「誤学習」と「未学習」──子どもとの関わりを見直すヒント(校長通信シリーズ)
日々の忙しさの中で、子どもとの関わり方にふと立ち止まって考える機会がある方も多いのではないでしょうか。今回は、教育や子育ての現場でよく耳にする「誤学習」と「未学習」という言葉を手がかりに、子どもとの関係性や支援のあり方について考えてみたいと思います。
「誤学習」と「未学習」って何?
療育や発達支援の分野では、「誤学習」と「未学習」という言葉がよく使われます。
• 誤学習とは、子どもが「不適切な行動をすることでメリットが得られる」と学んでしまうこと。例えば、癇癪を起こすとYouTubeを見せてもらえる、いたずらをすると大人がかまってくれる、などです。
• 未学習とは、そもそも「どう振る舞えばよいかを知らない」状態。教えられていても、まだ身についていない段階です。
この違いを見極めることで、私たちの関わり方は大きく変わってきます。
行動の背景にある「ABCの法則」
応用行動分析では、行動を「ABC」の枠組みで捉えます。
• A(先行事象):行動の前に起きたこと(例:退屈、不快、要求が伝わらない)
• B(行動):実際に起きた行動(例:癇癪、奇声、要求)
• C(結果):行動の後に起きたこと(例:YouTubeを見せてもらえる、かまってもらえる)
このサイクルが繰り返されることで、誤学習が強化されてしまうのです。
誤学習を防ぐための3つのアプローチ
1.先行事象への介入
問題行動が起きる前に予防する工夫をします。例えば、家事の前に短時間でも子どもと関わる時間を設けたり、視覚的なスケジュールで見通しを示したりすることで、不安や癇癪を減らすことができます。
2.行動への介入
癇癪に対してYouTubeを見せるなどの「誤った報酬」を断ち切ることが重要です。落ち着いた後に肯定的な注目を与えたり、代替行動(指差し、言葉、手を引くなど)を教えて強化することで、望ましい行動を促します。
3.結果への介入
問題行動がないときや、望ましい行動が見られたときに、積極的に褒めたり関わったりすることで、良い行動を強化します。YouTubeも「ご褒美」として位置づけることで、誤学習を防ぐことができます。
誤学習は子どもだけの話ではない
「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」という言葉があります。職場などで不機嫌な態度をとることで周囲が気を遣う状況を指します。これも一種の誤学習です。「不機嫌でいれば周囲が動いてくれる」と学んでしまうのです。
齋藤孝さんは著書『不機嫌は罪である』の中で、「成熟した人間は、自分の不機嫌を周囲にぶつけるべきではない」と述べています。私自身も、かつて「不機嫌な説教」で生徒を動かそうとしていた未熟さを思い出し、反省することがあります。
外国籍の子どもたちへの支援も「誤学習・未学習」の視点で
言葉や文化の違いから、学校生活に適応できずに苦しむ外国籍の子どもたちもいます。日本語がわからないまま入学し、支援体制が整っていないと、不登校や孤立につながることもあります。
こうしたケースでも、「未学習」なのか「誤学習」なのかを見極めることが大切です。言葉が通じないから反抗的に見える、という誤解も起こりがちです。背景にある事情を丁寧に探り、組織的な支援体制を整えることが求められます。
最後に
子どもたちの行動には、必ず理由があります。誤学習か未学習かを見極めることで、私たちの関わり方はより効果的で、優しいものになるはずです。教育や子育てに関わるすべての人が、少しずつでもこの視点を持てたら、子どもたちの未来はもっと明るくなるのではないでしょうか。
