【2026年7月6日 参・決算委員会 質疑】 国会質疑の裏側大公開 ~戦略17分野への官民投資・防災DXを徹底解説~【山田太郎のさんちゃんねる694】2026.7.8配信文字起こし
※本記事は配信を基に、AIツールを用いて内容を整理したものです。
決算委員会の舞台裏と海賊版対策
山田:
山田太郎の「さんちゃんねる」です。今回は、7月6日に開かれた参議院決算委員会の模様や、委員会の裏事情などをたっぷりとご紹介していきたいと思います。
そして今日は、新たなニューフェイスとして、アシスタントの伊奈さんに来ていただきました。ありがとうございます。
伊奈:
よろしくお願いします。
山田:
今日は伊奈さんに、視聴者に近い素朴な目線から、いろいろなことを聞いてもらおうと思っています。まず、伊奈さんは前回の決算委員会を傍聴されていましたが、実際にご覧になって、いかがでしたか。
伊奈:
いつもテレビで見ている大臣や総理が目の前にいらっしゃって、非常に緊迫した雰囲気で、その場の空気に圧倒されました。
山田:
なるほど。生で見る高市さんはいかがでしたか。
伊奈:
とても迫力がありましたが、少しお疲れのようにも見えました。
山田:
今回、国会が正常化し、その再開後の最初の委員会が決算委員会でした。
高市さんは、それまで予算委員会をはじめ、さまざまな委員会でいろいろと言われ続けて、そのなかで、久しぶりに決算委員会へ出席されたということもあり、おそらく疲れがたまっていたのではないかと思います。インド出張から帰国されてすぐだったこともありました。
そうした状況で総理を迎え、決算委員会の総括質疑を行ったわけです。この点については、後ほど詳しく説明していきたいと思います。
さて、今日は最初に、私が関係してきた分野で政治が実際に動いたというニュースを一つお伝えしておきます。共同通信が「漫画・アニメ保護へODA活用」というニュースを伝えています。

これは何かというと、外務省がODA、つまり政府開発援助を活用し、漫画やアニメなどの海賊版被害に対応しようというものです。
主な内容は二つあります。一つは、海賊版が流通している国や地域において、正規版を流通させるための取り組みを進めること。もう一つは、そもそも海賊版を放置している国に対してODAを供与し続けることが適切なのか、という問題です。
つまり、ODAを一つの交渉材料、あるいは政策上の武器として活用し、海賊版の取り締まりを進めていこうという話ですが、この点について、小山さんはいかがですか。
小山:
この件については、山田さんが以前から、ODAを海外の海賊版サイトや偽グッズの撲滅に活用するべきだと、ずっと主張してきました。
現在のODA担当課長なども、この提案に対して「それはいいですね」と、かなり前向きに受け止めてくれました。足掛けでいえば1年弱、少なくとも半年以上にわたって取り組んできたものが、今回、このような形になったというのが実情です。
実際にどの国を対象として、どのような予算を付け、具体的に何を実施していくのかについては、これから決めていくことになると思います。
ただ、海外の海賊版対策について、何でもかんでも知的財産戦略本部の事務局や経済産業省、文化庁だけに任せればよいわけではありません。海外を相手にする案件では、やはり外務省が強い。外務省には、外交上活用できるさまざまな手段があります。
そうした外務省の力を活用することで、一つの成果につながりそうな形が見えてきたのではないかと思います。
山田:
このニュースについては、私は少し裏事情があるのではないかと感じています。率直に言えば、「政府はちょっとずるいな」と思っているんです。
なぜかというと、このニュースが出たタイミングです。報道が出たのは7月5日の日曜日でしたが、政府は、私が翌日の質疑でこの問題を取り上げることを、すでに把握していたはずなんです。
小山:
その時点で、質問通告はすでに終わっていたということですね。
山田:
政府の立場からすれば、たとえ質問者が与党議員であったとしても、国会質疑を受けて「これから新たに取り組みます」と答弁するより、質疑の前に政府として方針を決めておき、大臣が答弁する際には「すでに政府として決定しています」と説明できる状態にしておきたかったのではないかと思います。
実は、「幻の質疑」と呼んでいるものがあります。今回、時間の関係などで実際には行えなかった質問です。
海賊版対策についても、その質疑のなかで取り上げようとしていました。ところが、私が質問しようとしていた内容が、そのまま政府の決定事項となり、質疑の前日にニュースとして報じられたわけですが、こういうことは、実はよくあります。
なぜこのようなことが起こるのか。たとえ与党議員からの質問であっても、国会質疑の場で新たな方針が決まったという形にしてしまうと、野党議員の質疑に対しても、政府が答弁を通じて新たな政策を決定したという形を取らなければならなくなる。政府にとっては、それが何となく都合が悪いのではないかと、私は少しうがった見方をしています。
そういう意味で、今回のニュースを見たときには、「おお、やられたな」と思いました。
一方で、すでにニュースとして出てしまった以上、質疑でどう扱うべきか、私も悩みました。そもそも質疑時間が足りないことはある程度分かっていましたから、最後まで質問に入れるべきかどうかを考えていたところでもあります。
決算委員会と会計検査院
山田:
さて、今回は決算委員会について取り上げます。まずは、「そもそも決算委員会とは何か」というところから説明していきたいと思います。
伊奈さん、「予算委員会」や「決算委員会」という言葉はよく耳にすると思いますが、決算委員会がどのような委員会なのか、ご存じですか。
伊奈:
言葉自体は聞いたことがありますが、詳しいことは、なかなか分かりません。ぜひ先生に教えていただけると……。
山田:
「先生」はやめてほしいんですけどね。
伊奈:
では、山田さんに教えていただけるとうれしいです。
山田:
分かりました。予算委員会は、よく「国会の華」といわれます。一方で、決算委員会は、予算委員会と比べると少し地味な存在なんですね。
国会は、通常、1月中旬ごろから開かれます。予算については、まず衆議院に優越権があるため、最初の約1カ月間、つまり2月中旬ごろまで衆議院で審議されます。
その後、参議院が審議を引き継ぎ、3月末ごろまで続ける。したがって、毎年1月から3月までは、衆議院と参議院で予算委員会が開かれる時期ということになります。
予算の成立は、非常に重要です。予算が通らなければ、4月以降に国のお金を使えなくなってしまいますので、この時期の国会は、予算を成立させるために大変忙しくなります。
では、決算の審議はいつ行っているのか。実は、予算委員会が終わると、すぐに決算委員会が始まります。おおむね4月から、毎週月曜日に開かれるのが相場です。
今回は、合計で9回開かれました。長い日には、1日当たり約6時間にわたって審議していましたから、非常に長時間の委員会を9回も行ったことになります。
「決算、決算」といいますが、今回の決算委員会で審議したのは、いつの予算の決算なのか。対象となったのは、令和6年度、すなわち2024年度の予算です。その予算が、実際にどのように使われたのかを検証しました。

では、そもそも、その決算を誰が検査するのか。検査を担当するのが、会計検査院です。会計検査院が検査報告を作成し、それを内閣、つまり現在の政府が国会に提出します。提出先は、衆議院と参議院の両院です。
ここで重要なのが、特に参議院で決算を詳しく審査するという点です。参議院では、決算委員会を中心として、政府から提出された決算を審査することになっています。
一方、衆議院には「決算行政監視委員会」があります。もちろん、衆議院でも決算を扱ってはいますが、決算がおまけだとまでは言わないにしても、参議院ほど審査体制が充実しているわけではありません。
そのため、よく「決算の参議院」といわれます。参議院は、それほど決算審査を重視しているということです。ここまでの説明で分かりましたか。
伊奈:
はい、分かったつもりです。ただ、一般の会社とは違って、2年も前の年度について決算を行うという点には、かなり驚きました。
山田:
審査にかかる期間、いわゆる「ターム」の話については後ほど詳しく説明しようと思っていますが、まず、一般の会社ではどのように決算を行っているのかを見てみましょう。
私も上場企業を経営していましたが、上場企業の場合は、通常、四半期ごとに決算を行います。上場していない会社でも、半期ごと、つまり半年に一度くらいの頻度で決算を行うことが多い。
例えば、3月末を決算期としている会社であれば、3月の最終日に年度を締め、その後、翌月以降のどこかで決算内容を発表します。
上場企業の場合、3月末決算の会社は、6月ごろに株主総会を開きます。ただし、決算内容は株主総会よりも前に発表しますから、だいたいゴールデンウィークを過ぎたころに決算を発表し、その後、株主総会を迎えるという流れになります。
つまり、民間企業では、会計期間が終わってから、おおむね2カ月以内に決算を公表するのが一般的なパターンです。ところが、国の場合は、決算審査までに、何と約2年かかってしまいます。
なぜ2年もかかるのか。今回対象となっているのは、2024年度の決算です。2024年度は、2025年3月末に終了します。2024年度の決算なのですから、年度が締まるのは2025年3月になるわけです。
そして、2025年3月に締めた決算内容を、直ちに会計検査院に検査してもらいます。その検査結果が国会に提出されるのは、同じ年の秋ごろです。そうすると、2025年秋に国会へ提出された決算を実際に審議するのは、翌年、つまり2026年の国会になります。
1月から3月にかけては予算審議で忙しいため、決算審議は予算審議が終わった後、4月ごろから始まります。こうして、実質的には2年前の年度の決算を審査することになるわけです。
予算を編成し、決算を審査するまでには、本当に長い時間がかかります。このような仕組みになっているため、「なぜ今ごろ、2年前の話をしているのか」と、よく言われてしまうんですね。
さて、伊奈さんから質問がなかったので、こちらから「会計検査院とは何なのか」という話もしておきたいと思います。小山さん、「会計検査院」という、何やらいかつい名前の組織は、いったい何をするところなのでしょうか。
小山:
会計検査院は、憲法上の根拠規定を持つ組織です。国会にも内閣にも属さず、行政機関や司法機関とも異なる、独立性の高い機関といってよいと思います。国の収入や支出について、その決算が適切に行われているかを検査する役割を担っています。
また、国の機関だけを検査するわけではありません。国が補助金などの財政援助を行っている団体についても、その会計を検査します。そのため、各府省庁だけでなく、実際には非常に幅広い組織や事業が検査の対象となっています。

