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【第24回】社会保険労務士の独占業務に関する議論についに終了?保険医療機関指定申請は社労士と行政書士のどちらの業務かは申請書を見ればわかる?(無料公開)

介護保険施設の指定申請等と保険医療機関指定申請は社会保険労務士の独占業務なのかについて何かと議論されてきました。
このうち介護保険施設の指定申請等は社会保険労務士の独占業務です。
これについて私は横浜市そして次に厚生労働省と散々やり合ってきたので、かなり詳しいです。
ほとんどの方は介護保険施設の指定申請等が社会保険労務士の独占業務の根拠として社会保険労務士法第2条に定める別表第一に掲げる労働社会保険諸法令に介護保険法が含まれていると主張していますが、実はこれだけでは決定的な法的根拠になりません。
その理由は詳しく後述します。

次に最近議論されているらしいのが保険医療機関指定申請ですが、これを社会保険労務士の独占業務と主張する方も社会保険労務士法第2条に定める別表第一に掲げる労働社会保険諸法令に健康保険法が含まれていることしか挙げていないようですが、これだけでは全然法的根拠になりません。
この理由も詳しく後述します。

ところで今回のテーマは病医院経営に直接関係がある訳ではないですし、この記事で社会保険労務士の独占業務に関する議論が終わることを期待して、無料で公開致します。

介護保険施設の指定申請等が社会保険労務士の独占業務である本当の法的根拠

そもそも私は介護保険施設は利用者からサービス提供の利用料を法定代理受領しているだけなので、介護保険施設の指定申請等は社会保険労務士の独占業務では無いと考えています。(ちなみに今でもそう思っています。)
社会保険労務士法で独占業務としているのは「別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令」であり、「別表第一に掲げる法令」ではありません。
介護保険を利用しているのは利用者本人であり、介護保険事業者は介護サービスの代金を法定代理受領しているだけです。
したがって事業者は介護サービスの代金を全額利用者に支払ってもらい、利用者がそれぞれの自治体から介護保険の給付を受けることも可能です。
繰り返しますが、事業者は労働者でも社会保険である介護保険を利用する利用者でもありません。
確かに事業者は介護保険法に基づいて指定申請等をしますが、サービス提供を行うための指定申請等であって社会保険(介護保険)を利用するためではないので、指定申請等を行う介護保険法第76条の2と第77条は「労働及び社会保険に関する法令」には該当しないと解釈されるべきなので、社会保険労務士の独占業務ではなく、行政書士の独占業務になるとして、横浜市や厚生労働省に意見してきました。(他にもいくつか理由は挙げていました)
しかし、横浜市は最初から最後まで、厚生労働省も途中まで、社会保険労務士法第2条に定める別表第一に掲げる労働社会保険諸法令に介護保険法が含まれているとしか回答してきませんでした。
これでは説明が不十分で、到底納得できる回答ではありません。

最終的には2022年12月6日に厚生労働省年金局事業企画課からメールで回答があり、介護保険施設の指定申請等は社会保険労務士の独占業務であることの法的根拠が明らかになりました。

それは社会保険労務士法施行規則第1条で事務代理の範囲を定めており、介護保険法に関する「申請等」については、社会保険労務士法施行規則の別表の55で規定されていますが、別表の55は末尾に「以外の申請等」と記載されています。

