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情報を正しく選択するための認知バイアス事典③(情報文化研究所/著)社会心理学系バイアス


感情移入ギャップ

感情移入ギャップとは、対象に対して怒りや好意などの感情をもっていると、その感情をもたない視点から考える事が難しくなること

例えば、お腹がすいていないときにダイエットを決意したとしよう。

「今日から絶対間食はしない!」と誓うことは簡単だ。
しかし、お腹がすいているときならどうだろうか?

手の届く距離にあるチョコレートが、どれだけ魅力的に映るかということを、お腹がすいていないときに予想することは難しいのである。

そして、たいてい我慢できずに食べてしまい「ダイエットは明日から」となる。

このような現象は自分に対してだけでなく、他者に対しても同じように発生する

人は、自分と立場が違う人の感情やニーズを想像することは難しく、評価も示さない傾向にあることが明らかになっている。

共感は経験に左右される

立場の違う人に共感できないという状況は、日常生活で頻繁に生じる。

例えば、親と子、夫と妻、彼氏と彼女など、立場や状況が違う場合、自分が相手と同じ立場にいないと理解することは難しい

両者にすれ違いが生じるのは、このためである。

そのため、相手の立場に立って考える訓練として、ロールプレイをおこなうことはギャップを解決する第一歩といえよう。

ハロー効果

ハロー効果とは、どこか優れている点を見つけると、その他においても優れていると考えがちになる現象を指す。

人は、世の中の全てを正しく把握しているわけではない。
そこでわからない点については、推測をする。

推測とは、ある事柄について情報や知識をもとにして推量することである。

その際、人はとかく「最初に持っていた情報」を支持する方向に物事を考えがる傾向がある。

つまり、最初に良い情報を相手に与えた人は、その他の部分も素晴らしいと推測されやすいといえる。

例えば、外見がよいと得することが多いと考えている人も少なくないだろう。

実際に、美人が書いた小論文は、そうでない人が書いたものより高く評価されたという実験結果もある。

このように、何か目立つ特徴があると、他の面での評価もそれに合わせて推測されることをハロー効果と呼ぶ

ハローとは「後光」のことである。

初めに悪い印象を持たれてしまったら

判断される側になった際に、最初の時点で悪い印象をもたれたら、挽回することは難しいのだろうか。

幸いなことに、その印象をひっくり返す有用な方法がある。

悪そうな人がよいことをすると、よい人が同じことをしたときよりも大きく評価が上がるという現象を利用するのである。

これは「ゲインロス効果」と呼ばれるものであり、人の感情の変化する量が大きいほどより強く印象に残るとされている

あなたは、ドラえもんに出てくる「ジャイアン」というキャラをご存じだろうか?

普段のび太君をいじめてばかりいるジャイアンに、よい印象をもつ人は多くないだろう。

しかし、ジャイアンは映画になると仲間を助けてくれる頼もしいキャラに変わる。

そのため、普段の悪い素行が見直され、「ジャイアンっていいやつだな」と印象が大きく変わる

このように、印象が悪いというマイナスから、よいおこないをしてプラスに変わることで、相手に抱く感情が大きく変化する。

そして、本来得られるはずのものよりも、大きな効果が得られるのである。

悪い印象をもたれていると感じた場合は、意識してよい行動を増やそう

よい行動を増やすことで、自分のネガティブな印象が、ポジティブな印象へと効率よく変化させることができる。

心理的リアクタンス

心理的リアクタンスとは、自分の選択や行動の自由を制限されるように感じたものに対し、反発し逆らう行動を共にすること

人は本来持っている選択や、行動の自由を他者に脅かされたとき、その自由を回復しようとし、あえて妨げられた行動をしようとすることがある。

障害が恋を燃え上がらせる

心理的リアクタンスを解説するためにわかりやすい事例として、「ロミオとジュリエット」を見てみよう。

代々対立する2つの家に生まれたロミオとジュリエットは恋に落ちるが、家同士が反目し合っているために、そのことを周りに伝えることができない。

結局、2人は駆け落ちを計画したものの、行き違いからジュリエットが死んだと思い込んだロミオが自殺。

それを知ったジュリエットはロミオの後を追ってしまった、という話である。

なぜ二人の恋はこんなに思え上がってしまったのか?