今、画面の左のほうに「検査の対象」と書かれたオレンジ色の丸があります。その上にある緑色の部分を見ると、「必ず検査しなければならないもの」が非常に幅広く定められていることが分かります。そうした対象をすべて検査しているのが、会計検査院です。
先ほど山田さんが説明したとおり、会計検査院が検査した決算を内閣が国会に提出し、それが決算委員会での審査対象となります。そのため、決算を重視する参議院にとって、会計検査院は非常に関係の深い機関だといえます。
山田:
少し難しかったですかね。「会計検査院は、民間企業でいえば何に当たるのか」と考えると、分かりやすいかもしれません。国にしか存在しない組織ですが、民間に置き換えるなら、監査法人のようなものです。
上場企業の場合、決算が終わると、契約している監査法人が内容を確認します。ただ、企業と契約している以上、本当に完全に中立なのか、どこまで独立性が高いのかという点には、少し疑問が残る場合もあります。
それでも、最終的には監査法人が監査意見を出し、「この決算内容に重要な相違はありません」という趣旨の確認を行います。会計検査院も、それに近い役割を果たしているわけです。会計検査院は、かなり独立性の高い組織ですよね。
小山:
はい。独立性はかなり高いです。
山田:
そうなんです。「泣く子も黙る会計検査院」とでもいうべき存在で、官僚にとっては、会計検査が来るとなれば、「これは大変だ。きちんと対応しなければならない」と、身構えるような組織です。それほど厳しく見られるため、官僚も恐れているということですね。
今回も、会計検査院は、警告決議をはじめ、さまざまな課題を内閣に報告しています。その報告が国会に提出されるわけです。
「このような不正があった」「このような、けしからん事態があった」ということを、非常に細かく指摘します。今回は、そのなかでも大きな項目がいくつか発表されました。
しかし、会計検査院が見ているのは、それだけではありません。国が各地で実施しているさまざまなプロジェクトを、詳細にわたって一つひとつチェックしています。
そのため、会計検査院による検査は、比較的信頼性が高く、非常に厳格に行われていると考えてよいと思います。
小山:
組織の構造としては、公正取引委員会にも少し近いところがあります。
会計検査院には、意思決定を行う「検査官会議」と、実際の検査を行う「事務総局」があります。これらは、会計検査院の内部でも、一応、別の組織として位置づけられています。
つまり、意思決定を行う部門と、実際に検査を実施する部門を分けることによって、会計検査院の内部でも、適正な検査を行うための体制が整えられているということです。
山田:
会計検査院は、憲法上も政府から独立した組織として位置づけられています。そういう意味では、国の機関のなかでも非常に特別な地位にある組織だと考えてもらってよいと思います。
予算委員会と決算委員会の違い
山田:
さて、もう一つ、予算委員会と決算委員会の違いについて、改めて比較しておきたいと思います。

文字どおり、予算委員会は、これから国がどのように予算を使うのかを審議する委員会です。一方、決算委員会は、すでに使い終わった予算について、その使い方が適切だったのかを審議する委員会ということになります。
「決算委員会」という名称の委員会があるのは参議院だけです。衆議院には「決算行政監視委員会」があり、決算だけでなく、行政監視についても幅広く扱っています。そのため、参議院ほど決算そのものに集中して、しっかりと議論し、検証する形にはなっていません。
参議院の決算委員会は、委員数が30人程度です。こぢんまりしていると言いたいところですが、30人ですから、委員会としては結構な大所帯。そのメンバーで決算審査を行います。

次に、委員会の所管、つまり、どのような内容を質問できるのかという点です。予算委員会は、いわば「ワイルドカード」のような委員会です。予算とは、今後の国の政策全般に関わるものですから、基本的には何でも質問することができます。
一方、決算委員会では、過去に政府が行ったことを中心に審議します。
細かくいえば、決算に関する書類には、さまざまなものがあります。予備費の支出に関する書類、決算調整資金に関する書類、国債や債務負担に関する書類、国有財産に関する書類など、非常に多岐にわたります。本来は、そうした決算書類を審査する委員会です。
私自身も決算委員を務めていますが、実際の質疑で、これらの書類そのものについて詳しく審査したという話は、あまり聞いたことがありません。
決算委員会も、事実上、予算委員会に近い形になっている面があります。過去に政府が行ったことを踏まえて、今後どのようにするのかを問うことになるため、結局は「何でもありなのではないか」というほど、幅広いテーマを取り上げることができるわけです。
また、決算委員会では、最初の総括質疑と、最後の締めくくり総括質疑の際に、総理大臣が出席し、全大臣が参加、これは予算委員会と同じです。
テレビ中継も入り、20人の閣僚が全員そろって並びます。NHKの中継が入り、総理も出席することから、決算委員会は「第2の予算委員会」ともいわれ、質疑が白熱することも多い委員会です。

さて、「決算ができるまで」という流れについては、先ほど少し触れましたが、まず決算書を作成し、会計検査院がその内容を検査します。その後、内閣から国会に提出され、国会で審議するという流れです。
先ほど説明した日程に当てはめると、国会で審議するころには、実質的に約2年前の年度の決算を扱うことになります。

審査の方法には、全般質疑、省庁別審査、準総括質疑、締めくくり総括質疑などがあります。決算委員会は、毎年、おおむね8回から9回ほど開かれ、このような流れで審査が行われています。
さて、先ほども少し話題にしましたが、ここで株式会社の決算との違いについても見ておきたいと思います。会社に勤めている皆さんが、日ごろから決算や予算をどこまで意識しているかは分かりませんが、企業には、それぞれ決算期があります。

例えば、3月末締めの会社であれば、3月末で第4四半期、つまりその年度の最後の四半期が終了します。そこで会計を本締めし、4月から新しい年度の第1四半期が始まります。
本当は図に線を引いておけば分かりやすかったのですが、3月末が決算日ということです。企業は、通常、5月ごろまでに決算を発表し、その内容を受けて、6月に株主総会を開き、決算の承認を得ます。
また、株主総会では、決算を承認すると同時に、「引き続き、この役員たちに会社の経営を任せてよいか」という観点から、取締役の選任なども行います。企業の決算は、おおむねこのような日程で進んでいきます。
では、民間企業と国では、何が決定的に違うのでしょうか。国は、どちらかといえば予算を重視します。
「税収がこのくらいになりそうだ」という見込みを立て、そこから予算を編成します。今回でいえば、約120兆円規模の国家予算が組まれていますが、税収についても、この程度になるだろうという見通しを立てます。
そのうえで、限られた予算を各省庁や各政策にどのように配分するのか、いわば予算の分捕り合戦を行うわけです。一方、民間企業は、国とは180度反対で、予算よりも決算を重視する傾向があります。
企業でも、「今年度はこのくらいの売り上げを目指します」「このくらいの利益を出します」といった業績予想は発表しますが、実際の売り上げや利益が予想を上回れば、上回るほどよい。利益が多く出れば、株主をはじめとする関係者にとっては、うれしい結果になります。
そういう意味で、民間企業は予算よりも、最終的にどのような結果を出したのかという決算を重視するわけです。もう一つ考えてもらいたいのは、決算を誰のために行っているのかということです。
国の決算と会社の決算では、その対象となる人が異なります。伊奈さんは、どう思いますか。
伊奈:
国の決算は、国民のためだと思います。会社の決算は、会社のためというか、従業員のため、そして株主のためという感じでしょうか。
山田:
基本的には、株主のためです。株式会社の所有者は株主です。会社は株主からお金を集め、その資金を使って事業を行います。
そのため、決算では、株主が投資したお金を会社がどのように使ったのか、それをうまく活用して、どの程度の利益を生み出したのかを明らかにします。
会社が生み出した利益から法人税などを支払った後に残る利益は、基本的には株主のものです。その利益のなかから、株主に対してどれくらいの配当を出すのか。これは、株主にとって非常に大きな関心事になります。
なぜ冒頭で、このような話をしているのか。
後ほど質疑の内容をご紹介しますが、いわゆる「物言う株主」の問題も含めて、日本では株主への還元や配当が大きくなりすぎているのではないか、という議論を決算委員会の質疑で行ったからです。
その前提となる仕組みとして、国の決算と株式会社の決算の違いについて、最初に触れさせていただきました。
国会と骨太方針の年間日程
山田:
さて、次は、1年間の決算委員会のスケジュールについて見ていきたいと思います。先ほどの説明と少し重なる部分もありますが、秋の臨時国会に決算が提出され、その後、全般質疑が行われ、さらに省庁別の審査へと進んでいきます。

