『ハムネット』『オールド・オーク』『花様年華 4K 25周年特別編』
... Mangiare, Cantare, Amore(食べて、歌って
恋して)⁉️
ここ10日ほどの間に、久々に映画を3本鑑賞。もうちょっとバランスを考えればよいのに、うっかり天丼、カツ丼、ふかひれ丼を立て続けに食らったような心地で未だ消化に時間が…。そりゃプラダ悪魔2もチラッと考えたのだけど、前作が素敵過ぎたので何となく気が進まなくて。
🎬「ハムネット(Hamnet)」
純文学(と国語の先生)が何よりも苦手だった者としては、特に観るつもりはなかった。学生時代、英語は全く勉強しなくて、古典的なペンギンブックスもマザーグースも知らぬまま。ただ、そういえば「恋におちたシェイクスピア(Shakespeare in Love)」は観たなぁ、グウィネス・パルトロウの。そうか、物語として観ればよいのか。To see or not to see、ならば観てみよう。それはイギリスの片田舎が舞台、ラテン語教師のウィリアムは、森の中で鷹を飼い慣らす不思議な女性、アグネス(アニエスと発音されていた)に出会う。彼女は薬草の専門家でもあり、村では変わり者扱いされていたが、いつしかお互い惹かれ合い、子供ができて世帯を持つ。更に男の子と女の子の双子が生まれたものの、劇作家として世に出たいウィリアムは、活躍の場を求めてロンドンに出る。いずれ妻子を呼び寄せようと思うものの、森を離れたくないアグネスは気が進まない。静と動、性格の違いもあり、すれ違いが次第に夫婦間の溝を広げてゆく。そんな中、大流行のペストで唯一の男の子ハムネットが命を落とす。ウィリアムは益々、ロンドンでの仕事に精を出し、やがて新作「ハムレット」を上演。評判を聞いて渋々鑑賞に出かけたアグネスが観たものは…。有名になる前のシェイクスピアと家族を妻目線で、まるでレンブラントあたりの絵画のように描いた作品。
アグネスを演じるジェシー・バックリーの、まるで情念のかたまりのような存在感、それでいて繊細な眼差しと手の動きで感情の移ろいを表す、その演技が圧巻。ひと昔前のエミリー・ワトソン(今作ではウィリアムの母を好演)を彷彿とさせる。今年のオスカー主演女優賞を受賞🏆

🎬「オールド・オーク(The Old Oak)」
こちらもイギリスの郊外が舞台。かつては炭鉱の街として賑わいを見せていたが、今ではすっかり寂れ、最後に残ったパブ、オールド・オークも最後のKの字が傾くほど経営不振に陥りつつあったが、古くからの住民の数少ない宿り木だった。そんな街に内戦から逃れてきたシリア難民の家族が引っ越してくる。言葉、習慣、宗教のみならず、肌の色や服装など見た目からして「余所者」の彼等へ向けられる、一部の住民の冷ややかな視線。一方、難民キャンプで英語を習得したというシリア女性ヤラと、カメラを通じて交流するようになったオールド・オークの店主TJは、元々温厚なタチでもあり、教会の人達と一緒に難民へ物資を提供したり生活の手助けをし始める。そんなTJを「俺たちの味方じゃないのか」と疎ましく思い、糾弾する住民も出てくる。炭鉱が閉鎖されて以来、元からいる住民の暮らしむきも決して良くないからだ。そんなある日、TJの愛犬がヤンチャな若者が飼う獰猛な犬に殺されてしまう。落ち込む彼をヤラと彼女の母親が手料理で慰める。その後TJと有志が始めたボランティアの食堂シーンを含め、この作品に出てくる食事、特に家庭料理がどれもとても美味しそうなのも印象に残る。
移民問題は確かにややこしく、宗教、人種、習慣の違いからくる誤解、いさかいの歴史等、デリケートな問題をはらんでいる。アメリカやカナダなどは、ネイティブやファーストネーション以外の方々は全て移民の子孫。それでも先にいる移民の子孫が、後から来た移民に対してヘイトやバッシングをしてしまったりする。
人類の歴史を紐解けば、誰しもが何処かしらか何らかの理由で流れてきて今がある、という面に思いを馳せてみてはどうだろう。例えば米や仏教や漢字にしても、いきなりAmazonで届いた訳ではないし、日本人だって主に戦前まではアメリカ、カナダや南米へ移住した方々が沢山おられた(戦時中は収容所へ送られたり、日本に帰国しても憲兵に見張られていた)。テレビ番組のファミリーヒストリーみたいに、世界の思わぬ所で先祖が葛藤しつつも活躍したり、史実と繋がっていたかもしれないのだ(遣唐使にゆかりのあった南果歩さん、お祖父様がカナダ移民だった南野陽子さんとか)。
話が大きく脱線したが、ブルーカラー目線で社会問題を描き、問題提起してきたケン・ローチ監督の、それでもヘイトではなく、理解しようとお互い歩み寄ってみよう。権力に踏みにじられた弱者同士、いがみ合うのではなく連帯しよう、という強いメッセージを感じた。"When you eat together, you stick together"、「共に食べて団結を」。食からその国や文化に興味を持ったりするし、何よりも美味しい事は楽しい。
あと自分が思う「常識」を時には疑い、違う視点があるのでは?と想像してみる。できれば若いうちに、育った環境とは違う国や場所で生活してみる方がいい。こんな円安、世界情勢の状況下で言いづらいけれど。



(今はDublinersも池袋店しか残っていないとか…。神戸店にも一度行った事あるんですけどねw)
🎬「花様年華 25周年特別編(In the Mood for Love 2000, 25th Anniversary Special Edition)」
1960年代の香港が舞台。互いの配偶者同士が不倫をしている事に気付いた男女が、次第に惹かれ合うものの、運命の悪戯でボタンがかけ違ってゆく様がもどかしく、切なくも美しい。トニー・レオンの優しく繊細な眼差しと、マギー・チャンの(服をキチッと着ているのに)妖艶な後ろ姿から目を離せない。
なお、特別編は同じトニーとマギーのコンビでありながら、現代のコンビニに舞台を移し、コンビニ店主と常連客のややまどろっこしいやり取りを描いた短編。

追記。「花様年華」に散りばめられた挿入歌、四半世紀経っても耳に残っていて、マギー・チャンのセクシーな佇まいと共に脳裏から離れない…
因みに「キサス」とは「たぶんね」という意味だそうで。
♪ Quizás, Quizás, Quizás:Nat King Cole