その理由として「対立する領家」という大きな障害が立ち上がったことが考えられる

家の事情から、二人は相手を愛するという自由が脅かされてしまう。

その脅威から解放されようとした結果、想いがいっそう強くなり、極端な行動に走ってしまったと説明できる。

心理的リアクタンスに陥った際の対処法は、自分の感情が強くなにかに向かっていると感じたとき、一度冷静に考えてみることだ

本当に対象が魅力的であるからか、もしくは自由を脅かす障害のせいで魅力が高まってるように感じてるだけなのかを考えてみる。

それが、心理的リアクタンスにとらわれないために重要な対処法だといえる。

現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、何かを変化させることで現状がより良くなる可能性があるとしても、損失の可能性も考慮して現状維持しようとする傾向を指す。

行動経済学の分野で「損失回避性」という言葉がある。
読んで字のごとく、損をすることを避けたいと思う心の働きのことである。

人は、利得と損失を比較する際、損失の方がより重大だと感じる

利得と損失がどのくらいの倍率であれば釣り合うのかという「損失回避倍率」について多くの試験がおこなわれた。

その結果、個人差はあるものの、損をする分のおおよそ1.5~2.5倍の利得があって初めて、私たちは損と得が釣り合うと感じることが明らかになっている。

行動を起こす際のメリットが、損益回避倍率を下回る場合、損する可能性があることから、人は行動を起こす必要性を感じず現状のままでいようとする。

これを現状維持バイアスと呼ぶ

一度手に入れたものを手放しづらくさせる保有効果

現状維持バイアスは「保有効果」が生じる際に顕著に発生する。

保有効果とは、一度何かを手に入れると、それが自分の手元になかった時よりも価値が高いものであるように感じて、手放す際に抵抗を感じる現象のことを指す。

新しいシステムや制度のほうが優れているのに、従来のものにこだわって改良しないという現象もその1つだ。

人はメリットよりもデメリットに敏感である。

他人を説得して良い方向に変えたいのであれば、デメリットと比較して、メリットが十分に大きくなるよう策を練ることが重要となる。

また、すでに手にしているものを持っていない状態であると考える、「ゼロベース思考」と呼ばれる方法も有効である。 

バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、選択肢が複数ある場合、多くの人が同一の選択肢を取ることによって、その選択肢を取ろうとする人が増える現象のこと。

他者の行動を参考にして「同調行動」をとることは、自らの安心安全を確保するために大きな効果がある。

例えば、周囲の人々が空を見上げているのに、自分は気にもかけないと落下物を避けられないかもしれない。

行動にせよ感情にせよ、同調することはリスクを低減させるために重要だ。

同調バイアスは、非常時で正確な判断ができなくなるほどの危険が生じることもあるが、同調バイアス自体は悪いものではない。

同調バイアスの中でも、投票行動や購買行動に表れる特徴をバンドワゴン効果と呼ぶ。

人気者は人気ゆえにみんなから好かれる

「長いものには巻かれろ」という言葉がある。

強い権力を持つ者や大きな勢力には、敵対するより傘下に入っておいたほうが良いとされる処世術を説いた言葉だ。

例えば、選挙において「圧倒的に優勢」だとか「当選確実」などと報じられた候補により多くの票が集まることも、この言葉が実際に社会で生じていると考えられる。

身近な例でいえば、クラスの人気者は多くがその人物を好きだと証明することで、性格であったり外見であったりに「他者の判断による保証」が付いた状態であるといえる。

今まで接したことのなかった人でも、「これだけ多くのクラスメイトから好かれるのであれば、それだけ価値がある人なのだろう」と判断する

結果として、さらに人気が上昇するバンドワゴン効果が見られるのである。

みんなが持っているものは自分も欲しい?