この流れをたどるため、実際に審査するころには、約2年前の年度の決算を扱うことになるわけです。ちなみに、今開かれている国会は通常国会ではありません。伊奈さん、何国会ですか。
伊奈:
特別国会です。
山田:
よく知っていますね。
伊奈:
ChatGPTに聞きました。
山田:
なるほど。では、特別国会と通常国会は、何が違うのでしょうか。
伊奈:
会期を延長できるかどうか、でしょうか。
山田:
そこではありません。まず、通常国会は毎年1月から始まり、会期は150日間と定められています。ところが今回は、会期の途中で衆議院が解散され、衆議院選挙が行われました。そのため、通常国会はいったん閉会したわけです。
選挙後に新たに開かれている国会が、特別国会です。したがって、現在開かれているのは、通常国会ではなく特別国会ということになります。
また、特別国会の会期は、2回まで延長できます。今回は通常国会の途中で衆議院が解散され、その後に特別国会が開かれたため、国会の日程が非常に不連続な形になっています。
衆議院を解散するのか、しないのかと大騒ぎになっていましたが、結局は解散しましたね。ここで、国の政策や予算が1年間を通じてどのような流れで決められているのかについても、改めて見ておいてほしいと思います。
少し決算の話から離れますが、今、何がこれほど忙しいのかというと、「骨太の方針」を作っているからです。
例年、骨太の方針をめぐる議論は6月中旬ごろから始まります。しかし今年は、衆議院の解散などによって、さまざまな日程が遅れました。そのため、事実上の議論が始まったのは7月1日からです。現在、その骨太の方針の内容を決めているところになります。
骨太の方針については後ほど詳しく説明しますが、最終的には自民党の政調全体会で議論されます。「骨太、骨太」と呼んでいますが、正式名称は何でしたか。経済財政何とか方針という……。
小山:
「経済財政運営と改革の基本方針」です。
山田:
そう。なぜ、この骨太の方針がそれほど重要なのか。それは、ここに盛り込まれなければ、翌年度の予算や法律に反映されにくいからです。骨太の方針に記載された政策が優先されるため、国会議員も各省庁も、自分たちが進めたい政策を何とかして盛り込もうとします。
では、骨太の方針はどのように作られるのか。まず、原案を作るのは政府です。ただし、「政府が作る」といっても、実際には各省庁が、それぞれの所管分野について原案を作成していきます。
また、政府と与党は一体となって政策を進めていますから、各省庁だけで勝手に原案を作るわけではありません。与党の各部会などでも、それぞれの分野について議論します。
例えば、私は環境部会長を務めています。そのため、環境分野については、環境省と一緒になって骨太の方針に盛り込む原案を作っています。各部会や各省庁から、政策や文言の案が、いわば短冊のように次々と出されます。政府はそれを集約し、1冊の文書にまとめるわけです。
ただし、各部会や各省庁から提案された内容が、すべて最終案に載るとは限りません。特に今回は、骨太の方針を34ページから35ページ程度に絞るという方針が示されました。これまでは毎年、58ページから60ページほどありましたから、ほぼ半分に縮小されることになります。
これまで、「骨太の方針なのに、内容がぶよぶよではないか」とも言われてきました。そのため、文書を簡潔に絞り込むことになったわけです。
ところが、ページ数を減らせば、当然ながら、これまで入っていた文言が削られたり、提案した政策が取り上げられなかったりします。そのため、「この文言が落ちた」「この政策が採用されなかった」と、大騒ぎになるんですね。
では、削られた文言や政策を、どのようにして復活させるのか。今回、7月1日から複数回にわたって政調全体会が開かれていますが、これがすごいんです。
会議の場で自民党所属の議員が「はい!はい!はい!」と手を挙げて発言し、その主張が受け入れられれば、骨太の方針に文言が載ることになります。

小山:
今、画面に表示している資料は、左側が「通常国会」と書かれたところから始まっています。こちらが国会の動きです。一方、右側には政府と与党の動きが示されています。
山田:
各政策部会が中心となって内容を取りまとめていますから、部会長は、その部会が取りまとめた内容について、何度でも発言できます。一方、それ以外の議員は、基本的には1回程度しか発言できなかったり、発言時間を1分以内に制限されたりします。
「発言の機会をいただき、ありがとうございます」とか、「この内容を入れていただき、ありがとうございます」といった挨拶は一切言ってはいけません。余計なことを話している時間がないからです。
100人近くの議員が一斉に発言を希望します。それにもかかわらず、一人が大演説を始めて、2分、3分と話し続けることもあります。結果として、今回も何だかんだで3時間半ほどかかりました。
小山:
本当に100人以上、場合によっては200人近い自民党議員が、一つの部屋に集まり、ずっと議論しています。
山田:
部屋の床が抜けるのではないかと思うほど、多くの議員が集まります。そうした議論を経て骨太の方針が決まると、次は「概算要求」に進みます。各省庁が、骨太の方針に基づいて、翌年度に必要な予算を要求するわけです。
その後、概算の予算額が固まり、具体的な内容を詰める段階になると、各省庁と財務省の間で予算折衝が行われます。そこで認められなかった要求については、最後に「大臣折衝」が行われます。各省の大臣と財務大臣が直接交渉し、削られた予算の復活を目指すわけです。
こうして、例年12月のクリスマスごろまでに、翌年度の予算案を閣議決定して、予算案が閣議決定されると、今度は資料の左側に示されている国会での手続きへと移ります。
翌年の通常国会に、政府から予算案が正式に提出されて、予算案は、まず衆議院で審議され、衆議院を通過すると参議院へ送られます。そして、参議院でも審議され、3月末までに予算が成立するという流れです。
小山:
官僚の方々はあまり言いたがらないのですが、予算が成立すると、各省庁は、その予算を執行すると同時に、すでに翌年度の予算についても考え始めます。
つまり、今年度の予算を実施しながら、次年度の予算編成も同時並行で進めているのが、日本の省庁の実態です。
山田:
そういうことです。資料の右側は、政府と与党の動きです。一方、左側は、皆さんが国会のなかで目にしている動きになります。
では、予算が成立した後、4月以降の国会では何をしているのか。そこで扱われるのが「閣法」です。閣法とは、内閣が国会に提出する法律案のことです。
今回も、約60本の閣法があります。これらの多くも、前年の骨太の方針などで議論された内容が基になっています。
政策の検討や法案作成は、前年の夏から秋ごろにかけて、各省庁でずっと進められます。その後、与党内でも、「この内容でよいのか」「ここをどうするのか」といった議論を行います。
法案を閣議決定する時期には、大きく二つの締め切りがあります。
予算を伴う法律案については、おおむね12月24日から25日ごろまでに閣議決定します。一方、予算を伴わない法律案については、翌年2月中旬から3月ごろまでの間に閣議決定することになります。
閣議決定された法案は、閣法として国会に提出されます。そして、衆議院と参議院の両方で可決されれば、法律として成立するわけです。国の政策や予算、法律は、おおむねこのような年間スケジュールで動いています。
こうして見てみると、「決算は、この流れのどこに反映されているのか」と言いたくなります。実際、国会は決算よりも、予算を中心に動いているということです。
小山:
法案は、準備段階の進み具合によって、「A法案」「B法案」「C法案」などと呼ばれて、法案ごとに検討や調整の進み具合が異なるため、準備段階から、それぞれ異なるステータスの法案として扱われているわけです。

山田:
そして、「骨太の方針」の正式名称は、先ほども出ましたが、「経済財政運営と改革の基本方針」です。では、なぜこれが「骨太」と呼ばれるようになったのか。
2001年に経済財政諮問会議が設置された際、当時の宮澤喜一財務大臣が、「予算の細部は財務省に任せ、骨太の議論をしていただければ
」という趣旨の発言をしたことが由来とされています。
そこから、この文書が「骨太の方針」と呼ばれるようになりました。
小山:
小泉政権は、政策決定の主導権を政権側、特に官邸へ集めようとしていました。これに対し、財務省側としては、「細かい予算の調整はこちらで行うので、大きな枠組みを議論してください」という整理だったと伝えられています。
山田:
さて、骨太の方針が実際にどのような雰囲気で議論されているのか、イメージを見ていただきたいと思います。
これは、先日、7月1日ごろに行われた骨太の方針をめぐる議論の様子です。大勢の議員が集まり、非常に熱気のある会議になっています。私も部会長として発言し、数カ所について修正や加筆を求めました。

画面の右下に表示しているのは目次だけですが、このような内容が30数ページにわたって記載されています。そのなかに、何としてでも一言だけでも、自分たちが進めたい政策に関する文言を入れようとする。そのために大騒ぎになるわけです。
では、ここで少し決算の話に戻りたいと思います。その前に、ここまで説明した骨太の方針について、伊奈さんはどのように感じましたか。
伊奈:
骨太の方針で政策の大枠を決め、その後、詳細を財務省が決めていくという理解でしょうか。
先ほどのスライドにも、小泉首相の時代に、大枠については政権側で議論するという趣旨の説明がありました。大枠は国会議員の皆さんが議論し、細かい部分は財務省が決めるということなのかなと思ったのですが……。
山田:
「詳細」というのが何を指しているのかによります。予算については、財務省が全体を取りまとめます。しかし、法律の骨子や制度の細かな内容については、それぞれの担当省庁が決めます。
財務省が、各省庁の所管する法律の内容まで決めるわけではありません。法律や制度の具体的な内容については、各省庁のなかで議論し、作り上げていくということです。
警告決議が暴く不正の実態
山田:
では、もう一度、決算委員会の話に戻ります。決算委員会には、決算を審査するだけでなく、監査の結果を踏まえて問題点を指摘する役割もあります。その一つが「警告決議」です。

会計検査院の検査などを通じて、「これは明らかにおかしいのではないか」と判断された事案について、参議院の決算委員会で審議し、「国会として警告すべき事案である」と認定します。今回も警告決議文がまとめられ、決算委員会で決議されました。

