【第631回】第四弾-「たくましい経済、自由で優しい社会」~立ち上げ屋、実務家の山田太郎だから実現できる世界〜(2025/06/11) #山田太郎のさんちゃんねる 【文字起こし】
今回の概要
山田太郎のさんちゃんねるです。
今日はシリーズの第4回、「実務家・山田太郎だから実現できる世界、国を変えるスタートアップ論」というテーマでお送りします。私は現職国会議員でありながら、唯一、上場企業を経験した創業社長でもあります。その立場から、スタートアップについて分かりやすく説明していきたいと思っています。
シリーズの第1回目はロボットについて、第2回目はコンテンツ産業について、第3回目は産業の「ものづくり」をどう変えるかについてお伝えしました。そして、仕上げとなる今回は、まさに「スタートアップ」をテーマにお送りしていきます。

前回、「たくましい経済政策」というテーマで8つの軸を立てました。前回の産業に関する話でも少し触れましたが、今回は特にスタートアップがどのように影響しているのかという点を見ていきます。実は、コンテンツやロボットの分野においても、スタートアップの存在が非常に重要です。例えば、ヒューマノイド型のロボットや汎用性の高いロボットを実現するには、どうしてもスタートアップの力が必要になります。コンテンツ産業においても、新たな企業が参入しない限り、成長は難しいでしょう。
さらに、新しいものを作り出していく上では、知財(IP)をはじめとした無形資産を中心に展開することが必要です。また、スタートアップは投資が前提であり、損益計算(PL)よりもバランスシート(資産・負債管理)を重視する経営が求められます。研究開発(R&D)への投資やデジタル化の推進など、スタートアップの成長が「たくましい経済」を支えるためには欠かせません。日本が真に変化するためにも、スタートアップの成長は非常に重要であるということを、今日は中心にお伝えしたいと思っています。
スタートアップの役割と日本経済の未来

まず、「スタートアップ5カ年計画」が示されていますが、特に重要なポイントは資金調達とオープンイノベーションの推進です。これらの観点から、スタートアップがどのように成長し、社会課題の解決につながるのか整理していきます。

最初に注目したいのはGDPです。日本は残念ながら、アメリカや中国に大きく差をつけられてしまっています。中国は2009年から2010年ごろにかけて日本のGDPを抜き、アメリカも継続的にGDPを伸ばしています。この状況を打破し、もう一度日本のGDPを成長軌道に乗せるためには、スタートアップが果たす役割が非常に大きいと思っています。

もう一つの社会課題は、人口減少と高齢化です。日本では生産労働人口が急速に減少し、高齢化率が高まっています。このままでは2050年にかけて国力が大きく疲弊する可能性があります。こうした課題を解決する上でも、スタートアップが重要になってきます。
また、地方創生という視点でもスタートアップが鍵となります。以前もお伝えしましたが、地方の自治体は人口が2万人を割ると、多くのサービスが消えていきます。弁理士や弁護士といった専門家の事務所も、人口が2万から5万人を割ると維持が難しくなります。日本にある1741の自治体のうち、実に3分の1が人口1万人以下となっています。このような地方の課題を解決し、地域を元気にするためにも、スタートアップの存在は重要です。大企業は東京や大阪などの都市圏に集中しますが、スタートアップは地方の活性化にも貢献する可能性があります。今日はこの点についても詳しく説明していきたいと思います。

さらに、アメリカのスタートアップが強い理由についても触れていきます。アメリカ経済はS&P500を見ても、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)とNVIDIAを除くと、日本のTOPIXや日経225とほとんど変わりません。つまり、アメリカの経済成長の源泉は実はGAFAMとNVIDIAに代表される一部の企業だということです。このことから、スタートアップの成功の秘訣が見えてくると思います。

また、アメリカ企業の強さは、無形資産(インタンジブル)にあります。AppleやNVIDIA、Microsoft、Googleなどの企業が時価総額を大きく支えています。

一方、日本企業はどうかというと、前回もお伝えしたように、主に「ものづくり」と金融が中心となっています。日本企業の時価総額の約8割は、ものづくり産業によって支えられています。

日本政府は、2035年までに無形資産を中心とした経済へと転換を目指していますが、アメリカのように無形資産が企業価値の9割を占めるようになるのは難しいでしょう。やはり日本型の経済成長を目指すことが求められているのです。

では、スタートアップが日本経済の成長を本当に促進できるのでしょうか。すでにスタートアップによる経済効果は明らかになっています。

現在、日本のスタートアップは直接的に約10兆円の経済効果を生み出しており、直接雇用は約52万人、関連産業を含めると約20兆円のインパクトがあるとされています。これはGDPに換算すると、北海道と同等の規模になります。こうして見ると、スタートアップの経済的な影響力の大きさが理解できると思います。

また、経済的利益だけでなく、社会を変える力についても考える必要があります。「テンエクスチェンジ」という考え方がありますが、これは従来の改善型ではなく、「突然変異」的な革新を指しています。改善型が少しずつ段階的に社会を変えるのに対して、テンエクスチェンジは全く異なる分野から突然新しい産業が出現するような変化です。こうした急激な変化を促進しなければ、茹でガエルのように気がつかないうちに国力が衰退してしまいます。このような変化を起こす力を持ったスタートアップを育てていく必要があるのです。
以上が今回お伝えしたい、スタートアップが持つ重要な役割と位置づけです。
では、「スタートアップ」や「ベンチャー」とよく言いますが、実際の定義はどのようなものなのか、ここをまず整理しておいた方がいいと思います。

