三越往復は無謀だった
「過ぎたるは及ばざるがごとし!」
昨日の散歩を振り返ると、この一句に尽きる。日本橋三越までの往復は、明らかに頑張り過ぎだった。終盤、足がもつれ、正直なところ少し肝を冷やした。
初冬の小春日和。青空に誘われるように、午後二時、いつものリハビリ散歩に出発する。ウォーカーを押し、左側から監視人殿(通称:妻)が軽く腕を添える。この二人三脚の歩き方も、マンション内ではすでにお馴染みの光景になっているに違いない。
ここ数日は街中歩きが続いていた。昨日もとりあえず金座通りに出て、日本橋方面へ向かう。当初は日本橋川あたりで折り返すつもりだったのだが、「どうせなら三越まで行ってみよう」と監視人殿が言い出す。天気も良い。調子に乗った私は、その提案にあっさり同意してしまった。
うなぎの宮川、三代目たいめいけん――名の知れた店を次々と横目に、ついに三越正面の交差点に出る。いつもならタクシーで来る場所だ。交差点を渡り、旧館正面から中へ入ると、エレベーターで七階へ。催し物売り場をぶらぶら歩き、正面の特別食堂を眺める。「今日は歩いて来たんだ」と、内心、少し誇らしい気分になる。
一通り“三越の匂い”を味わって、さて帰ろうと歩き出す。半分ほど戻ったところで、足運びが怪しくなってきた。道路沿いのサンマルクカフェに逃げ込むように入り、コーヒーを飲んで一息ついた。
十分ほど休めば回復するだろう――そう思ったのだが、甘かった。再び歩き出すと、休む前より足がもつれる。低い椅子に腰かけたこと、店内がやや暑かったこと、理由はいくつか考えられるが、身体は正直だ。
それでも帰らなければならない。ウォーカーを強く握り、監視人殿に助けられながら、一歩一歩、ゆっくり進む。そのうち、舌がもつれて、言葉が思うように外へ出てこなくなる。脊髄小脳変性症――持病の、よくある症状である。
何とか玄関にたどり着き、ほっと息をついた。スマホを見ると四千八百九十二歩。距離は三・五キロ。最近、歩数を伸ばしているとはいえ、せいぜい四千歩まで、それも途中に休憩を挟んでの話だ。昨日はどう考えてもやり過ぎだった。

それでも散歩は欠かせない。病と付き合うための、ささやかながら確かな手段だからだ。懲りずにこれからも三千歩を日課にする。ただし、無理はしない。昨日の三越往復は、その当たり前の約束を、改めて思い出させてくれた。