今回、警告決議の対象となったのは3項目です。まず一つ目は、JR東日本企画が受託した事業をめぐる不正です。
同社では、社員に虚偽の業務日誌を作成させ、実際には業務に従事していない社員や、従事していない時間についても、あたかも業務を行ったかのように装って人件費を算定していました。
その結果、令和元年度から令和5年度までの間だけで、約20億円もの委託費を不正に受給していたということです。
これは、詐欺というか、ほとんど泥棒ですよね。20億円ですよ。この事案について警告決議が行われたため、関係する府省の大臣が、決算委員会の場で一人ずつ頭を下げることになりました。
それぞれの大臣が「適切に対処し、善処します」という趣旨の答弁を行い、事実上、陳謝する形を取りましたが、私は疑問に思うんです。この事案は、刑事訴追されないのでしょうか。
小山:
刑事訴訟法第239条第2項には、官吏または公吏、つまり公務員について、その職務を行うなかで犯罪があると思料した場合には、告発しなければならないという規定があります。公務員には、いわゆる告発義務が課されているわけです。
今日もこの件について調べていたのですが、何らかの不正が明らかになったからといって、会計検査院や関係する公務員が自動的に告発するという運用は、少なくともこれまで一般的には行われていないようです。
山田:
私は、それがおかしいと思っています。不正に受け取った金を返せと言われて、返したらそれで終わりという話になっているわけでしょう。
小山:
20億円という金額になれば、一般の民間企業であれば、間違いなく実刑が想定されるレベルだと思います。しかも、相当に重い刑事責任が問われてもおかしくありません。
山田:
万引きですら、やれば捕まるわけです。今回の話は、金額も内容も、まったくレベルが違います。
しかも、国会で関係大臣が次々に陳謝する事態にまでなっている。それにもかかわらず、「金を返せば終わり」という扱いでよいのか。私は、かなり疑問に思いますね。
小山:
万引きを例にすると分かりやすいのですが、万引きは、商品を盗んだ時点で犯罪が成立します。
その後で商品を返したからといって、犯罪そのものが成立しなかったことにはなりません。一度、犯罪に当たる行為をした段階で、すでに犯罪は成立しているはずです。
山田:
これは民事責任と刑事責任を分けて考えるべきですよね。民事上は、不正に受け取った金を返還するという話です。しかし、それとは別に、刑事上の責任も追及されるはずではないでしょうか。
小山:
民事責任については、基本的に金銭を返還し、損害を回復すれば、そこで一応の解決になります。一方、刑事事件では、刑事責任そのものが追及され、刑罰が科される可能性があります。
ただ、今回の件について、どこまで確実な証拠がそろっているのか、どの範囲まで責任を問えるのかという点は、さらに確認が必要です。
山田:
いや、確実な証拠があったからこそ、会計検査院が検査し、国会で審議し、決議までしたわけでしょう。しかも、決算委員会では全会一致で決まっているんです。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、私たち国会には刑法を制定する権限があります。死刑を含め、どのような行為にどのような刑罰を科すのかという法律を、立法府で決めています。
その立法府が、「これは不正であり、看過できない」と全会一致で決議したにもかかわらず、その後は何もありませんというのは、やはりどうなのかと思います。この件が今後どのようになるのか、引き続き見守りたいと思います。
次に、経済産業省に関係する事案です。
中小企業基盤整備機構が、中小企業庁の補助金による基金を原資として交付した補助金について、虚偽の実績報告が行われ、悪質な不正によって補助金が過大に交付されていたという問題です。
そして、もう一つ。これはニュースでもかなり大きく取り上げられましたが、中部電力の浜岡原子力発電所をめぐる事案です。
浜岡原発では、新規制基準への適合性審査において、原子炉建屋などの耐震設計の前提となる「基準地震動」を策定するためのデータが、恣意的に操作されていたという不正行為が明らかになりました。
この三つ目の事案は、非常に深刻です。この問題によって、事実上、浜岡原発の再稼働は相当に難しくなったのではないかと考えられます。
浜岡原発は、フォッサマグナの上にあるともいわれており、地震対策という観点では、以前から非常に厳しい条件にある場所とされてきました。その原発で、耐震性を判断するためのデータまで改ざんされていたとなれば、「ほかの原発は本当に大丈夫なのか」という疑問が生じます。
そのため、今回の警告は非常に重い内容となっており、浜岡原発だけでなく、すべての原発について再調査するよう求めるものとなっています。このように見ていくと、会計検査院の指摘は、かなり踏み込んだ重い内容です。
普通の役所であれば、ここまでのことは怖くてなかなか言えないのではないでしょうか。
例えば、20億円の不正受給について、これほど多くの省庁が関係していた場合、警察庁や検察庁であっても、正直なところ追及しにくいのではないかと思います。
小山:
そうですね。この案件を追及した場合に、どの立場の人や、どの組織の責任にまで関わってくるのかが分からない状態では、ある省庁が別の省庁を下手に追及するのは怖い、という面は確かにあると思います。
もちろん、正義や法の執行という観点から見れば、組織間の関係にかかわらず、適切に追及するのが本来あるべき姿です。
山田:
警告決議とは別に、「決算審査措置要求決議」というものもあります。決算審査の結果を踏まえ、政府などに具体的な対応を求める決議です。

今回も、さまざまな問題が取り上げられています。NHKについては、関連団体との契約において競争性が低下しているという問題が指摘されました。また、子会社7社について、特例配当が可能な金額が56億円あるにもかかわらず、その資金をいつ取り崩すのかが不明確だったという指摘もあります。
環境省に関しては、国有財産台帳に記載されている所在地を確認しようとしても、実際には点検できず、現地に存在しないという問題がありました。さらに、所有者不明の土地が123件も未管理の状態になっていたという指摘もあります。
このように、現場では実にさまざまな問題が起きています。会計検査院は、それらを一つひとつ確認し、今回、措置要求として6項目を取りまとめました。
このほかにも、警告決議や措置要求決議ほど重大ではない、もう一段階低いレベルで、さまざまな検査が行われています。各種給付金や国のさまざまなプロジェクトについても、監査のメスが入っています。
私は、会計検査院は非常に優れた仕事を、地道かつ懸命に行っている組織だと思います。ところで、会計検査院を題材にしたドラマはありましたか。公正取引委員会を扱ったドラマはありますよね。
小山:
会計検査院のドラマと聞いて、すぐに思い浮かぶ作品はありませんね。
山田:
公正取引委員会を扱った作品は、確かあったと思います。会計検査院を舞台にしたドラマを作ったら、面白いのではないかと思いますけど、実際にそのような作品があるのかどうか、ご存じの方がいたら、ぜひ教えてください。
与野党質疑と日米政治制度
山田:
それでは、今回の決算委員会で実際に行われた質疑について、具体的に見ていきたいと思います。伊奈さんは、何時から何時まで傍聴していたのですか。
伊奈:
最初から午後3時まで見ていました。
山田:なるほど。今回の質疑では、いわゆる「バッター表」、つまり質問者の順番を示した一覧に沿って、各議員が質問しました。