例えば、街でパン屋さんを開いたり、八百屋さんを始めたり、ラーメン屋さんを立ち上げたりするのと、いわゆる「ベンチャー」や「スタートアップ」との違いは何なのかというと、明確な「出口」をイメージしているかどうかです。「出口」というのはIPO(株式公開)だったりするわけですが、これは非常にシンプルに理解できます。
事業の本質がバランスシート(資産・負債管理)型なのか、それとも損益計算書(PL)型なのかという点に違いがあります。損益計算書型の事業では、売上をあげ、その中からコストを払い、残った利益を再投資して企業を大きくしていったり、運営を続けたりします。一方で、スタートアップは投資を受け入れ、その資金を先行的に活用し、後から利益を出して投資分を回収する、つまりバランスシート型の経営です。この順序が違うという点が、まさにスタートアップの特徴になります。
さらに、スタートアップとして企業や事業を立ち上げる際に、必ず内在していなければならないのが「企業価値」です。株価に代表される企業の付加価値がどれほど大きくなるのかが非常に重要であり、キャピタルゲイン(資本利益)を狙えるかどうかがスタートアップには求められます。
さて、日本とアメリカを比較した時、現在経済を支えている企業はどんな企業かというと、結論から言えば、どれも昔はスタートアップ、あるいはベンチャー企業やオーナー企業でした。2000年から2003年頃に栄枯盛衰があり、多くの企業が浮き沈みしましたが、日本企業を例に取れば、トヨタ自動車も元々はスタートアップです。豊田家が始めました。ソニーも、井深さんたちが始めたスタートアップ企業です。ファーストリテイリング(ユニクロ)も柳井さんが始めましたし、リクルート、任天堂、ソフトバンクなど、現在の大手企業も元はスタートアップでした。ただ、これらの企業はすでに大企業へと成長してしまい、今や「スタートアップ」とは言えない状態です。順位もなかなか入れ替わらないのが、日本企業の現状だと思います。

一方、アメリカの直近の状況を見てみると、Apple、Microsoft、Alphabet(Google)、Amazon、NVIDIA、Meta(Facebook)、Teslaなど、すべてスタートアップから始まった企業です。しかも、2010年頃には名前がまだ広く知られていなかった企業も多く、この10年ほどで経済をリードする企業へと急速に成長しています。アメリカでは産業上位の企業が、10年から15年以内に新しく生まれたスタートアップ企業で占められているという現象が起きています。
日本にももちろんスタートアップやベンチャーが新たな会社を作り、社会を変えてきた歴史がありますが、この成長速度や企業規模の急拡大という面で、アメリカとは大きな違いが見られます。このあたりは特に注目すべき点だと思います。

ここで日米の売上高上位500社の設立年代を比較した資料がありますので、これを見てみましょう。濃い紫色は日本企業を示していますが、日本の場合、売上規模の大きい企業の多くは戦後直後に設立されています。また、2000年前後にも企業再編が起こり、大手企業の分割などにより新たに設立された企業が多いという特徴があります。つまり、日本のスタートアップは戦後直後の十数年間に多く生まれています。一方、アメリカでは設立年代が分散しており、戦前・戦後に関係なく、継続的に新たな企業が設立されています。ここに大きな違いがあります。

日本の直近の売上上位企業の多くはNTTの分割など、大企業の分割によって成立しています。そのため、日本企業は特定の時期に集中して設立されており、スタートアップとしては一定の成長段階やステージにおいて苦戦し、生き残れず成長が鈍化してしまうことが多いという課題があります。

私自身も2005年3月に会社を上場させましたが、設立からわずか3年半で上場に至りました。その経験から、ベンチャー企業がどのように成長するのかを少しお話しします。
私の会社は最初の年で約2億〜3億円の売上をあげ、次に約10億円、その後200億円規模の会社へと成長して上場しました。その後、さらに企業を大きくしようと6社ほどを買収し、売上規模を40億〜60億円にまで拡大しました。しかし、その後に海外投資で減損損失が生じ、会社を立て直したものの、私は責任を取って辞任しました。
この経験を通じて感じたのは、企業には30人の壁、100人の壁、300人の壁という規模の壁が存在することです。企業が成長する際にこの壁を超えるのは非常に難しく、私自身もその困難を経験しました。ベンチャー企業は売上10億円程度までは頑張りや勢いで何とかなりますが、それを超えて従業員数が100人近くになると、管理が追いつかず壁にぶつかるということがよくあります。これがスタートアップ企業が超えるべき重要なハードルの一つだと感じています。
さて、国内で付加価値を生み出すベンチャーとはどのようなものなのか、その位置づけについて少し見ていきたいと思います。

「付加価値を出す」とよく言われていますが、前回もスマイルカーブという概念について少し説明しました。企業が付加価値を生み出しているプロセスは、主に設計や開発といった上流工程の部分です。もちろん、最初に「こういうものが欲しい」という発想が生まれた段階が、実は最も価値が高いのです。
また、もう一つ付加価値が高いのは「ブランド」です。エルメスなどを例に挙げて説明しましたが、原価はいくらなのかということよりも、ブランドがあることで非常に高い価格設定が可能になります。さらに高価格である以上、アフターサービスの質も高められ、そのサービスに対してさらに価格を上乗せすることもできます。販売力が強い企業も、商品を高く売ることができます。
こうした設計開発とブランドや販売力という2つの枠組みが、企業価値を高め、高価格で売れる理由になっています。ただし、この2つの役割には違いがあります。販売力、アフターサービス、ブランドなどはやはり大手企業やプラットフォーマーが強く、新しくできたベンチャーがブランドを確立したりアフターサービスを充実させたりすることは難しいのが現実です。これらの付加価値を高める役割を担っているのは、既存の大手企業やプラットフォーマー勢力でしょう。特に、GAFAMプラスNVIDIAは、まさにプラットフォーマーとして非常に強力な存在です。
一方で、研究開発や商品開発、製品開発の分野を考えると、GAFAMプラスNVIDIAといった企業は今でもベンチャー企業を次々と買収しています。GAFAMプラスNVIDIA自体がベンチャー的で最先端の研究を行っていると感じる人も多いと思いますが、実はそれらの企業も年数が経つにつれて徐々に新鮮さを失い、古い企業体質に陥るリスクがあります。そのため、新しい製品やサービス、技術を積極的に取り入れるために、多くのベンチャー企業を買収し、エコシステムを形成していくという形が取られています。M&A(合併・買収)が非常に活発に行われているのです。
こうしたM&Aの対象となるベンチャー企業こそが、まさに研究開発や製品、サービスを作っているのです。企業価値という全体的な付加価値を考える場合、大企業とベンチャーの役割を明確に切り分ける必要があると思います。