介護保険法(平成九年法律第百二十三号)及び同法に基づく命令に係る申請等

同法第二十四条第一項の居宅サービス等を行つた者等の報告等、同条第二項の介護給付等を受けた被保険者等の報告等、同法第四十二条第四項の居宅サービス等を担当する者等の報告等、同法第四十二条の三第三項の地域密着型サービス等を担当する者等の報告等、同法第四十五条第八項の住宅改修を行う者等の報告等、同法第四十七条第四項の居宅介護支援等を担当する者等の報告等、同法第四十九条第三項の施設サービスを担当する者等の報告等、同法第五十四条第四項の介護予防サービス等を担当する者等の報告等、同法第五十四条の三第三項の地域密着型介護予防サービス等を担当する者等の報告等、同法第五十七条第八項の住宅改修を行う者等の報告等、同法第五十九条第四項の介護予防支援等を担当する者等の報告等、同法第六十九条の二十二第一項及び第二項の登録試験問題作成機関の報告等、同法第六十九条の三十第一項(同法第六十九条の三十三第二項において準用する場合を含む。)の指定試験実施機関等の報告等、同法第六十九条の三十八第一項の介護支援専門員の報告等、同法第七十六条第一項の指定居宅サービス事業者等の報告等、同法第七十八条の七第一項の指定地域密着型サービス事業者等の報告等、同法第八十三条第一項の指定居宅介護支援事業者等の報告等、同法第九十条第一項の指定介護老人福祉施設等の報告等、同法第百条第一項の介護老人保健施設の開設者等の報告等、同法第百十四条の二第一項の介護医療院の開設者等の報告等、同法第百十五条の七第一項の指定介護予防サービス事業者等の報告等、同法第百十五条の十七第一項の指定地域密着型介護予防サービス事業者等の報告等、同法第百十五条の二十七第一項の指定介護予防支援事業者等の報告等、同法第百十五条の三十三第一項の介護サービス事業者の報告等、同法第百十五条の四十第一項(同法第百十五条の四十二第三項において準用する場合を含む。)の指定調査機関等の報告等、同法第百十五条の四十五の七第一項の指定事業者等の報告等、同法第百八十一条第一項の指定居宅サービス事業者等の報告等、同条第二項の指定地域密着型介護予防サービス事業者等の報告等、介護保険法施行令(平成十年政令第四百十二号)第十一条の四の指定市町村事務受託法人の報告並びに同令第十一条の九の指定都道府県事務受託法人の報告以外の申請等

社会保険労務士法施行規則より抜粋。太字は西岡。

簡単にいうと別表の55に挙げられている以外の全ての事務が社労士の独占業務になります。
そして別表の55には介護保険施設の指定申請等に関する第76条の2と第77条は挙げられていないので、社労士の独占業務になります
とても解りづらいですし、士業の独占業務に関係することが「以外の申請等」とひとくくりにされることに違和感しかないですが、法令で定められている以上は従う必要があるので、私は2022年12月以降は介護保険施設の指定申請等は一切行っていません。

老人福祉施設等の指定申請等は行政書士の独占業務

介護保険施設の指定申請等は社会保険労務士の独占業務ですが、第二種社会福祉事業に該当する軽費老人ホームやケアハウスといった老人福祉施設の根拠法は社会福祉法及び老人福祉法です。
そして社会保険労務士法第2条に定める別表第一に掲げる労働社会保険諸法令に社会福祉法及び老人福祉法は含まれていないので、老人福祉施設の指定申請等は社会保険労務士の独占業務ではなく、行政書士の独占業務です。
介護保険施設と同じような施設なのに指定申請等を代行できるのが社会保険労務士、行政書士だったりと現場が混乱していますが、すべては本来は社会保険労務でない事業者の指定申請等を社会保険労務士の独占業務とした社会保険労務士法を作った国の責任だと私は考えています。
その代表的な例の1つにホームヘルプサービスがあります。
ホームヘルプサービスには介護保険(訪問介護)と障害者福祉サービス(居宅介護)がありますが、この指定申請等を外部に委託する場合、介護保険は社会保険労務士に、障害福祉サービスは行政書士に依頼しなければなりません。
社会保険労務士と行政書士の両方を持っている士業であれば1つに依頼すれば済みますが、そうでない場合は混乱の極みです。

保険医療機関指定申請はどちらの独占業務になるのか?

最近は保険医療機関指定申請も社労士の独占業務と解釈する動きがあるそうです。
社会保険労務士施行規則の別表の46には介護保険法と同様に健康保険法の規定があり、別表の46も末尾に「以外の申請等」と記載されています。
そして保険医療機関指定申請に関する健康保険法第65条は別表の46に挙げられていないので、ここだけ見ると保険医療機関指定申請は社労士の独占業務となりますが、健康保険法第2条第4項には下記の規定があります。

第一項各号に掲げる事務には、その事務を行うことが他の法律において制限されている事務並びに労働社会保険諸法令に基づく療養の給付及びこれに相当する給付の費用についてこれらの給付を担当する者のなす請求に関する事務は含まれない。

健康保険法から抜粋。太字は西岡。

これについては昭和43年12月9日に厚生労働省より「社会保険労務士法の施行について」という通知も発出されています。

四 第二項(※現在は第四項)の「他の法律」とは、たとえば弁護士法等であること。「療養の給付」とは、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)第一三条第一項、健康保険法第四三条第一項、日雇労働者健康保険法第一○条第一項等に定めるもので、診察、薬剤等の支給、手術その他の治療、病院等への収容、看護等をいい、「これに相当する給付」とは、健康保険法第五九条の二、日雇労働者健康保険法第一七条等に定める家族療養費等をいうこと。
「これらの給付を担当する者のなす請求に関する事務」とは、病院、診療所、薬局等療養の給付等の担当者が療養の給付等の費用を、政府その他の保険者に対して請求する事務をいうこと。