最初に発言するのは委員長ですが、委員長の発言は、あくまでも委員会を進行する立場からのものです。そのため、質問者として数えると、私は2番目でした。自民党からは、小林さんと私が質疑に立っています。
当日はテレビ中継が入り、最後の午後4時45分までNHKで放送されていました。伊奈さんは午後3時ごろまで見ていたということですが、何か印象に残ったことや、全体を通じて感じたことはありましたか。
伊奈:
実際に質疑を聞いてみると、山田さんは議題に沿って、的を射た質問をしながら話を展開されていたと思います。
一方で、議題とはまったく関係がないように見える質疑も飛び交っていました。特に野党の方々が、どのような立場や意図で、そうした質問をしているのかが気になりました。
山田:
それは、その質問をした本人たちに聞いてほしいところですね。ただ、質疑全般にいえることとして、与党議員と野党議員では、質問の方向性がかなり異なります。
私自身も以前は野党に所属していましたから、野党側の気持ちもよく分かります。野党は、自分たちの政策を実現するためには、まず政権交代を実現しなければならないという立場にあります。そのため、どうしても「政権を倒す」という方向に力が向きやすい。
「政権の足を引っ張る」という言い方が適切かどうかは分かりませんが、結果として、そのような質疑になりがちです。もちろん、すべての野党議員の、すべての質問がそうだと言うつもりはありません。ただ、全体としては、政府の問題点を追及する「追及型」の質疑になりやすいということです。
一方、与党の場合は、国会で取り上げる前に、党内ですでに議論してきた内容が数多くあります。
また、与党議員には党議拘束、つまり党として決めた方針に従って採決することを求められる仕組みがあります。そのため、国会質疑そのものよりも、先ほど説明した骨太の方針に、どうやって政策を盛り込むかといった党内での活動に力点を置くことも多い。
結果として、与党の国会質疑は、現在の政策を肯定したり、政府の方針を後追いで確認したりする「確認型」になりがちです。本当に国会を活性化させるのであれば、私は党議拘束をなくすべきだと思っています。
与党であれ野党であれ、採決の最後まで、その議員が賛成票を投じるのか、反対票を投じるのか分からない。そのような状態になれば、委員会での議論は、より真剣勝負になります。
結論が最初から決まっていないのですから、議員も審議中に寝ているわけにはいかなくなる。そういう国会になると思うんですね。
アメリカの連邦議会は、その点で非常に興味深い仕組みになっています。アメリカには、日本のような強い党議拘束がありません。
もちろん、共和党や民主党という政党はありますが、共和党系の議員が提出した法案に民主党の議員が賛成することもあります。反対に、共和党の議員が共和党系の法案に必ず賛成するとも限りません。法案ごとに、お互いが議員一人ひとりの票を取りにいくわけです。
もう一つ、あまり知られていないことですが、アメリカの連邦議会には、日本でいう意味での「党首」がいません。
現在、共和党はトランプ大統領を出していますが、トランプ大統領は、あくまでも大統領です。大統領であることと、共和党の党首であることは同じではありません。大統領自身は連邦議会に議席を持っていないからです。
議会内で事実上の党首に当たるのは、「院内総務」と呼ばれる人たちです。共和党と民主党のそれぞれに院内総務がおり、議会内で所属議員をまとめています。
ただし、院内総務がまとめているからといって、共和党系の議員が提出した法案に、共和党議員全員が賛成するとは限りません。採決が終わるまで結果が分からない、非常にスリリングな状況が、アメリカの連邦議会では起こるわけです。
これは、日本とアメリカで政治制度が異なることにも関係しています。
アメリカは大統領制ですから、大統領と議会がそれぞれ別の権限を持つ、いわば二元的な権力構造になっています。大統領は大統領、議会は議会として、互いに独立した存在です。
一方、日本は議院内閣制です。国会の多数派が、そのなかから内閣総理大臣を選びます。つまり、議会の多数派が、そのまま行政を担う内閣を生み出しているわけです。
形式上、行政と立法は別の存在ですが、実態としては非常に一体化しています。ここで、法律を誰が作り、誰が提出するのかという違いも見てみましょう。
日本で提出される法律案には、大きく分けて二つあります。一つは、内閣が提出する「閣法」、つまり内閣提出法律案です。もう一つは、国会議員が提出する「議法」、いわゆる議員立法です。
議員立法の場合は、複数の議員が集まり、必要な署名などをそろえて法律案を提出します。一方、アメリカでは、大統領が法律案を議会に提出することはできません。法律案は、すべて連邦議会の議員が提出します。
そのため、アメリカの法律には、誰が中心となって作った法律なのかが分かるように、提案した議員などの名前が付けられていることが多いわけです。
予算についても同じです。アメリカの大統領は、予算そのものを議会に提出する権限を持っていません。予算を決定するのも、あくまで議会です。大統領は年に一度、教書という形で議会に出向き、自分が進めたい政治方針を説明します。
そういう意味では、大統領は「非常に大きな権限を持つ行政の責任者」です。立法府が決めた法律や予算の範囲内で、それを適切に執行していくことが基本的な役割になります。
ただし、強力な行政の責任者であるからこそ、立法府から独立した行政権限も持っています。例えば、戦争や軍事行動に関する権限など、非常に強い権限が大統領に与えられている場合があります。
なぜ、それほど強い権限を持つことができるのか。それは、大統領が国民による直接選挙を通じて、直接的に信任されているからです。アメリカは、そのような仕組みになっています。
これに対し、日本の内閣総理大臣は、国民が直接選挙で選ぶわけではありません。国民が国会議員を選び、その国会議員が国会で内閣総理大臣を指名します。どちらかといえば、間接選挙によって選ばれているわけです。
そのため、日本の総理大臣や内閣は、立法府である国会の多数派を前提として成り立ち、国会との一体性が非常に強い。このような仕組みになっているということです。
国会質疑が決まるまでの舞台裏
伊奈:
もう一つ、今回、山田さんのお近くで仕事を拝見し、各省庁とさまざまな調整をされている様子も見てきました。そのなかで、今回の質疑で、なぜあの議題を取り上げたのか。その理由を伺いたいと思いました。
山田:
なるほど。今日はまさに、質疑の内容がどのように決まっていくのかという舞台裏をお話ししたいと思います。
まず、質疑をどのように決めるのか。基本的なルールとして、質問を担当する議員は、割り当てられた時間のなかであれば、事実上、何を聞いてもよいことになっています。
では、各議員や各政党に、どのように質問時間が割り当てられるのか。
最後の決算委員会を4時間で行うのか、5時間で行うのかについては、与野党の国会対策委員会などの協議で決まります。ただ、実際には長年の慣例があり、「最後は5時間コース」「途中の委員会は4時間コース」といった形で、おおむね決まっています。何十年も続いてきた慣例に従って、まず委員会全体の質疑時間が決まるわけです。
そのうえで、各党の議席数に応じて、質問時間が配分されますが、ここには例外があります。
与党は、自分たちの政策について、国会に出る前に党内で十分議論できているはずだから、その分の質問時間を野党に譲るべきだという考え方がありまして、これを「吐き出し」と呼びます。
本来、与党が質問できる時間の相当部分を、野党に提供しているわけです。
今回の質問者一覧を見ると、自民党が45分、立憲民主党も45分となっています。しかし、議席数に比例して単純に時間を配分したのであれば、このような配分になるはずはありません。
なぜ同じ45分になっているのかというと、与党に割り当てられた時間の多くを、それぞれの野党に吐き出しているからです。国会質疑の時間配分は、このような仕組みになっています。
今回、自民党に割り当てられた45分は、2人で分けました。小林さんが25分、私が20分です。私は、その20分間で何を質問するのかを決めることになります。
では、質問内容をいつまでに決めなければならないのか。最低限のルールでは、質問日の前日の正午までに通告すればよいことになっています。

ただ、前日の正午に質問内容が決まり、そこから官僚が答弁を作成し、さらに大臣に説明する、いわゆる大臣レクを行うのは、かなり厳しい日程です。
そのため、本来は前々日の正午までに質問を通告するというルールを、いったん決めたこともあります。しかし、実際には、あまり守られていません。
私の場合は与党議員でもありますから、そのルールはなるべく守ったほうがよいと考えています。極力、前々日の昼ごろまでには、「大枠として、このようなことを聞きます」という説明をするようにしていますよね。
小山:
そうですね。ただ、「7月3日金曜日の正午までに連絡してください」というメールが、前日の7月2日に届くこともあります。7月2日にメールが届いて、「明日の昼までに提出してください」と言われても、さすがに準備できません。そのような事情もあります。
山田:
ただ、私たちの場合は、質疑の日程が事前に分かっています。例えば、3日の金曜日に締切があると分かっていれば、1日や2日の段階で、各省庁から説明を受ける勉強レクを行ってしまいます。
できるだけ早く準備を進め、官僚や役所の負担を減らす。役所側も、質問内容が早めに分かっていれば、調整しやすいだろうと考えているからです。
また、私は、具体的に何を聞くのかについて、事前にほぼすべて文章で提出していますが、野党のなかには、意地悪な通告の仕方をする政党もあります。「○○について」と、一行しか書かないんです。
それでは、役所側は何を聞かれるのか分かりません。そのため、その一行の質問通告に対して、100問ほどの質問を想定し、非常に分厚い想定問答集を作ることになります。
国会の場では、後ろに控えている官僚が、質問に応じて「何番です」と紙を差し出します。大臣は想定問答集を次々にめくりながら、「この質問が来た」と、該当する答弁を探しているわけです。
伊奈:
当日、その場で言葉を変えたり、雰囲気や流れに合わせて話したりしてはいけないのですか。
山田:
これについては、よく言われます。私自身、質疑に立ったときや政務官を務めていたときにも、「せっかく国会で答弁するのだから、もう少し自分の言葉で話したほうがよいのではないか」と言われました。
ただ、まず答弁する側については、自由に話した結果、政府のほかの見解と不整合が生じると大変です。
答弁内容は、さまざまな事実関係に基づいていますし、ほかの法律や制度との関係もありますので、関係する内容をきちんと確認したうえで、答弁書が作成されています。
それを無視して自由に話し、内容に誤りがあれば、後で大変なことになります。一度口にしてしまえば、政府の意思として発表したことになってしまうからです。
小泉さんなどは、かなりアドリブで答弁するそうですが、それは大したものだと思いますね。
小山:
国会で大臣が答弁した内容は、政府の公式見解になってしまいます。
国会議事録に残り、今後、何十年、何百年にもわたって、「あのとき、この大臣がこう答弁したのだから、日本政府の見解はこうですよね」と引用されることになります。
山田:
そうなんです。10年前の発言であっても、「過去に、このような政府答弁がありますよね」と引用されます。議事録として一生残るものです。
デジタルタトゥーならぬ、「議事録タトゥー」です。政府が過去に何を発言したのかは、時代が変わっても問われ続けます。
もう一つ、質問する私たち議員についても、「用意した紙を一字一句読むのではなく、もっと自由に話せばよい」と言われますが、そこで重要なのは、質疑時間が非常に短いということです。
自分の言葉で自由に話し始めると、この番組でもそうですが、だいたい時間をオーバーします。余計なことを話したり、予定になかったことまで聞いたり、同じような内容を繰り返して質問したりする。反対に、本当に聞きたかったことを聞き損なう場合もあります。
質疑時間が短い場合には、残念ながら、事前に文章を用意し、それに従って進めるほうが合理的です。
実をいうと、今回の質疑では、全体で何問か質問を用意しており、最後の一、二問を予備として残しつつ、それ以外はすべて質問できる予定で時間を組んでいました。
ところが、最初の4問について、私は比較的アドリブを交えて質疑をしたんです。そうすると、予定していた時間の1.5倍ほどかかってしまいました。
さらに、前の質問者だった小林さんから引き継いだ時点で、すでに2分超過していました。私の持ち時間は20分でしたが、事実上、18分も残っていなかったわけです。
最後には、残り時間が「1分」と表示されました。本来であれば、SNSと子どもをめぐる問題や、表現に関する問題についても質問する予定でしたが、表示されている残り時間がゼロになれば、その時点で終了です。
特に与党議員が時間を超過すると、「与党なのに時間を守らないのか」と厳しく言われます。
しかも私は、外交防衛委員会の筆頭理事も務めています。ほかの委員会では、責任者として、野党議員に対しても時間を守るよう求める立場ですので、私自身が質疑時間を超過していたら、示しがつきません。
残り1分と表示されており、実際にはゼロになるまで30秒から40秒ほど残っていましたが、そこで質問を始めれば、大臣の答弁時間も含めて、おそらく持ち時間を超過してしまいます。
これは無理だと判断し、最後に予定していた大きな三つ目の質問を断念しました。これが、今回の質疑の実際の顛末です。
次に、質問者が、どのように選ばれるのかについても説明しておきましょう。通常の委員会と、予算委員会や決算委員会とでは、質問者の決め方に大きな違いがあります。
私が所属している外交防衛委員会のような通常の委員会では、与党側に理事が2人います。私は筆頭理事として、野党との交渉や委員会全体の取り仕切りなど、与党側の責任者を務めています。
一方、委員の出席調整や質問者の選定、審議に使う資料の調整などは、通常、「次席」と呼ばれる理事が担当します。
例えば、「今回、自民党には30分の質問時間があるが、誰を質問者にするか」ということについては、次席理事に任せ、その次席理事が決める。これが通常の委員会での一般的な形です。
しかし、予算委員会や決算委員会となると、質問者は党を代表して質疑に立つことになりますので、事実上、参議院自民党の幹事長室が質問者を決めます。
私自身、参議院自民党の副幹事長を務めていますから、質問者を決める側の立場でもあります。実際には、幹事長室と国会対策委員会などが協議し、もちろん決算委員会の理事とも調整しながら、「今回は誰を質問者にするのか」を決めます。
テレビ中継が入り、総理大臣に対して直接質疑をする場でもありますので、党として誰を立てるのかという判断になり、今回は「最後は山田君でいこう」ということに、幹事長室と国対の間で決まったのだと思います。
おおむね、このような流れで質問者が決まり、質疑の準備が進んでいくわけです。
実現した質疑と幻の質疑
山田:
それでは、だんだん時間がなくなってきましたので、ここからは少し駆け足で、今回の決算委員会で何を質問したのかを見ていきたいと思います。質疑通告書では、大きく四つのテーマを準備していました。戦略17分野における官民投資、子どものSNS利用、コンテンツ戦略、そして防災DXです。