企業にはブランド力、経営力、資金力、生産技術、開発技術などさまざまな要素がありますが、ブランド力や経営力、資金力、生産技術は大手企業やプラットフォームの役割であり、開発技術という分野はベンチャーが担う役割でしょう。こうしたコラボレーションが重要であり、大企業だけでは新しい革新的な製品を生み出すことが難しいですし、大企業はベンチャーほど思い切った投資や優秀な人材の確保が難しいという事情もあります。

最近では、ブランド資本や人的資本といった無形資産が、実物資本よりも遥かに高く評価される時代になったと言われています。しかし、役割分担があり、ブランド資本を形成しているのは主に大手企業ですが、それを支えている人的資本はベンチャーが大きな役割を果たしているのではないかと考えます。
この組み合わせが重要であり、これこそが「日本型」のあり方だと私は考えています。アメリカでは、プラットフォーマーを前提に、その周辺にベンチャーが存在するという考え方です。しかし日本では、先ほど見ていただいたように、製造業やものづくり企業が非常に強力な大企業として生産技術を基盤にしています。ただ、新しい製品や革新を生み出すとなると、大企業だけでは動きが鈍くなってしまいます。
そのため、多くの大企業は最近「カーブアウト」という方法を取っています。つまり、自社内の特定事業部門を独立させ、責任を明確化して強制的にベンチャーを作り出す方法です。一方、新しく作られたベンチャーを大企業が買収するケースも増えています。これがいわゆるコーポレートベンチャー(CVC)と呼ばれる手法で、日本でも盛んになってきています。ただ、日本においてなぜコーポレートベンチャーやM&Aがあまり進まないのか、その背景には「のれん償却」の問題があります。これについては後ほど詳しく説明しますが、日本で改革を行わないとベンチャー企業と大企業のコラボレーションが難しいという課題があります。

もう一つ、「生産性」の話もよく出ますが、日本は生産性が低いと言われています。しかし、生産性が低い原因は日本人が怠けているとか、現場の人々の手先が不器用だというわけではありません。生産性とは付加価値のことであり、重要なのは売上の高さです。もちろんコスト削減も付加価値を高めますが、それよりも「安く売りすぎている」という問題があります。原価に少しだけ上乗せしたような価格設定では付加価値は高まりません。
では、どこで付加価値を高めるのかというと、先ほどスマイルカーブで示した通り、上流工程で新しい製品や技術によって付加価値をつけ、高価格化を図る方法があります。または、同じ製品でもブランド力やアフターサービス、販売力で価格を上げる方法も重要です。この2つの方向性を意識することが、生産性向上の鍵になるのではないかと思います。
ここまでは、日本のスタートアップやベンチャーが戦略的な枠組みの中でどうあるべきかという話をしてきましたが、ここからは最近のスタートアップの状況を見ていきたいと思います。
最近、政府もかなり積極的なベンチャー政策を行っています。私の感覚では、正直なところ少しやり過ぎではないかと思うほど、徹底的に資金を投入し、多くのベンチャーを作り出そうとしています。その結果が実際にすごい状況となっています。

2023年度末の時点で、日本にはスタートアップ企業が22,000社あります。その中でも特に大学発ベンチャーが非常に多く、約4,200社を占めています。スタートアップへの資金調達額も8,000億円規模であり、非常に多額の資金が動いています。
私が実際に事業を行っていた2005年3月頃の状況と比較すると大きく変わっています。当時、マザーズ市場が設立されたのが2001年であり、まだ上場企業も100社未満でした。私が上場した時の直前がDeNAの南場さんの会社だったことを考えると、いかに当時の企業数が少なかったかということが分かります。また、ベンチャーキャピタルもまだほとんど存在しておらず、私自身もベンチャーが上場するには非常に高い利益を出さなければならないという厳しい条件のもとで、必死に利益を作っていました。当時はPL(損益計算書)ベースで利益を出す延長線上にベンチャーが存在しました。
しかし、現在では赤字でも上場が可能になっています。将来的な企業価値を示して資金調達がうまくいけば、その時点でM&AやIPOが可能という仕組みになっています。
ただし、日本のベンチャーが抱える最大の問題は「ユニコーン企業」が非常に少ないということです。ユニコーン企業とは時価総額が1,000億円以上ある企業のことを指し、次のホンダやトヨタ、あるいはソフトバンクのような、産業を大きく変えるインパクトを持つ企業のことを言います。日本ではなかなかこういった企業が育たないのが現状であり、その理由についても少し見ていきたいと思います。

また、企業の開業率にも課題があります。日本では年間の企業開業率が非常に低く、全体の会社数に対してわずか4.4%程度しかありません。諸外国はおおむね10%程度で、毎年新しい企業が生まれ、その分一定数が退出しています。

しかし日本では企業がなかなか潰れず、新しい企業も少ないため、人材や資本の流動性が低い状態になっています。

もう一つ、「ユニコーン企業」の国際比較ですが、アメリカでは時価総額1,000億円以上のユニコーン企業が687社もあるのに対し、日本はわずか8社です。中国やヨーロッパ、インドなどの新興市場でも、このユニコーン企業の存在がその地域の経済成長を大きく促しています。日本でもこのユニコーンを増やす必要があります。

現在、日本に存在する8社のユニコーン企業を見てみると、AI分野のPreferred Networks、クモの糸を利用した人工タンパク質開発を行うSpiber、AIを活用するSakana AIなど、いわゆるディープテック系の企業があります。また、スマートニュース(ニュース配信プラットフォーム)やスマートHR(人材管理プラットフォーム)、タクシー配車プラットフォームのGOなど、プラットフォーム型の企業もあります。日本のユニコーン企業はディープテックとプラットフォームの分野に集中しているというのが現状です。

