【実録】公開前夜、主演女優が逃亡した。準備期間2ヶ月と私の「45万円」が、LINE一本で消えた夜の話。
※この記事は、現在進行中のドキュメンタリー連載の第1話です。
全編(第2話以降の有料エリア含む)をまとめて読みたい方は、こちらのマガジンがお得です。
▼ 実録ドキュメンタリーはこちら(※第2話より収録) ▼
「ビジネスに感情を持ち込むな」

私が経営者として、常に自分に言い聞かせてきた言葉だ。
数字は嘘をつかない。準備は裏切らない。
そう信じていた。
しかし、現実は小説よりも理不尽で、そして残酷だ。
現在、2026年1月13日。
私の手元には、完璧に仕上がったクラウドファンディングのページと、すでにA子(今回の主役)に取得させたパスポート。
そして、「もう無理です」という彼女からの逃亡LINEだけが残されている。
これは、25歳で会社を経営する私が巻き込まれた、泥沼のトラブルの記録。
そして、そこから這い上がるための「30日間の戦争」の宣戦布告である。

アジアの風と、ボスからの指令
時計の針を少し戻そう。
2025年11月後半。私は東南アジアの温かい風の中にいた。
PC一台で世界中どこでも仕事ができる。それが私のスタイルだ。
旅先で次の事業構想を練っていた私のスマホに、尊敬している「ボス」から連絡が入った。
「お前の腕が上がる案件がある。手伝ってやってくれないか」

内容は、ボスが主催する「アマゾン・アヤワスカ・リトリート(参加費は、けっこう高額 笑)」のプロモーションだった。
※アヤワスカとは?
南米アマゾンの先住民族が数千年前から受け継ぐ「聖なる植物療法」のこと。
幻覚剤のようなドラッグとは一線を画す。脳の深層にダイブし、トラウマを癒やし、人生の目的を再発見するための、神聖な「魂の手術」だ。
シリコンバレーの起業家やアーティストたちが、インスピレーションを求めてこぞって参加する、知る人ぞ知る究極の自己探求プログラムである。
今回のミッションは、この素晴らしい体験を広めること。
ただし、今回の主役はボスではない。
ボスの古い知人であるB男(50代)の彼女、A子(26歳)だという。
このカップルが、なかなかの「事故物件」だった。

▪️B男(50代男性):
ボスと懇意にしている「フリーランサー」。そして、色々訳あり。
▪️A子(26歳女性):
高卒。元介護事務。現在はB男の金魚のフン。
…情報量が多すぎて頭が痛くなる。
本来、クラファンでB男とA子、二人の渡航費を集めたかったらしい。
だが、さすがに「中年おじさん&その彼女」にお金を払う物好きはいない。

そこで、「A子がアマゾンで植物療法を学び、帰国後に若者向けのメンタルカウンセラーとして起業する」という大義名分を立て、彼女をフロントマン(顔)に据える作戦になったのだ。
正直、気が進まなかった。
なぜわざわざ手数料(集金額の17%)のかかる「クラファンサイト」を使う必要がある?
私の手腕なら、自社決済システム(UTAGEなど)で直接集客したほうが利益率は高い。
だが、ボスは言った。
「これはお前にとっても、新しい実験になるはずだ」

(心に余裕があれば…ね)
私は「実験」という言葉に弱い。
それに、ボスの頼みなら無下にはできない。
私は旅先のホテルで、渋々PCを開いた。
まさかそれが、終わりのない泥沼への入り口だとは知らずに。
「無能」との戦い

帰国後、本格的にプロジェクトが動き出した。
私の役割は「プロデューサー」。
A子という素材を料理し、世間に売り出し、資金を調達する軍師だ。
私の勝算はあった。
クラファンは「初速」が命。
公開後一週間以内に目標金額の30%を集めれば、アルゴリズムに乗って成功率は跳ね上がる。
今回の目標は150万円。その30%、つまり45万円。
これは、私の会社の資金から「支援」として投下することを確約していた。
絶対に勝たせる。それが私の流儀だからだ。

しかし、肝心の「素材」が、あまりにも脆かった。
まず、B男が書いてきたクラファンページの下書き。
読んで3秒で閉じた。突貫工事もいいところだ。
「これじゃ1円も集まらない」
結局、私がゼロから構成を練り直し、ライティングまですべて引き受けた。