当日の質疑では、まず官民投資を取り上げ、そのなかで四つの質問を総理に集中して行いました。続いて防災DXについて質問したところで、持ち時間が終わってしまったという流れです。
そのため、二つ目に予定していた子どものSNS利用と、三つ目のコンテンツ戦略は、質問できないまま残ってしまいました。
今日は、決算委員会では語られることのなかった「幻の質疑」、いわば質問の機会を失ってしまった、かわいそうな質疑についても、皆さんにご紹介したいと思います。
ちなみに、決算委員会や予算委員会では、このような形で「質疑通告表」が作成されます。

ただ、これを見ると、皆さん質問を用意しすぎですよね。持ち時間は15分や20分程度しかないのに、十数問も並べています。どう考えても、すべての質問を消化できるはずがありません。実際には、半分まで進んでいない人も多いということです。
小山:
この質疑通告表だけを見ると、山田さんの通告内容は相当に簡潔で、政府側にほとんど情報を伝えていないようにも見えますが……。
山田:
その点について、事前準備の流れから説明します。まず、質疑に先立って「質問レク」や「勉強レク」を行い、関係省庁から説明を受けます。

質疑通告書は原則として、前日の正午までに提出することになっていますが、私は、それよりも前に提出していました。
質疑通告書を提出すると、「問取り」と呼ばれる作業が始まります。質問の具体的な内容を確認するため、各省庁の担当者が一斉にやって来るんです。通告内容を見て、「この質問は自分たちの担当ではないか」と考えた部署が集まり、詳細を確認していきます。
総理が答弁する質疑の場合は、総理大臣官邸の総務官室も必ず加わり、全体の調整を取り仕切ります。「この質問のどの部分を総理が答えるのか」という点も、非常に慎重に検討されます。総理の発言は、日本国を代表する発言になるからです。
小山:
「質問レク」や「問取り」と呼ばれる確認作業を行う場合もありますが、今回は、質疑の日程そのものが非常に時間のないなかで設定されました。
山田さんは事前に勉強レクを行い、官僚の方々に対して、「質疑が設定された場合には、このような内容を質問する予定です」と伝えていました。
そのため今回は、改めて問取りレク、つまり質問内容を確認するための質問レクを行わず、事前の勉強レクと、詳細に記載した質問通告書によって対応したということです。
山田:
それでは、どのような内容を質問しようとしていたのか、実際には聞けなかった二つのテーマも含めて、詳しく見ていきたいと思います。

まず、実際に取り上げたのは、高市政権が進めている戦略17分野の話と、防災DXです。戦略17分野に関する質疑では、主にこのパネルを使いました。この番組でも何度か紹介しているので、「もう見た」という方もいるかもしれません。

日本では、1991年ごろを境に、役員報酬も従業員報酬も、売上高も設備投資も、ほとんど増えていません。これが「失われた30年」と呼ばれる日本経済の停滞です。このままでは、「失われた40年」にまでなりかねないともいわれています。
ところが、そのなかで一つだけ、極端に増えているものがあります。株主に対する還元です。自己株式の取得や、その消却まで含めると、株主還元は約180倍に増えています。「これは、さすがにおかしいのではないか」という問題提起です。

もう一つ、企業と株主の間で、どのように資金が移動しているのかについても取り上げました。2025年の数字を見ると、企業が株式市場から調達した資金は2.1兆円にすぎませんでした。
本来、株式会社は市場から資金を集め、その資金を企業の成長の原資として使うものです。ところが、その一方で、企業は自社株買いなどを含めて、株主に46兆円を還元しています。自社株買いを除いたとしても、相当な金額です。
企業が株主から集めた資金よりも、株主に返した資金のほうが多い。普通に考えれば、おかしな話ですよね。では、その資金はどこから出ているのか。企業が事業によって稼いだ利益です。
改めて考えると、これはすごいことです。従業員の皆さんも怒ってよいのではないでしょうか。
現場で汗水を流して生み出した利益が、自分たちの給与や役員報酬、設備投資、あるいは会社の次の成長に向けた投資に十分使われず、その多くが株主に還元されている。
もちろん、株式会社は株主のものだという原則はあります。しかし、ここまで株主還元に偏るのは異常ではないか。これでは、何のための株式会社なのか分かりません。
一方、アメリカの企業は、赤字であっても成長していくことがあります。赤字ということは、企業が利益を出していないということですから、基本的に企業から株主へ、配当という形で利益を渡すことはあまりありません。
それでも企業が成り立ち、株主が投資するのは、「キャピタルゲイン」が期待できるからです。配当のように、企業が生み出した利益から株主が収益を得ることを「インカムゲイン」と呼びます。

これに対してキャピタルゲインは、企業の評価や価値が上昇し、株式を購入したときよりも高い価格で売却することで得られる利益です。
では、企業価値を高めるためには何が必要なのか。設備投資を行い、成長のために資金を使い、優秀な人材を雇うことです。そして、「将来、このような事業ができるようになる」と市場に示し、企業の将来価値を高めていきます。
本来、企業の利益は、キャピタルゲインを生み出すような成長につながらなければならないということです。さらに、「何によって利益を生み出すのか」という問題についても質問しました。
そこで重要になるのが、無形資産です。アメリカの企業は、知的財産のような、非常に付加価値の高い無形資産によって利益を生み出しています。

一方、日本企業は、建物や設備といった、目に見える有形資産に偏る傾向があります。日本でも、無形資産の価値を、これまで以上に適切に評価していかなければならないという話をしました。

次に、防災DXについて、南海トラフ地震や首都直下地震など、大規模地震の発生が心配されています。それにもかかわらず、防災関係の予算は約200億円しかありません。そのなかでも、防災DXに充てられている予算は、約40億円にすぎません。

一方、防衛費は9兆円です。

私は、防衛費が過度に多いとか、防衛費を削るべきだと言っているわけではありません。ただ、それと比較しても、防災に充てられている予算が、あまりにも少なすぎるのではないかということです。

さまざまな試算を踏まえれば、防災分野に1兆円規模の投資を行ったとしても、その効果は非常に高いと私は考えています。しかも、大規模地震は、今後30年以内に60%から90%程度の確率で発生する可能性があるとされています。
「30年以内」というのは、30年後に来るという意味ではありません。明日起こるかもしれませんし、今日の夜に起こる可能性もあるわけです。
小山:
調べ方によって、二つの異なる統計数値が出ているのですが……。
山田:
それについては、別の機会にしましょう。さらに、防災分野におけるデュアルユース、つまり一つの技術や仕組みを平時と災害時の双方で活用する取り組みについても進めるべきだと質問しました。

今回の質疑では、政府からいくつかの回答を引き出すことができました。

まず、企業が生み出した利益を、株主還元だけではなく、従業員や設備投資、成長投資などにも適切に配分する「資本分配の変革」に取り組むという回答です。
また、知的財産に関する情報開示を進めることについても、政府は取り組む方針を示しました。
さらに、「IPランドスケープ」にも取り組むことになりました。IPランドスケープとは、企業や産業が保有している特許や知的財産を分析し、技術や市場の動向、競争力などを把握して、経営戦略や政策立案に活用する手法です。
国としても、どの分野や企業に、どのような特許や知的財産があるのかを、きちんと調査していくということです。そして、防災分野におけるデュアルユースについても進めていくという答弁を得ました。
資本分配の変革、知的財産の開示、IPランドスケープ、防災デュアルユース。これらについて、政府が取り組むことを認めたわけですから、今回の質疑では、かなり満額に近い回答を得られたと考えています。
もちろん、答弁を得ただけで終わりではありません。今後は、これらを実際の政策として具体的に実現していかなければならないと思っています。
幻に終わった二つの重要質疑
山田:
さて、最後に、実際には質問できなかった「幻の質疑」がどのような内容だったのかをご紹介します。
まず一つ目は、子どものSNS利用についてです。私が総理に聞こうとしていたのは、「SNSについて、一律の年齢制限を設けるべきではないのではないか」ということでした。

子どもがSNSを利用することには、危険性だけでなく、情報収集やコミュニケーション、自己表現などの前向きな側面もあります。また、子どもの権利条約などの観点も踏まえれば、一定の年齢に達していないことだけを理由として、一律に利用を禁止するべきではないのではないかと考えています。
さらに、年齢確認を厳格化すると、子どもだけでなく、すべての利用者に本人確認を求めることになりかねません。その場合、通信の秘密やプライバシーに関わる問題が生じるという副作用もあります。
そうした点について、政府はどのように考えているのか。そして、一律の年齢制限を設けるのではなく、それぞれのリスクに応じて、子どものリテラシーを高めることで対応するべきではないか。このようなことを総理に質問しようとしていました。
どのような答弁が得られそうかについては、事前のレクなどを通じて政府側とも議論していました。しかし、残念ながら今回は質問することができませんでしたので、改めて別の機会を設けて取り上げたいと思っています。
もう一つ、SNSやスマートフォンの利用が脳に与える影響についても質問する予定でした。
現在、スマートフォンやSNSを利用すると「脳が溶ける」「脳の発達に悪影響を与える」といった、非常にセンセーショナルな表現が使われることがあります。学者やマスメディアのなかにも、そうした表現によって不安をあおるような人たちが存在します。