さらに、日本は小型上場が非常に多いという特徴があります。私自身も経験しましたが、日本には「ダウンラウンドIPO」という現象が多いです。これは最初に上場した時の時価総額に対して、現在の時価総額が低下しているケースを指します。本来、上場時の時価総額がピークであってはいけません。上場後も時価総額を伸ばし続けることが理想です。
実際に日本の上場企業の多くが、上場時の時価総額が200億円以下であり、その後もほとんど成長せず、時価総額が変わらないまま推移しているケースが約8割を占めます。また、時価総額1,000億円以上に成長する企業は非常に少ないのが現状です。
私自身は、新しいベンチャーを増やすことも重要ですが、既に上場している企業を次のステージへと成長させることがさらに重要だと考えています。売上規模が100億円から200億円程度で、時価総額1,000億円から2,000億円程度の企業を、10倍の規模(売上2,000億円)に成長させ、次のソニーやホンダ、ソフトバンクのような企業をどうやって育てていくかが非常に重要です。こうした企業が継続的に生まれてこない限り、次世代の上場企業がさらに大きく成長することは難しいと考えます。

ユニコーン予備軍と言われる企業もいくつか存在していますが、まずは時価総額が100億円から500億円程度の企業を次のステージである1,000億円へ、また時価総額が2,000億円以下の企業をそれ以上に成長させることがこれからの重要課題だと思っています。
最後に、分野別に有望なスタートアップをマッピングした傾向を紹介します。これからベンチャーを目指す方にとって、どの分野が成長の可能性を秘めているかは重要な情報になるでしょう。

ここで示したマッピングでは、横軸が「売上業界トップ30社の平均」で、縦軸が「推定の評価時価」となっています。この中で特に売上の伸びしろが高いのが「SaaS」と呼ばれる分野です。また、次にメディア(スマートニュースなど)やeコマースの分野があり、さらにAI分野も注目されています。
次は青色で示した分野ですが、これは技術群です。ロボットやディープテック、モビリティ、宇宙、素材などの分野があります。この分野は、まだ時価総額が低い企業が多いですが、業界トップ30社を取ると一定の規模があります。ただ、技術系ベンチャー企業群は少し苦戦しており、もう少し成長してもよいのではないかと思います。
全体的に見ると、プラットフォーム型、ディープテック型、技術型の企業がそれぞれグループとして存在していますが、極端に成長する可能性が高いのは、ディープテックやプラットフォーム型の企業群でしょう。こうした分野が今後の狙い目になると考えています。
次に、スタートアップが抱える課題について見ていきます。これらの課題を解決していくことで、「日本型ベンチャー」をさらに多く育てていきたいわけですが、大きく4つの課題があります。

一つ目は資金調達です。資金をどのように調達するのか、M&Aをどのように進めるのかという点が課題です。
二つ目はグローバル展開です。国内市場は限界があり、海外市場からの資金を得るにはグローバル展開が必要になります。
三つ目はディープテックのような付加価値の高い産業をいかに成長させるかということです。
四つ目は地域のエコシステムです。日本は東京に一極集中していますが、地域課題を解決し、地域全体を成長させるには地域ごとのエコシステムを形成する必要があります。
こうした4つの観点から、日本型ベンチャーの育成を戦略的に考えることが重要です。

まず成長資金の供給やM&Aに関してですが、アメリカの状況を見ると、ファンドが投資する金額は1回で100億円を超えるようなケースが多く、日本と比較して約2倍の規模があります。特に特徴的なのはステージ別の投資方法です。アメリカではレイトステージ、つまり上場やM&A直前に大規模な資金を投入するケースが圧倒的に多いです。一方、日本はシードやアーリーステージ、つまり企業がまだ成長途上でリスクが非常に高い段階で、小規模な資金を投資することが多いです。
アメリカは、ある程度成長の見通しが立った企業に対して大規模な資金を一気に投入するため、企業が急速に成長することが可能になります。この資金供給の差が両国のベンチャー成長の違いの要因の一つです。

次に、日米のIPO時の資金調達額を比較すると、アメリカは非常に大きな資金を調達しています。IPOで100億円以上調達することは一般的です。一方、日本のIPOは非常に規模が小さく、調達額は低いのが現状です。日本企業の上場時の初値は平均で約100億円前後です。私が上場した時の会社は約200億円でしたが、一般的には約100億円程度です。
しかし、各都市のIPO時価総額を比較すると、シリコンバレーでは中央値で約2500億円と、日本の25倍にもなります。平均値も約8600億円と非常に高く、巨大な企業が多いため平均値を大きく引き上げています。ボストンは約751億円、ロンドンは約73億円で、日本と近い水準ですが、それでもアメリカは圧倒的に高い規模を誇っています。イスラエルのテルアビブも規模が大きく、市場規模が大きな都市が有利だということが分かります。このように、IPO時の時価総額は地域によって大きく異なります。

また、スタートアップのM&Aの規模を比較すると、日本では平均約700万ドル(約10億円)程度ですが、アメリカでは平均約4300万ドル(約60億円)と規模が大きく違います。ただ、日本でも大手企業の本業に近い分野では比較的高値でM&Aが行われる傾向があります。

日本のM&Aの特徴として、買い手と売り手の双方がスタートアップ企業というケースが非常に多いことが挙げられます。

私自身も上場直後に6社のスタートアップを買収しましたが、このようにスタートアップがスタートアップを買収するケースが日本では非常に多く見られます。日本では買収のために上場したと言っても過言ではない状況があるのです。
このような状況が起きる理由の一つが「のれん代」の問題です。私自身も、自民党に所属してから2019年以来、毎年党内で「のれん代の償却を廃止すべきだ、国際基準(IFRS)に準じるべきだ」と主張し続けてきました。現在、のれん代償却を廃止する方向で動いており、これによって日本のM&Aがさらに活性化すると考えています。