小さい頃、おもちゃやゲーム機を「みんな持っているから買って」と親におねだりした経験はないだろうか。

この行動を引き起こす要因について、いくつか推測することができる。

「友達から仲間外れにされてしまう」「自分も同じものを試してみたい」「自分の要求を受け入れてくれる親か試したい」などである。

行動の要因は1つではなく、さまざまなものが同時に存在することがほとんどだ

その中に「みんな持っているのだから、よいものなのだろう。そのよいものを自分だけ持っていないのは嫌だ」というバンドワゴン効果によって生じる動機も含まれる。

それは、一種の安心を求める行動でもある

しかし、その一方で周りと同じにはなりたくないという価値観が存在する。

希少性の高い限定生産の商品を手に入れたがる人などは、このような考えが強いのだろう。

バンドワゴン効果と真逆になるこの現象を「スノッブ効果」と呼ぶ。

みんなが持っているから欲しいのではなく、みんなが持っていないからこそ欲しいのである

同様に、購買を促すメカニズムとして解説した心理的リアクタンスも効果を発揮する。

マーケティングにおけるバンドワゴン効果

多くの人が支持することで、よりその支持が固くなるというバンドワゴン効果は、マーケティングの現場で用いられることが多い

〇〇万人が愛用中だとか、チケットがわずか〇分で完売だとか、その売れ行きをアピールするよく見られる手法の1つである。

また、わざと店内の席数を減らして店の外に行列を発生させ、道行く人に人気店だと思わせる。

棚の商品を一部売り切れのままにして、「この商品は売り切れるほど人気なのか」と感じさせるというものが頻繁に用いられるテクニックである。

このことを知っていれば、消費者として店の策略に踊らされることも減るだろう

ダニング=クルーガー効果

ダニング=クルーガー効果とは、知識のない人ほど自分には能力があると過大評価してしまう効果のこと

一方、知識が豊富だったり能力が高かったりする人は、周りも自分と同じだけの能力を持っていると考え、過小評価してしまう。

ダニングクルーガー効果が生じるおもな原因として、メタ認知ができないことが考えられる

メタとは「より高次」のという意味で、自身が認知していることを客観的にとらえることである。

つまり、メタ認知ができないとは、自身を客観的に見られないということである。

そのため自分の能力が不足していることやその程度を正確に認識できない。

また、このような人は自分についてだけでなく、他人に対しても正しく把握することができないとされている。

知識の呪縛:呪縛を解く

さまざまな分野において、知識を持っている人は、知識を持たない人の立場から考えることが難しくなるという現象を知識の呪縛と呼ぶ

この本を読み終えた方は、バイアスについてある程度の知識を手に入れることと思う。

ここで考えを巡らせてほしいのは「バイアスについて知識のない人たち」のことである。

大半の人は、たくさんのバイアスがあることも、人が無意識にバイアスに陥ってしまうことも知らない。

そして、自分の中にも存在するそのような認知的歪みが、差別につながっていることにも気づいていないのである。

この場合、自分が差別する側であるか、される側であるかは関係ない。
そもそも、差別をしている、されているという意識がないことすら少なくないのである。

バイアスは、人間が環境に適応するために身につけたものであるため、生じること自体が悪いというわけではない。

しかし、差別にしろ他人との摩擦にしろ、良くないことを引き起こす可能性が高いのもまた事実である。

知識があることから生じる「呪縛」があることを知り、そのうえで呪縛から自らを解放することは、極めて重要である

偏った見方をする知人を「嫌な奴だ」と一蹴するのではなく、バイアスに陥っていることに気づいてないだけかもしれないと考えることが、呪縛を打ち破る第一歩となる

認知バイアスのほとんどは、無意識に作用する。

よって、知識が無い状態では気づくことも防ぐことも難しい。

知識の呪縛と呼ばれるバイアスは、メタ認知ができないことによって生じる。

メタ認知には「知識」と「技能」がある。

この本を読んだ方は、バイアスに関する知識を手に入れた。

次は、バイアスに陥らないよう、思考をコントロールする「技術」を習得し、使いこなせるようになることを目標としてほしい。

さらに、知識がないためにバイアス陥ってしまう人がいることを理解し、抜け出す手助けができるとなおよい。

一度で劇的な効果を望めるとはいえないが、ぜひトライし続けてほしい。

フラットな考え方ができる人が周囲に増えるのは、社会にとって過ごしやすい環境が整うということだ。


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