そこで厚生労働大臣に聞こうとしていたのは、政府が介入しなければならないほど、SNSが脳に悪影響を与えるという科学的エビデンスが、本当に存在するのかということです。
仮に、そのような科学的根拠が存在しないのであれば、不安をあおる言説に対して、政府が正確な科学的知見を積極的に発信し、国民の不安を払拭するべきではないでしょうか。
SNS利用についても、EBPM、すなわち証拠に基づく政策立案を徹底し、規制の根拠となるエビデンスが存在しないものについては、原則として規制を行わない。そのような考え方に立つべきではないかと質問する予定でした。これについても、今後、改めて取り上げたいと思っています。
そして最後が、海賊版対策とコンテンツ戦略です。日本のコンテンツを海外へ輸出し、外貨を稼いでいくこと自体は、非常に重要です。しかし現在、海賊版による被害額は、合計で約10兆円に及んでいるのではないかと見られています。

漫画やアニメなどのコンテンツが無断で公開され、無料で読まれていることによる被害が約5兆円。さらに、キャラクターグッズなどが模倣され、偽物や海賊版商品として流通していることによる被害が、5兆円弱あるとされています。合わせれば、およそ10兆円です。
政府は、日本のコンテンツ産業の海外売上高を20兆円規模にすると掲げています。しかし、この10兆円もの海賊版被害を適切に防ぎ、その分の収益が日本の権利者や企業に入るようになれば、それだけで目標の多くを達成できるのではないか。そういう話なんです。

実は、この問題については、以前から外務省を通じて高市総理にも伝えていました。高市総理が前回ベトナムを訪問した際には、ベトナムの首相に対して、海賊版対策について直接話をしています。
今後、もう一つ大きな問題となるのがインドネシアです。もちろん、ベトナムの問題も、まだまったく解決していません。しかし、インドネシアについても、海賊版サイトの問題が非常に深刻になっています。
そのため、インドネシアの海賊版サイト対策について、総理の強いリーダーシップで取り組んでほしいと求める予定でした。また、インドネシアとの首脳会談や閣僚会議が開かれる場合には、海賊版対策を正式な議題として、きちんと取り上げてほしい。
さらに、海賊版対策を行っているCODA、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構についても、予算や体制を拡充し、現地での法執行を実効的に進められるようにするべきだということを、総理に求めるつもりでした。
なぜ総理に聞く必要があるのかというと、この問題は、相手国のトップ同士で話さなければ、なかなか動かないからです。
現場では、日本と相手国の著作権担当部局同士が協議したり、公安当局や警察当局同士が話し合ったりしています。しかし、それだけでは、まったく動かないことも多い。
やはり首脳や閣僚といった、政治のトップレベルで強く働きかける必要があります。
そして、極め付きとして考えていたのが、ODA、政府開発援助を海賊版対策の一つの政策手段として活用することです。