「のれん代」とは、買収時の企業価値における純資産を超える付加価値部分のことを指します。例えば、企業の純資産が10億円の場合、その企業を100億円で買収すると、差額の90億円がのれん代となります。日本の会計基準では、こののれん代を5年または10年以内に均等償却することになっています。
これが問題で、高額で企業を買収すると毎年のPL(損益計算書)に多額の償却費用が計上され、企業の業績が赤字になる可能性があります。こうした問題が日本のM&Aを阻害している大きな要因になっているのです。
でも考えてほしいのですが、買収された会社というのは別になくなるわけではなく、その会社自体が利益を出し続けているのであれば、価値が下がるわけではありません。そうすると、果たしてのれんを償却する必要が本当にあるのかという話になります。
もし償却が必要だとすると、それは買収した会社の中身が変わってしまったり、本当は価値がなかったという場合です。そうした場合は、会計基準に従って毎年評価し、必要に応じて減損処理を行えばよいわけです。ところが日本では、会社の価値が実際には下がっていないにもかかわらず、強制的に毎年均等にのれんを償却しなければならないため、高値でのM&Aが難しくなっています。
日本においてIPO(新規株式公開)が一番良い方法だと言われてしまうのは、こうした理由によってM&Aがあまり行われないからです。アメリカでは、ベンチャー企業のエグジット方法として9割がM&Aですが、日本ではIPOが約7割、M&Aが約3割です。M&Aがうまくいかなければ、最初に述べた課題に戻ってしまいます。
最初に述べたように、プラットフォームやアフターサービス、メンテナンス、ブランドの形成は大手企業の役割であり、研究開発や製品の上流開発はベンチャー企業の役割です。これらが融合するためには、M&Aによって一体化することが非常に重要なのです。しかし、日本ではIPO後もベンチャー企業が単独で存在し続けることが多く、これが問題を引き起こしています。

IPO自体は悪いことではありませんが、単独で存在し続けることによって、人材の循環が難しくなります。一社だけで孤軍奮闘していかなければならず、大手企業との提携がないため、人材や資金の循環も限られてしまいます。一方で、大手企業と提携すれば人材の流動性も生まれ、資金面でも大手企業から豊富な資金供給を受けられるため、大きなメリットが得られるのです。
大手企業がM&Aを行う際、のれんの償却があると、会計上の損失が発生し、それが経営者にとって株主からの批判を浴びるリスクになります。そのため、のれんの償却制度が廃止されれば、M&Aが活性化する可能性が高まります。私自身も自民党に入って以来、のれんの償却廃止を主張してきましたが、現在その方向で進んでおり、M&Aの促進が期待されています。
さて次に、グローバルエコシステムのハブとしての役割について、資金や人材がどのように混ざり合い、グローバル展開するかを見ていきたいと思います。

最近の資金調達の特徴として、海外から日本のスタートアップ企業への投資が増えてきています。特に2021年は非常に大規模な資金調達が行われました。振り返ると、2021年というのはちょうどコロナ禍でしたが、その時期に100億円を超える大型の資金調達案件が複数ありました。スマートニュース、スパイバー、スマートHRなど、いわゆるユニコーン企業が200億円や16
0億円規模の資金調達を成功させ、大変賑わいました。
しかし、その後のウクライナ戦争などをきっかけに世界的に資金調達環境が厳しくなり、アメリカではベンチャー企業への資金供給が約59%減少しました。中国やイギリスも非常に厳しい状況でしたが、日本は比較的安定しており、資金調達の減少幅は小さく、再評価されている状況です。ただ、日本の場合、一案件あたりの資金調達額が非常に小さいという課題は依然として残っています。

エコシステムの観点から見ると、世界の資金の流れやディープテックに関する起業家と投資家の関係では、サンフランシスコやシリコンバレーが絶対的な中心地となっています。ニューヨークも資金調達の面で重要です。そのほか、東京、テルアビブ(イスラエル)、ロンドン(ヨーロッパ)、中国、シンガポールも重要な拠点です。日本はグローバルスタートアップエコシステムのランキングで現在10位に位置していますが、世界的な金融、人材、技術のハブとして、さらに魅力的になるかどうかが重要な課題です。

日本の状況を具体的に比較すると、パフォーマンス、資金調達力、企業経験の面で弱さがあります。マーケティングや特許などの技術分野では評価が高い一方、それ以外の面では評価が非常に低いため、これらの分野を強化する必要があります。

一方で、世界のベンチャーキャピタルやアクセラレーターは日本市場への進出を徐々に進めていますが、こうした情報はあまり知られていません。

また、スタートアップビザの導入も重要な施策です。世界中の投資家や優秀な技術者をどのようにして日本に取り込むのかが課題です。もちろんこれは難民の受け入れとは全く別であり、世界の技術や資金を日本に集めることが目的です。

また、逆に日本のスタートアップが海外に進出し、現地でノウハウを提供したり、新たな市場を開拓したりすることも重要です。つまり、海外から日本へ、日本から海外へという双方の流れを強化する必要があります。

昨年、私はシリコンバレーやスタンフォード大学を訪問しましたが、現地は非常にオープンで自由な雰囲気がありました。日本では東京大学を気軽に訪れるイメージはあまりありませんが、スタンフォード大学はキャンパスそのものが観光名所にもなっています。スティーブ・ジョブズが卒業式スピーチを行ったメモリアルチャーチなど、自由に訪れることができ、研究チームとも気軽に交流できるなど、非常に開放的な環境が整っています。こうした環境が日本とは大きく異なり、日本のベンチャーエコシステムが学ぶべき点だと思っています。