次に、SNS集客。
ここが致命的だった。
私はA子に明確に指示を出していた。
「使えるSNS(X、Facebook、Instagram)はフル稼働させて。全方位から認知を取りに行け」と。
しかし、蓋を開けてみれば、彼女が動かしていたのは「Threads(スレッズ)」のみ。

mixi2も可能性はあったのにね。
他のSNSは「使い方がわからない」「面倒くさい」といって放棄。
その唯一の頼みの綱であるThreadsも、地獄のような運用だった。
「ご支援お願いします」「アマゾンに行きたいです」
そんな、「金くれ」という欲望が透けて見える投稿ばかりが並んでいる。
文章に人間味がない。
AIが出力した文章をそのままコピペしているのか、まるでボットだ。
これを見て「応援したい」と思う人間など、世界に一人もいない。
さらに追い打ちをかけるように、事件が起きる。
A子のThreadsアカウントが、原因不明の凍結(垢BAN)を食らったのだ。
数少ないフォロワーとの繋がりが、一瞬で消滅した。

私は以前から口を酸っぱくして言っていた。
「プラットフォームはいつ垢BANになるか分からない。だから、オープンチャットなどに誘導して、自分たちの『リスト(顧客台帳)』を確保しておけ」と。
そのリスクヘッジを怠った矢先の出来事だった。
普通ならここで「やばい!他のSNSを立ち上げなきゃ!」と焦るはずだ。
しかし、彼らの反応は違った。
この垢BANをきっかけに、糸が切れたようにやる気を失い、連絡すら途絶えがちになったのだ。

あのさ。
「泣きながら行きたい」って言ってたのは嘘だったのか?
私なら、本当に98万円が必要なら、日雇いバイトでも何でもする。
なんなら、キャバクラで働いてでも金を作る。
11月後半から始まったプロジェクトなのに、彼女がやったことといえば、家でスマホをいじって垢BANされただけ。
本気度が、あまりにも違いすぎた。
決定的な亀裂

それでも私は、プロとして仕事を全うしようとした。
A子の集客力が絶望的だったので、私は自分の人脈を使った。
懇意にしている経営者仲間に事情を話し、「若い女の子の挑戦だから」と頭を下げた。
彼は快く、15万円の支援を約束してくれた。
記事の審査も通った。
15万円も確保した。
あとは、公開ボタンを押すだけ。
その直前、A子との通話で、彼女は信じられないことを口走った。
「なんか、人を騙しているようで心が痛むんです…」

私のこめかみがピクリと動いた。
騙している?
私が作ったこのスキームが、詐欺だと言うのか?
支援者に対してリターン(サービス)を返せば、それは立派な商取引だ。
彼女は、私のために15万円を出してくれる経営者の顔よりも、SNSの向こう側にいる「見知らぬアンチ」の幻影に怯えている。
(あ、こいつ、ダメかもしれない)

私の直感は正しかった。
そして、その予感は最悪の形で的中する。
崩壊の夜
公開前日の夜。
私のLINEに、A子からの通知が入った。
「やっぱり辞めたいです」

理由は「怖い」「やっぱり無理」。
B男の説得も虚しく、彼女は実家に逃亡し、電話にも出なくなった。
私たちが積み上げた2ヶ月間。
旅先でPCに向かった時間。
私の会社の資金30万円の準備。
経営者仲間への根回し。
それらすべてが、たった一人の「甘え」によって、ゴミ屑になった瞬間だった。

普通なら、ここでTHE ENDだ。
主役がいなければ、舞台は成立しない。
ボスは頭を抱えていた。
だが。
私のプライドが、それを許さなかった。
「逃げられたままで、終わってたまるか」

あなたに私がつくったページを見せてあげたいくらいよ。
誰もが思った。「もう終わりだ」と。
ボスも諦めかけていた。
でも、私は笑っていたかもしれない。
怒りが極点に達した時、人は逆に冷徹になる。
「上等じゃないの。だったら、もっと面白い見世物を作ってやるよ」
私の脳内検索がヒットした。
メンヘラ女子なんかより、もっと濃くて、もっと泥臭くて、もっと応援したくなる「本物の地獄」を見た女を。
次回。
公開前夜の緊急オペ。
私が白羽の矢を立てたのは、闇金ウシジマくんも裸足で逃げ出すレベルの借金を抱えた「50代女性」だった。

【続きはこちら】
第2話:ターゲットの再設定。
「なぜ、20代美女より50代借金持ちの方が"売れる"のか?」
〜A子の語った「行きたい理由」の嘘と、プロデューサーとしての冷徹な計算〜
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