特に、ベトナム政府やインドネシア政府に対して、日本の知的財産やコンテンツを徹底して保護することを、ODA供与の条件にしてはどうかと考えています。
直接的な条件とすることが難しい場合でも、「オファー型協力」という仕組みを活用する方法があります。
そもそも、知的財産を守ることの重要性について、十分な教育が行われていない国や地域もあります。そのため、知的財産教育や、取り締まりを実施する体制の整備などを一つのパッケージとして、日本側から提案するべきではないかということです。
ODAは、一方的に援助することだけを目的としたものではありません。日本の外交や国益を実現するための戦略的な政策手段でもあるということは、ODAの方針にも明確に書かれています。
それを文字どおり受け止めるのであれば、日本が一方的に援助するだけではなく、相手国が日本の利益や、日本企業・権利者の知的財産をきちんと守らない場合には、ODAの在り方そのものを見直す。そのくらいの強い姿勢で臨むことが重要なのではないでしょうか。
今回は質問できませんでしたが、この問題については、必ずどこかの機会に、改めて総理級の相手にぶつけたいと思っています。
というわけで駆け足になりましたが、伊奈さん、いかがでしたか。ほかにも、本当はたくさん質問を用意していたんですよね。
伊奈:
そうですね。質問というより、感想になってしまうのですが、骨太の方針が決まっていく過程が非常に印象に残りました。
自民党の皆さんを含め、あれほど多くの方々が盛り上がり、声を出して応援したり、皆さんが一丸となって物事を決めていったりする。その過程は、普段テレビでは見ることができません。
山田:
国会や政策決定の裏側ということですね。骨太の方針を議論する会議の話ですね。
伊奈:
はい。そこは、かなり驚きました。
山田:
骨太の方針については、改めて特集したいと思っています。
骨太の方針は、正式な政府文書です。今後の日本がどのような方向へ進んでいくのか、直近の将来、少なくとも翌年度にどのような政策を実施するのかが盛り込まれています。
国民の皆さんも、もう少し骨太の方針について知っておくべきですし、マスメディアも、政府がどのような政策を進めようとしているのかを、もっと伝えるべきだと思います。
しかし、なかなか誰も詳しく取り上げません。そこで、以前、私が予算委員会について一人で詳しく解説したのと同じように、骨太の方針についても、改めて詳しく説明していきたいと思います。
質疑テーマに込めた政治的狙い
山田:
ほかに何かありますか。「ここが変だ」と思ったことでもいいですよ。日本の国会や政治についてでも、「自民党はけしからん」という話でも構いません。
伊奈:
そうですね。実際に国会で山田さんが質疑に立たれている姿を拝見して、今回、もっと総理に伝えたかったことがあったのではないかと思いました。その内容については、今日のお話のなかでも触れていただいたと思うのですが。
山田:
今回、いろいろな方から、「山田さんは、なぜ表現の自由を最初に持ってこなかったのか」「表現の自由の問題をやめてしまったのか」と、お叱りや批判を受けました。
決して、表現の自由の問題をやめたわけではありません。質問するつもりで準備していましたが、諸般の事情によって、そこまでたどり着けなかったということです。
では、なぜ最初に、企業変革や株主配当などの問題を取り上げたのか。私は、高市政権が掲げる17の成長戦略を、絶対に成功させてほしいと思っています。正直に言えば、これは日本にとって最後のチャンスだと、本気で考えているんです。
今回、官民合わせて340兆円という大規模な投資計画を組んでいます。それだけの規模で取り組んだにもかかわらず、最終的に「実現できませんでした」となれば、「もう日本にはできないのだ」という結論になりかねません。だからこそ、成功してほしい。
しかし、単に国がお金を出せば成功するわけではありません。先ほどの資料でも見ていただいたように、官民による投資で企業が成長軌道に乗ったとしても、その利益が配当として次々に株主へ流れてしまえば、成長のための再投資には回りません。
税金を使って企業を支援し、補助金を出したにもかかわらず、結果として、その資金が株主への還元に使われてしまった。それでは、何のための政策なのかという話になります。
企業の利益がどのように配分されるのかという構造を抑えない限り、日本の成長戦略そのものが失敗してしまう。私は、本気でそれほど重大な問題だと考えていました。
しかも、この問題に取り組む人が、なかなかいません。だからこそ、これは自分がやるべきだと判断しました。
もう一つ、私の政治信条として、「命を守ること」があります。政治家にとって、最後に果たすべき仕事は、国民の命を守ることだと思っています。
その意味で、子ども政策も、何を言われようと取り組まなければならない。そして、防災も同じです。今回、防災庁の創設というところまで、ようやく議論が進んできました。
実は、私が2021年1月に、いわゆる「こども庁」の提言書を菅総理に提出した際、もう一冊、表には出なかった「幻の提言書」がありました。それが「デジタル防災庁」の構想です。
「デジタル防災庁」という名称は採用されませんでしたが、ここにきて防災庁の創設が現実的になってきました。その際、デジタルの仕組みを組み込まなければ、最後に人の命を救うことはできません。このタイミングを逃せば、もう終わりだという危機感があります。
今は、毎日のように地震や災害に関する報道があります。皆さんも、ある程度の危機感を持っているでしょう。では、本当に大規模災害が起きたときに、一体どうするのかということです。
私が自民党に移ってきてから、ずっと考えてきたのは、「防災は誰かがやらなければならない」ということでした。
もちろん、トンネルや橋を強くすることも重要です。国土強靱化も必要でしょう。
しかし、残念ながら、どれだけインフラを強靱化しても、発生する災害そのものを完全に防ぐことはできません。トンネルや橋、建物を強くしても、災害の後には、多くの人が行き場を失います。避難生活をどうするのか、物資をどう届けるのかという問題も残る。
まず人々が生き残り、そこから復旧までつなげなければ、命を守ることはできません。そのときに必要になるのが、情報とデジタルの力です。おそらく、それなしには人命を救えない。
ところが、この問題に本格的に取り組む人がいません。しかも、防災DXの予算は、わずか40億円です。あり得ないと思います。
もちろん、40億円自体は大金です。しかし、私は国立国会図書館の書籍のデジタル化だけでも、200億円規模の予算を確保してきました。今回、雑誌のデジタル化にも200億円を投じ、合わせて400億円規模で進めています。
それも重要な政策なんですが、その横で、人命に関わる防災DXが40億円、防災全体でも約200億円しかない。これは、どう考えてもおかしいでしょう。
防衛と防災は、どちらも国民の命を守るための政策です。防衛に取り組むのと同じように、防災にも取り組まなければなりません。
防衛は抑止力を高めることによって、戦争が起きる確率を下げるものです。一方、災害については、地震などが発生する確率が、具体的な数字としてすでに見積もられています。
戦争が起きる可能性もありますが、大規模災害が起きる可能性も明確に示されている。それなのに、なぜ十分な対策をしないのかということです。この問題は、訴え続けなければなりません。今回の機会を使い、総理に直接伝えなければ動かないと考えました。
これまでも、各大臣や各委員会に対して繰り返し訴えてきました。しかし、まったく動かなかった。だからこそ、総理が出席する場で取り上げるしかないと思ったんです。
同時に、政策を動かすためには、世論の支持も得なければなりません。そう考えて、今回、防災DXを質疑の重要なテーマとして取り上げました。
小山:
今回は決算委員会でした。令和6年度の決算審査ではありますが、それ以前から、国はさまざまな政策に多額の資金を投じてきました。そして今回も、官民で大規模な投資を行うとしています。
そこで重要になるのが、「これまでの投資の結果は、実際にどうなったのか」という検証です。山田さんは以前から、その点を繰り返し指摘してきました。
今回も、「ワニの口」と呼ばれる企業の売上高と人件費などの乖離を示すデータから議論を始めました。
企業の体質や構造を変えないまま投資をしても、一時的に売り上げが増えた後、その利益がすべて株主に持っていかれ、再投資に回らなければ、持続的な成長にはつながりません。
そのため、今回は企業の資本配分や構造の問題を重点的に取り上げたということです。
山田:
企業の「ワニの口」や配当の問題を質疑で取り上げたところ、企業関係者から、私のところへメールやメッセンジャーで、非常に多くの反響が届きました。「よく言ってくれた」という声です。
「それは、あなたたち自身の問題でしょう」とも思いましたけどね。一方で、この問題は若い人には、あまり響きませんでした。非常に反応が薄かった。
会社の収益の使い道には関心がないということなのか、理由は分かりません。ただ、特定の企業関係者や、実際に経営に携わっている人たちからは、かなり多くの反響があり、「本当にそのとおりだ」という声が寄せられました。
小山:
7月1日には勉強レクを行いました。いわば、質問レクの前撮り版のような形です。クレジットカードをめぐる問題をはじめ、表現の自由に関するテーマも、実際にはかなり準備していました。
ただ、山田さんと何度も悩みながら検討した結果、どう考えても20分では終わらないため、質問を絞ったほうがよいという判断になりました。
山田:
もう一つ、何も進展していない問題をそのまま質問しても、以前と同じ答弁が返ってくるだけです。それでは、質疑をする意味が薄い。
また、よい答弁を引き出せそうにない問題を、ただぶつければよいというものでもありません。かえって政府から、こちらの意図とは反対の答弁を引き出してしまう危険もあります。
例えば、「表現規制はけしからん」と質問した結果、政府が「子どもを守るために、これから表現規制を進めます」と答弁してしまったら、それで終わりです。
仮に総理が国会の場で、そのような発言をすれば、政府の公式答弁として残ります。そして、その答弁を根拠として、実際に表現規制が進められてしまう可能性がある。
したがって、国会質問は、何でもぶつければよいわけではありません。何を勝ち取りたいのかを、きちんと考えなければならない。私たちにとって大切なのは、感情や怒りを政府にぶつけることではありません。
世の中を実際に変え、政策を前へ進めるためには、どうすればよいのか。そのために、政府からどのような答弁を、ぎりぎりのところで引き出せるのかを考える必要があります。
もちろん、引き出せる答弁は、妥協の産物である場合もあります。あまりにもハードルの高い質問をすれば、政府側は態度を硬化させ、保守的で消極的な答弁しかできなくなります。
政府から答弁を引き出すためには、どの辺りが限界なのか、どこまでなら踏み込めるのか、どのような順番で相手の姿勢を崩していくのか。そこまで考えて質問を組み立てなければならないんです。
伊奈:
本当にそのとおりだと思います。今日のこの場でのやり取りも含めて、自分自身の質問力についても考えさせられました。
政治の現場と成長戦略の行方
山田:
ほかに何か感想はありますか。伊奈さんは、この間、私の事務所の仕事に少し参加し、私の下で国会質問を作る作業など、さまざまな場面を見てきたと思います。政治の現場の裏側とまではいわないかもしれませんが、そのリアルな姿を見て、どう感じましたか。
伊奈:
テレビを見ているだけでは、政治家の方々が普段どのように動いているのか、なかなか身近には感じられません。そのため、世論では、「政治家は、なぜこれほど多くの給料をもらっているのか」といった意見もあると思います。
ただ、私は実際に山田さんの近くで仕事を拝見しました。本当に分刻みのスケジュールで動かれていて、これほど国のために働いてくださっているのだということを感じました。山田さんだけでなく、ほかの政治家の方々についても、同じように感じています。
山田:
あまり、忙しさを自慢しても仕方がありません。どれほど忙しくても、結果を出さなければ意味がないからです。
私自身、あまりよくないと思っているのは、守備範囲を広げすぎていることです。もっとテーマを絞り、一つでも二つでも、実際の成果として実現していかなければならないと思っています。
小山:
伊奈さんは、2時間ほど山田さん以外の議員の質疑もご覧になったと思います。そのなかで、山田さんが使っていたパネルについて、「少しこぢんまりしていて、かわいらしかった」という話もありましたよね。
山田:
これも、私なりの一種のリストラ策、つまり経費削減策なんです。
私が使ったパネルはA3判です。通常、国会質疑で皆さんが使うのはA2判くらいで、これより一回り大きなものです。NHKのテレビ中継や動画で見せるため、一般にはかなり大きなパネルを使います。
小山:
それくらいの大きさがあると、確かに迫力がありますからね。
山田:
ただ、私が言いたいのは、A3判なら経費を削減できるということです。事務所にあるコピー機やプリンターで、そのまま印刷できます。一方、A2判のパネルを印刷業者に作ってもらうと、1枚当たり1万円ほどかかるんです。かなり高い。
私たちが使ったものは、東急ハンズのような店でパネルを買ってきて、そこにコピー用紙を貼っただけです。
今のNHKのテレビ映像は非常に解像度が高いので、小さなパネルでも画面上では十分に大きく拡大できます。きちんと見えるのであれば、何も大きなものを使う必要はないだろうという考えです。
小山:
ただ、実際の委員会室で見ると、かなりかわいらしく見えますよね。
山田:
周りの人たちからも、ずいぶん「小さい」と言われました。
小山:
なお、委員会の現場では、委員の皆さんの手元に、パネルと同じ資料が紙で配られています。個人的には、そろそろデジタル化したらどうかとも思うのですが、参議院ではタブレットを持ち込めないんですよね。
山田:
ということで、今回は、このような内容でお送りしました。
次回は、前回途中で残してしまったロボット政策の続きを取り上げたいと思います。政府への提言について、具体的にどのような内容にしていくのかを説明する予定です。
また、骨太の方針についても、きちんと整理して取り上げたいと思っています。2026年度は、ロボット政策においても、高市政権の成長戦略においても、日本がこれからどうなっていくのかを左右する、非常に重要な年です。
政府は、これだけ大きな旗を掲げ、拳を上げて政策を打ち出しました。では、それをどのように実現するのか。仮に実現できなければ、「日本は、どれほど大きな声で大胆なことを言っても、結局は何もできないのだ」ということになってしまいます。
ロボット分野についても、さまざまな政策を掲げながら、結局、中国やアメリカには勝てず、日本はもう終わったということになりかねません。
造船についても、現在は中国と韓国が大きなシェアを持っています。そのなかで、日本は最後の砦として、もう一度、世界第3位の位置に食い込もうとしています。しかし、それも結局は実現できなかったとなるかもしれない。
半導体についても、ラピダスなどに多額の資金を投入しています。それでも最終的に、アメリカやサムスン、中国の企業に勝つことができなかったという結果に終わる。
あらゆる分野で、そのようなことになってしまえば、私は本当に日本が終わってしまうと思います。本当に終わりかねません。だからこそ、2026年度の骨太の方針が本当にこの内容でよいのかを検証し、もう一度、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
政権に対して批判することも、支持することも、それぞれあってよいと思いますが、私は、この政権をきちんと育てたいと考えています。少し上から目線の言い方にはなりますが、皆さんと一緒になって育てていきたい。
ここまで来て、成長戦略はようやく軌道に乗り始めています。しかし、これを実際に実現しなければなりません。
現状は、本当に問題だらけです。供給側では、人手が足りません。必要な物資も不足しています。さらに、原油をめぐる問題もあります。ホルムズ海峡やイラン情勢などの問題が起こり、原油価格が上昇すれば、さまざまなコストも上がります。
企業の投資意欲を高めたとしても、同時にコストが上昇してしまえば、場合によってはスタグフレーション、つまり景気が停滞しているにもかかわらず物価が上昇する状態に陥りかねません。
財政政策をどうするのかについても、さまざまな意見があります。
国債を発行するべきか、発行するべきではないかという点について、私は基本的にニュートラルな立場です。現時点で、その是非について強い意見を述べるつもりはありません。
ただ、少なくとも円に対する信認が揺らいでいることは間違いありません。
これは、単に円が弱いというだけの話ではありません。日本経済が、まだ世界の市場から十分に信頼されていないという、マーケットからのメッセージでもあります。
そういう意味でも、2026年度の骨太の方針は、これまでの政権のものとは異なり、極めて重要な位置づけにあると考えています。私自身、日本の成長戦略を作る側の役員として関わっています。いわば内部の人間として、実際に政策を作っている当事者の一人です。
だからこそ、その内容を皆さんにしっかりとお届けし、何とか日本をもう一度盛り上げていきたいと考えています。
今回は少し内容が盛りだくさんになりましたが、このあたりで終わりにしたいと思います。また来週、皆さんにお届けしていきます。では、最後に改めて感想をお願いします。
伊奈:
これから、もっと勉強して頑張ります。
山田:
頑張ってください。それでは、今回はこのあたりにしたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
小山:
ありがとうございました。