それからもう一つ、シリコンバレーそのものが、まさにベンチャーの教科書のような場所であり、博物館のような存在でもあります。例えばインテルが博物館を持っていて、コンピューター技術の歴史やITがどのように発展してきたのかを学ぶことができます。東京にはこういった施設が果たしてあるでしょうか。このような環境も、人を惹きつける大きな要因の一つなのだと思います。

また、企業の取り組みにも日米の違いを感じます。例えば、私は昨年シアトルにあるアマゾン本社を訪れましたが、そこには一般の人も入れるフェア(展示施設)やジャングルのような施設があります。入口にはバナナスタンドがあり、誰でも無料でバナナをもらえるのです。「お金を払う必要があるのか」と尋ねると、「誰でも自由に取っていい」ということでした。私も実際にいただきましたが、必ずしもアマゾン社員である必要はありませんでした。

また、マイクロソフトもビジターセンターを充実させており、世界中から技術者を含め、多くの人を積極的に受け入れています。このような「オープンドア」の姿勢が整備されているのです。日本企業はどうしてもクローズドで、気軽に企業内部へ入れる雰囲気がありません。こうした日本の名立たる企業が世界中から人材や資金を引きつけるためには、もう少しオープンな環境を作っていく必要があるのではないかと思います。こういった環境整備が、まさにハブとしての役割を果たすための前提条件だと私は考えています。

次に、ディープテックの成長について触れます。ディープテックの多くは大学発ベンチャーから生まれており、日本でも大学発スタートアップの数は非常に勢いよく増えています。

一番多いのは東京大学で、東大をはじめ、慶應義塾大学、京都大学、大阪大学など、多くの大学からベンチャーが誕生しています。東大だけでも約420社が設立されています。

しかし、課題として、1社あたりのディープテック企業への投資額は非常に低く、例えばSaaS企業と比較すると約半分程度にとどまっています。ディープテックといっても、プラットフォーム型ディープテックと純粋なディープテックでは資金調達に差が出てしまっています。

ただ、大学発ベンチャーを中心とするディープテック企業は、多くの国内スタートアップの中でも資金調達に成功している例が多いです。逆に言えば、ディープテックの形を取っていなければ、世界中から資金を調達することは難しいということです。その意味でもディープテックの存在は非常に重要だと思います。

また、日本についてはネガティブな見方をする方も多いのですが、技術力という意味では特許(パテント)や特許群(パテントファミリー)のシェアにおいて、日本はまだまだ強い存在です。アメリカは主にバイオや化学分野の特許が多いのに対し、日本は電気工学、一般機械、制御系などの特許が多く、中国などと比較しても日本の基礎技術の特許数は圧倒的に多いのです。表面的には中国などが成長しているように見えますが、基礎技術という観点から見れば、日本の強みはまだまだ健在だと認識していただきたいと思います。

さらに発明や科学論文の分野でも、日本は世界的なクラスターの中で非常に強い位置にあると言われています。ただ量が多ければ良いというわけではありませんが、質・量ともにキープされていることはチャンスだと思います。

また、環境技術に関しても、日本は非常に強みを持つ国の一つであり、ブラジルなどと並び世界をリードしています。これからエネルギー資源の問題や、AIの普及に伴う電力供給の課題が重要になる中で、GX(グリーントランスフォーメーション)投資という枠組みも非常に重要になるでしょう。
アメリカでは、GX投資を推進してきましたが、トランプ氏がGX投資を止めようという動きを見せるなど、世界的にもGXを巡る競争が激しくなっています。

いずれにしてもディープテックにおいては、人材、資金、事業が循環する仕組みを整える必要があります。

同時に、民間企業の研究開発費に占めるスタートアップの割合がまだ少ないため、この部分の強化が必要だと考えます。

さらに、大学発ベンチャーとIPOした大学発ベンチャーの違いを分析したところ、IPOを成功させるためには、CEOとしての企業経営者の存在が圧倒的に重要であることが分かりました。大学発ベンチャー全体としては、教職員や学生が中心のケースも多いですが、実際にIPOに至る企業は、企業経営経験者がCEOを務めるケースがほとんどです。したがって、経営マネジメント力が非常に重要であるということを認識する必要があります。

また、国(政府)によるスタートアップからの調達も、日本は非常に少ないという課題があります。官需においてもスタートアップ企業から積極的に調達を行うよう、制度を緩和する必要があると感じています。

アメリカ政府はスタートアップを直接支援しないという立場ですが、宇宙開発分野などでは大規模な政府支援を通じてスタートアップ企業を育成していることは間違いありません。このような柔軟な仕組みが日本にも必要ではないかと思っています。
地域貢献と大学発スタートアップの重要性

全体のスタートアップは、一般的に関東、特に東京に集中しています。しかし大学発のスタートアップについて見てみると、大学が各地域に展開しているため、必ずしも東京ばかりではありません。このことから、大学発ベンチャーは地域を支える重要な役割を果たしており、地域創生に大きく貢献していると言えます。

関東が圧倒的に多い中でも、関西圏や北海道は魅力的な地域として注目されています。各地域でも、大学を中心として徐々にスタートアップが増えてきています。

ただ、資金調達となると圧倒的に東京に集中しており、この状況を改善する必要があります。

また、地域ごとに得意とする分野にも特徴があります。首都圏、特に東京はあらゆる分野で圧倒的に多いのですが、エレクトロニクス分野では東北地方が目立ちます。これは東北大学が非常に優秀であるためです。バイオ分野では近畿地方、特に京都周辺が強く、バイオ関連や化学関連企業が多く集積しています。宇宙分野では北海道が広大な土地を活かして起業が進んでいます。
このように、地域ごとに大学の研究力を活かした産業クラスター形成の可能性があります。ベンチャー企業が地域を変えていくという役割も大きいと思います。この観点から、産業集積エコシステムという考え方も重要になるでしょう。

さらに、自治体の協力も不可欠です。現状では自治体が積極的にベンチャー育成に取り組んでいるという印象が薄いため、地域活性化のためには大学と自治体が協力してベンチャーを支援していく必要があります。
日本のスタートアップエコシステムの課題

