が伝わりやすい場面があります。
2. 建物全体を俯瞰できる
Matterportでは、建物を立体的に俯瞰して見ることができます。部屋同士のつながりや、建物全体の構成がつかみやすくなります。
改修工事では、平面図だけでは分かりにくい空間のつながりを把握するのに役立ちます。
「この部屋の奥に何があるのか」
「設備室と廊下の関係はどうなっているのか」
「動線としてどこがつながっているのか」
このようなことを、視覚的に確認できます。
3. 写真の中で寸法を測れる
撮影した空間の中で、概略寸法を確認できます。ただ施工寸法としてそのまま使うまでの精度はありません。最終確認が必要な寸法は、現地で実測が必要です。それでも、
「あの開口はどれくらいだったか」
「この部屋の幅はどれくらいか」
「設備機器のまわりにどれくらいスペースがあるか」
という確認が、あとからできる。現地調査後の検討や打ち合わせで、確認できる情報が増えます。
4. 面積や空間把握に使える
建物の使われ方、部屋の大きさ、動線、設備の配置を確認するうえでも役立ちます。写真だけでは伝わりにくい空間情報を、立体的に残せるのが強みです。
施主説明や社内打ち合わせで、言葉で説明するより、同じ画面を見ながら話した方が圧倒的に伝わりやすい。
「この場所は狭いです」
「ここに機器を置くと動線が厳しいです」
「この範囲を改修対象にしたいです」
このような説明も、現地の空間を見ながら話すと、認識のズレが少なくなります。
5. 点群データとして残せる
Matterportは、点群データの活用にもつながります。点群データがあると、後々のCAD化やBIM化の下地として使える可能性があります。
これまでの現地調査は、写真、手書きメモ、実測寸法、既存図面を組み合わせて整理することが多かったと思います。建物の現況を点群データとして残せるようになると、あとから図面化したり、3Dモデル化したりする道が開けます。

点群からCAD化・BIM化へ
今後、特に期待しているのが、点群データからCAD化、BIM化へつなげる流れです。
ただし点群を取得したからといって、すぐにきれいなBIMモデルが自動で完成するまではいっていません。
点群データは、あくまで現況を大量の点で記録したデータです。そこから壁、床、天井、柱、梁、設備機器などを認識し、BIMモデルとして整理するには、まだ人の判断や作業が必要です。
それでも、技術は確実に進んでいます。今後、点群処理やAIによる形状認識の深化が期待でき、既存建物のBIM化はもっとスムーズになっていくでしょう。
現地調査は「記録して終わり」ではなくなる
これまでの現地調査は、どうしても「その場で見て、写真を撮って、メモを残す」ことが中心でした。これからは360度記録や3Dスキャンを使うと、現地調査の意味が変わってきます。
その場で確認するだけではなく、
あとから見返せる。
関係者と共有できる。
寸法を確認できる。
図面化やBIM化につなげられる。
維持管理の資料として残せる。
つまり、現地調査の成果が、単なる写真やメモではなく、あとから活用できるデータになっていきます。
「現場を見返せる状態にする」ことから
建設DXというと、大きな取組みに感じられますが、現場目線で見ると、最初の一歩はもっとシンプルでもいいと思います。
現場を見返せるようにする。
写真の撮り漏れを減らす。
関係者が同じ画面を見て話せるようにする。
現況をデータとして残す。
特に改修工事や既存建物の調査では、現況をどれだけ正確に残せるかが、その後の設計、見積、施工、維持管理に影響します。
Matterportのような360度・3D記録ツールは、単なる便利ツールではなく、建物の現況を、あとから使えるデータに残すための入口になると思います。
まとめ
現地調査では、写真の撮り漏れ、寸法の測り忘れ、関係者間の認識違いが起こりやすいものです。その課題に対して、Matterportのような360度・3D記録ツールは有効な選択肢になります。
特にMatterportは、建物を丸ごと記録し、あとから歩くように確認できる点が分かりやすい。
一方で、360度写真を図面に紐づけて共有するサービス、施工中の現場記録に向いたサービス、BIMや点群データ管理まで見据えたサービスなど、目的に応じてさまざまな選択肢があります。
何を記録したいのか。
誰と共有したいのか。
あとから何に使いたいのか。
建物の現況をしっかり残すことは、これからの建築・設備管理にとって、ますます重要になっていくでしょう。その入口として、Matterportはかなり分かりやすく、現場でも使いやすいツールだと感じています。
