[ なにやってんだ受験生 ]:シロクマ文芸部(白い息)
↑↑こちらのお題に参加しました〜
前回は12月が嫌いとか書いてたのにぃ、ってお話です。
ショートショートです。
がんばれ受験生😊♪

[ なにやってんだ受験生 ]
白い息を吐きながら思った。
「この季節が好きだな」
12月になったらクリスマスに忘年会。
楽しいことがいっぱいある。
みんなで集まって、寒空の下でワイワイできる。
そんな季節が大好きだ。
でも、今年は違う。
受験生の私。
ため息まで白い。
楽しみたい……、でも、今、手を抜いたら絶対後悔する。
やれることは全部やっておきたい。
──そうは思うけど、たまの息抜きも必要だよね。
ということで、今日は親友ふたりと忘年会。
夜の街に繰り出す予定。
今年最後の模試が終わったんだから、ちょっとくらい、いいよね。
志望大学向けの模試の後、すぐに待ち合わせの場所に向かった。
すぐそばだったから、あっという間に着く。
待ち合わせの時間はもう少し後だから、ふたりはまだ到着していない。
模試からの開放感を味わうために、ふと夜空を見上げる。
イルミネーションでキラキラしている街と違って、真っ黒な闇が一面に広がっていた。
ハァ……、と息を大きく吐くと、
白い息が、黒に溶けていく。
「橘さん?」
不意に名字を呼ばれて、びっくりする。
声の方を向くと、「あ、やっぱり橘さんだ」と笑顔の男子がいた。
顔を見た瞬間に、誰だか分かった。
「あ、」
間抜けな声を出す私に、男子は続けて話す。
「久しぶり、オレのこと、覚えてる?」
覚えてないわけがない。
同じ中学だった佐藤くん。
小学生の頃からずっとクラスメイトで、私にとっては、クラスメイト以上の存在だった人。
私は、軽く頷いてから、
「覚えてるよ、佐藤くん」
「よかった〜、声かけて違う人だったらどうしようって思ってた」
佐藤くんは白い息を吐きながら、笑顔を弾かせた。
進展もないまま違う高校に進み、それっきりだったのに、こんなところで会うなんて。
どんな返事をしていいのか、戸惑っていると、
「いたでしょ、模試」
──えっ、
と、さらに戸惑うことを言われてしまう。
「オレ、斜め後ろの方にいたんだけど。
あ、橘さんぽい人がいるなぁ、って気づいて。
気になって気になって、でも模試に集中しなきゃって、大変だったよ」
楽しそうに話す佐藤くん。
なんだよそれ、と思わず笑ってしまう。
ふたりの白い息が、ふわりと重なった。
あー、佐藤くんと話してる、懐かしいなぁ〜、
なーんてぼんやり思ってて、──あっ、て、気づいた。
(志望大学の模試にいた、って、ことは……)
「同じ大学、目指してんだな」
と言う佐藤くん。
みたいだね、と心の中で呟く私。
すると、唐突に、
「入学したら、交換しよ」
「──えっ、なにを?」
首を傾ける私に、屈託のない笑顔で続ける。
「LINE、交換しよ。ほら、今は勉強頑張らなきゃだからさ、──だから入学したら」
ふふふ、と私は少し笑いながら、
「なにそれ。『合格したら』とかじゃないんだ」
と言うと、笑顔で「うん、合格ありき」って答えが返ってきた。
佐藤くんらしい。
「うん、いいよ、交換しよ」
「よっしゃーっ!!!」
握り拳を作って「これまで以上に、勉強するぞー!」と、盛り上がっているから、私も負けずに、
「おー、がんばろう!」
と、まっすぐ上に、握り拳を上げた。
寒空の下で、受験生が何をはしゃいでんだか、って思ったら、可笑しくなって、笑えてきた。
佐藤くんも笑ってた。
ふたりの白い息に包まれる。
「じゃあ、入学式にね」
佐藤くんは手を振って、去っていった。
あまりにも一瞬のような出来事。
私の頭の中は、ぼーっとしたままで、佐藤くんが去っていった方を、
ただなんとなく、見ているだけだった。
「おいおい、タチバナ〜」
突然、後ろから肩を組まれた。
「おまたせ〜、って、誰、今の」
と、ニヤニヤしてる、親友ふたり。
「え、えーと、」と少し動揺しながらも、
「中学のときの同級生」と言うと、
「よーし、その辺りのところを、ネホリンハホリン、とことん聞かせてもうらおうじゃないかぁ」
肩に手を回してきた親友がそう言うと、もうひとりの親友も楽しそうに笑ってる。
ふたりがそのつもりなら、私だって、
「よーし、いいだろう、今夜は私の話に、とことん付き合ってもらおうじゃないかー!」
と、ふざけた調子で叫んだ。
ふたりも盛り上がる。
何やってんだ、受験生。
毎日勉強ばかりで、暗い気持ちに襲われたりもするけど、楽しいことだってあっていいよね。
私は、ふたりの親友と肩を並べて歩き出す。
会話するたびに、交じり合う白い息。
やっぱり、いいなぁ………この季節。
おしまい
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