スタートアップ、大企業、大学の研究室、ベンチャーキャピタル(VC)、自治体など、それぞれが役割分担しながら共同していくことが求められます。

ただ残念ながら、日本ではスタートアップの数は増えているものの、企業価値が十分に高まっていません。特に、ディープテック系やグローバル展開可能な企業を中心に育成していくことが、今後の成長に向けて非常に重要です。
国はこうした状況を踏まえて「スタートアップ5カ年計画」を作成しました。私自身もこの計画に関わる小委員会の役員を務め、当時の岸田総理に提言書を提出したメンバーの一人でもあります。また、党内でもスタートアップ政策責任者として関わっています。

アメリカのエコシステムは非常に循環型でよく機能しています。スタートアップの立ち上げ時には資金が豊富に提供され、多くのVCが存在しています。ユニコーン企業へ成長する過程でも、人材がどんどん流入し、ユニコーンになれなかった企業もIPOやM&Aを通じたセカンダリーマーケットで資金を得られます。ユニコーン企業が成功してキャピタルゲインを得た関係者は、その経験を活かして次のスタートアップを立ち上げたり、経営者として参画したりします。このような循環がアメリカのエコシステムの強みです。

一方、日本の現状は厳しく、最初から資金が不足し、企業規模も小さい状態です。ストックオプションなどのインセンティブも少なく、魅力的な人材はなかなか集まりません。普通の企業で働くほうが待遇がよいと思われています。さらに、日本ではセカンダリーマーケットが未成熟であり、M&Aも進まないため、なかなか上場が難しい状況です。「のれん代」の償却問題もあり、大企業も積極的にM&Aを行えないという課題があります。キャピタルゲインも十分得られないため、成功体験をした経営者が次のベンチャー企業を生み出す循環もできにくくなっています。

このため、日本もアメリカ型とまではいかなくとも、スタート時点から十分な資金提供を行い、IPOだけでなくM&Aを含めたセカンダリーマーケットを充実させる必要があります。成功した企業がキャピタルゲインを得て、次のベンチャー形成へと循環させていく仕組みが重要なのです。

こうした背景から、「スタートアップ5カ年計画」は、人材育成、資金供給、オープンイノベーションの促進を軸に整備されました。政府も成長段階に応じた支援メニューを豊富に用意しています。まだ規模としては十分ではありませんが、このような政府のスタートアップ支援戦略が進められていることを理解していただきたいと思います。

具体的には、産業革新投資機構による資金提供や、エンジェル投資家向けの税制優遇(エンジェル税制)、ディープテック企業への支援策などが行われています。

さらに、「ジャパンキャンパスイノベーション」としてシリコンバレーにハブセンターを設立し、企業からのスピンアウト(カーブアウト)促進システムの導入や公共調達の活用を通じたベンチャー育成なども推進されています。

人材政策としては、ストックオプション制度の充実が挙げられます。スタートアップに参加することがリスクはあるものの、大企業以上に大きなチャンスが得られるという魅力を提供できるよう、政策的な支援を進めています。このように、政府としてもさまざまな政策を通じてスタートアップエコシステムの形成を進めているところです。
今回のまとめ
さて、ここで改めてまとめたいと思います。まさにベンチャー主導の経済成長を実現するための私案ということで整理します。

最初に申し上げた通り、大手企業の多くも、もともとはベンチャー企業でした。ホンダやソニーをはじめ、日本の大企業も元を辿ればベンチャーとして創業されています。ただ、戦後の高度成長期に設立された企業の順位がほとんど変わらないという現状があります。
一方、アメリカでは、この10年から15年の間に誕生した企業がトップ企業を占めています。ベンチャーが次々とイノベーションを起こし、新しい産業構造を作り出しています。日本でも同様に、ベンチャーが時代を切り拓き、新しい勢力として既存の産業を乗り越える形で出てこなければ、大きな産業の成長は望めません。既存企業が頑張っても、それだけでは成長に限界があり、日本経済の将来に対する不安の要因にもなっています。
もう一つ重要なのは社会課題の解決です。高齢化社会が進む中、例えば介護の問題解決のためにはロボット技術など新しいサービスが必要です。こうした課題解決型サービスの開発は既存のビジネスだけでは困難で、ベンチャー企業が果たす役割が非常に大きくなります。
これまで、経済には政府があまり介入しないことが一般的でしたが、現在はテクノロジーマップなどを通じて、方向性を明示することが必要な時代です。AIやロボットの開発には膨大な初期コストが必要であり、失敗リスクも高いため、国がある程度のリスクを負担して初期投資を支援する仕組みが求められます。特に半導体やAI開発は巨大な投資が不可欠です。経済出身の私から見れば、政府が方向性を示すのは本来望ましくないかもしれませんが、今の時代には必要であることは間違いないと思います。
日本型ベンチャーについては、「AI×ものづくり」という形が重要です。最近、東大の学生など若い世代と接していると、みんなが新しいビジネスとしてAIを挙げています。東大発ベンチャーが約430社ある中で、おそらく半数程度がAI関連ではないかと思います。そのAIをどこに適用するのかというと、やはりものづくり分野です。日本の企業時価総額の約8割がものづくり産業によって支えられていることを考えると、ベンチャーが持つAI技術と既存大手企業のものづくり技術が協力し、M&Aも含めて連携していくことが非常に重要です。一時期、日本のものづくり産業は人気が低下していましたが、「AI×ものづくり」という形であれば再び復活する可能性があると感じています。
さらに、ものづくりは情報産業であるという意識を強めて集中して取り組む必要があります。アメリカ型のように無形資産(インタンジブル)やプラットフォーム型企業(GAFAM+NVIDIA)のみで経済を成長させることは、日本においては難しいでしょう。
日本が特に成長させるべき市場として、ロボット、コンテンツ、シンものづくりの3つが挙げられます。ロボット分野では絶対に負けるわけにはいかないと考えています。高齢化や人手不足、独身世帯の増加などを背景にロボット技術の需要は高まる一方で、中国に負けることなく、世界一のロボット産業を目指すべきです。
また、コンテンツ産業も重要です。輸出規模として、自動車産業は20兆円の規模を持っていますが、その次がコンテンツ産業で5.3兆円です。政府も2033年までにコンテンツ産業を輸出20兆円規模に育てるとしています。国内産業の中で年間成長率6.8%から10~15%に伸ばせる唯一の分野であるため、この分野を成長させない手はありません。
そして、現在日本経済の時価総額の7〜8割を支えている「ものづくり」を捨てるわけにはいきません。これを「シンものづくり」として、AIと組み合わせて生まれ変わらせ、生産性が高く価値の高い製品をベンチャー企業と共に生み出す必要があります。
他にもバイオや医療といった産業チャンスはありますが、当面はロボット、コンテンツ、シンものづくりの3分野に集中して取り組むべきです。ロボットでは中国を圧倒する技術力を持ち、コンテンツ産業では日本の漫画・アニメ・ゲームを世界一の地位に確立させ、ものづくりでも世界トップレベルを維持する。このような明確な産業戦略を持つことで、日本経済に対する不安は軽減され、人々の所得も自然と増加するでしょう。
これらの分野に焦点を当て、より一層の成長を目指していくべきだと考えています。
あと、留意点ということですが、前提として先ほども言いましたように、ベンチャーだけでもダメですし、大手企業だけでもダメです。設計や開発などの上流工程はベンチャーが得意かもしれませんが、ブランド力や経営管理力、そしてプラットフォーム構築という面では、大手企業が強みを発揮します。
こうした双方がコラボレーションし、M&Aも含めて循環型の経済構造を作ることが重要だと思います。日本ではM&Aがなかなか浸透していないため、大手企業が自らを成長させるために、強制的にカーブアウトという形でベンチャーを作るケースがあります。しかし、カーブアウトされた社員は追い出されたような気分になったり、リスクは高いのに大手と同じ管理手法で待遇が悪化したりと、不満を抱えることがあります。こうした問題を解決し、大手企業とベンチャー企業がしっかりと協力していくことが重要です。
また、ベンチャー企業が研究開発(R&D)や人材輩出の源泉になることも期待しています。
皆さんはいかがでしょうか。私はこうしたベンチャー政策をしっかり実施すれば、日本経済は本当に蘇ると信じています。