「社会保険労務士法の施行について」より抜粋。太字は西岡。

政府その他の保険者に対して請求するために必要な保険医療機関指定申請と施設基準の届出は請求の事務に含まれていると解釈されるのが妥当だと思いますが、「給付を担当する者のなす請求」とは、診療報酬請求事務を指し、保険医療機関の指定申請や施設基準の届出を指すものではないという厚生労働省の回答があったと主張している社会保険労務士もいます。
ただ、社会保険労務士会の役員をしている知り合いに聞いたところ、そのような厚生労働省の回答の話は聞いたことが無いとのことで、真偽については確認できていません。
しかも、厚生労働省の回答があったと主張している社会保険労務士のウェブサイトには厚生労働省としか書いておらず、具体的にどの課から、何時、どのような形で回答があったのかわかりません。
ちなみには私は「2022年12月6日に厚生労働省年金局事業企画課からメールで回答」とすべてを明らかにしています。

しかも、士業の独占業務に関する極めて重要な判断を厚生労働省職員の個人的ともとれる判断だけで決まるのはおかしいです。
解釈に関する抽象的な判断であれば、最低限厚生労働省からの通知として出すべきではないでしょうか?
ちなみに私が厚生労働省から回答を得たのは介護保険施設の指定申請等が社会保険労務士の独占業務となる法的根拠です。
社会保険労務士の独占業務となるという抽象的な回答ではありません。

ところで、保険医療機関指定申請をする医療機関は他にも、生活保護法に基づく指定医療機関の申請や、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく自立支援医療機関等の申請をすることもありますが、社会保険労務士法第2条に定める別表第一に掲げる労働社会保険諸法令に生活保護法も障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律も含まれていません。
別表第一に含まれていない以上、老人福祉施設等と同様にこれらは行政書士の独占業務となります。

そして行政書士の独占業務である生活保護法指定医療機関指定申請は、保険医療機関指定申請と併せて行うことができます。

保険医療機関・保険薬局・生活保護法指定医療機関指定申請書

1つの申請に対して士業の独占業務が重複するという話は聞いたことがありませんし、常識的に考えられません。
「給付を担当する者のなす請求」の解釈いう曖昧なレベルではなく、誰が見ても明確に理解できるレベルなので、保険医療機関指定申請は社会保険労務士と行政書士のどちらの業務かという議論の結論は既に明白だと思います。

もし社会保険労務士が保険医療機関指定申請で生活保護法指定医療機関指定申請を併せて行うと、行政書士法違反となる可能性すらあります。

なお、あまりに明確なので私は厚生労働省に照会はしていないので、厚生労働省の正式な見解ではありません。
どうしても気になる方はご自身で厚生労働省に照会してください。

なお、照会するときは「保険医療機関指定申請は行政書士の独占業務ですか?」と聞くのではなく、「生活保護法は社会保険労務士法第2条に定める別表第一に掲げる労働社会保険諸法令に含まれていないので、生活保護法指定医療機関指定申請は明らかに行政書士の独占業務に含まれる。したがって、生活保護法指定医療機関指定申請と一緒に行う保険医療機関指定申請も行政書士の独占業務という見解で相違ないか?」というように聞くことをお勧めします。
厚生労働省の見解を聞くのではなく、こちらの見解が合っているかどうか聞くようにして下さい。

ベースアップ評価料の算定を社会保険労務士がしても良いか?

2024年から診療報酬にベースアップ評価料が新設されましたが、このベースアップ評価料の算定を社会保険労務士がやっていることが多いようです。
介護報酬ではもっと前の2019年から介護職員等特定処遇改善加算が新設されており、介護報酬での処遇改善加算をしてきた社会保険労務士が似たような加算であるベースアップ評価料の算定も行うという自然の流れであることは間違いないと思います。

ところでベースアップ評価料の算定はどんなに都合よく解釈しても「病院、診療所、薬局等療養の給付等の担当者が療養の給付等の費用を、政府その他の保険者に対して請求する事務」なので社会保険労務士の独占業務で無いことは明白です。
では行政書士の独占業務かということもこれも違います。
行政書士の独占業務は官公署に提出する書類の作成ですが、ベースアップ評価料の請求先は介護保険施設がある都道府県の国民健康保険団体連合会(国保連合会)なので、官公署ではありません。

したがってベースアップ評価料の算定は誰がやっても良い業務になると思われるので、社会保険労務士だろうが行政書士だろうが、できる方がやれば良いと私は考えています。

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