「たくましい経済」ということで、今述べた政策を行えば、最初に提唱した8つの軸が改善されていくと確信しています。皆さんと共に、日本経済をもう一度盛り上げていきたいと思います。
さて、ここまでが『実務家・山田太郎だからできる』シリーズ第四弾としてお伝えした内容です。
実務家・山田太郎だからできるシリーズまとめ
第一弾はロボットについてでした。ロボット技術は、日本が直面する社会課題を解決するためにも必須です。ロボット導入が進まなければ、人手不足や少子化による労働人口の減少問題に対応できず、日本経済は成り立たなくなります。移民政策には日本特有の難しさもあるため、ロボットを導入するしか選択肢はないと考えています。
第二弾のコンテンツ産業も非常に重要です。現在、5%以上の成長を遂げているのはコンテンツ産業のみです。製造業は自動車以外では大きな伸びが難しいですが、コンテンツ産業には成長の上限がなく、世界的に需要が拡大しています。世界でも年率6.8%の成長をしており、日本は漫画やゲームなどで既に強みを持っています。これを更に伸ばさない手はありません。
第三弾では、産業構造を変える必要性をお伝えしました。特に「ものづくり産業」は変革が必要です。スタートアップ企業が地域や大手企業を巻き込んで、産業構造を刷新することが求められています。
今回、第四弾で取り上げたスタートアップ論は、これら全てに関連しています。スタートアップが地域活性化や大手企業との協業を通じて、日本経済全体の変革を推進していくことが必要だと思います。
他にも日本経済を伸ばす方法は多くあるでしょう。しかし、私は自分が担当している分野について、党内でも徹底的に責任者として取り組んできました。ロボット分野では、ロボット議員連盟のリーダーとして、10年間放置されていた政府戦略の見直しを主導しました。また、コンテンツ分野では、知財調査会でこの6年間、著作権などの知財をいかに産業にプラスにするかを検討し、実際にコンテンツ産業の成長に貢献してきました。
一方で、現場の自由度も重要です。これを守らなければ日本のコンテンツ産業は衰退してしまいます。さらに、私自身が出身の製造業・ものづくり産業も、日本を支えてきた基幹技術ですから、決して放棄することはありません。この分野についても、私はライフワークとして20代の頃から取り組んできました。特にプロダクト・ライフサイクル・マネジメント(PLM)分野では日本で第一、第二の存在であるという自負があります。
そして私自身も国会議員の中で唯一、ゼロから会社を創業し、上場まで経験しています。また、私が関与した企業は合計3社が上場を果たしました。さらに、企業の買収や、自身の会社の再生のための売却も経験しています。このような実務経験を政治を通じて日本経済に還元したいと思っています。
私は、これらロボット、コンテンツ、ものづくり、スタートアップという4つの柱を何としても成功させるため、全力で取り組んでいきます。ぜひ、この実務家だからこそできる「山田太郎の改革」の四本柱を皆さんにも知っていただきたいと思います。
この番組を視聴して良かったと思われた方は、ぜひ「いいね」を押していただきたいと思います。また、多くの方々に引用コメント付きでどんどん拡散していただき、この取り組みを知っていただくとともに、さまざまなご意見をいただければ幸いです。
いかがだったでしょうか。今回は少しYouTuber風に、一人で画面を見ながら4回のシリーズとしてお送りしました。皆さんに私のメッセージが届き、日本をより良くするために一緒に頑張っていけたらと思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。どうもありがとうございました。
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