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初任給を上げられる会社、上げられない会社。賃上げ時代に読む企業の稼ぐ力

初任給を大きく上げるニュースが増えています。

ファーストリテイリング。
保険会社。
銀行。
商社。
IT企業。
製薬会社。

少し前なら、新卒で月30万円台は珍しい水準でした。

今は、大手企業を中心に月30万円台の初任給が目立つようになっています。

ここで投資家として気になるのは、ひとつです。

初任給を上げられる会社は、何が違うのか。

もちろん、初任給が高い会社の株を買えばいい、という話ではありません。

大事なのは、なぜ上げているのかです。

成長のために上げているのか。
人が採れないから上げているのか。
物価高に対応しているのか。
周りが上げるから仕方なく上げているのか。
上げた人件費を利益で回収できるのか。

ここを分けないと、賃上げニュースの意味を読み違えます。

この記事では、初任給引き上げを入口にして、企業の稼ぐ力、人材獲得力、業界構造、賃上げ時代の投資判断を考えます。


結論。初任給引き上げは、企業の稼ぐ力を読む入口になる

結論から言うと、初任給引き上げは単なる人件費ニュースではありません。

企業の競争力が出るニュースです。

ただし、初任給を上げている会社がすべて強いわけではありません。

初任給引き上げには、2つの意味があります。

ひとつは、成長投資としての賃上げです。

高い給料を払ってでも、優秀な人材を採る。
その人材に大きな仕事を任せる。
高い成果を求める。
増えた人件費を、売上や利益で回収する。

この形です。

もうひとつは、防衛的な賃上げです。

人が採れない。
辞められる。
最低賃金が上がる。
周りが上げるから、自社も上げないと採用で負ける。

この場合、賃上げは成長投資ではなく、利益を削るコストになります。

同じ初任給引き上げでも、意味はまったく違います。

投資家が押さえるのは、給料の高さではありません。

その会社が、上げた給料を利益で回収できる構造を持っているかです。

なぜ今、初任給引き上げが増えているのか

今の初任給引き上げは、一部の景気のいい会社だけの話ではありません。

日本全体で、若手人材の値段が上がっています。

理由ははっきりしています。

人手不足。
物価高。
最低賃金の上昇。
若手人口の減少。
採用競争の激化。
転職市場の広がり。
企業の賃金テーブル見直し。

これらが重なっています。

昔は、新卒を安く採って、長い時間をかけて育てる会社が多くありました。

年功序列。
終身雇用。
若手は安く、年齢が上がると給料も上がる。

この前提が崩れています。

若手も会社を選びます。
給与が低い会社は、最初から候補から外されます。
転職も前より一般的になりました。
外資系、IT、コンサル、商社、金融が高い初任給を提示します。

そうなると、初任給を上げない会社は、採用の入口で負けます。

これは単なる給与インフレではありません。

長く安く抑えられてきた若手の賃金が、採用市場の現実に合わせて修正されている。

日本企業の賃金の値札が、デフレ時代から変わり始めています。

上げられる会社と、上げざるを得ない会社は違う

初任給は、どの会社も上げたいはずです。

でも、全社が同じように上げられるわけではありません。

上げられる会社には、共通点があります。

利益率が高い。
価格転嫁できる。
海外で稼げる。
ブランド力がある。
1人あたりの売上や利益が大きい。
人材に投資しても回収できる。
高い仕事を任せる仕組みがある。

こういう会社は、初任給を上げても耐えられます。

むしろ、人材投資として使えます。

一方で、上げざるを得ない会社もあります。

人が採れない。
離職が止まらない。
最低賃金に押される。
競合が上げるから、自社も上げる。
でも価格転嫁できない。
利益率も低い。

この場合、賃上げは利益を削ります。

同じ初任給引き上げでも、

稼ぐために上げる会社。
採れないから上げる会社。

この差は大きいです。

ファーストリテイリングは、なぜ初任給を上げるのか

ファーストリテイリングは、初任給引き上げの代表例です。

ここを単なる小売業の賃上げとして読むと浅くなります。

ユニクロは、国内の服屋だけではありません。

世界で店舗を展開するグローバル企業です。

商品企画。
生産管理。
物流。
店舗運営。
海外展開。
デジタル。
在庫管理。
ブランディング。
人材育成。

これらを世界規模で動かしています。

ファーストリテイリングが初任給を上げる理由は、人が足りないからだけではありません。

世界で戦う人材を採るためです。

少数精鋭で高い成果を求める。
若手にも早い段階で大きな仕事を任せる。
国内だけでなく海外でも戦える人材を育てる。
だから、入口の給与も上げる。

ファーストリテイリングの場合、給与はコストであると同時に、成長投資です。

高い給料を払う。
その代わり、高い成果を求める。
成果が出れば、店舗、売上、海外展開、ブランド力で回収する。

強い会社の賃上げは、この形になります。

給料を上げても、利益を出す仕組みがある。

投資家は初任給の金額ではなく、上げた給料をどこで回収するのかを押さえます。

商社は、なぜ高い給料を出せるのか

商社も、初任給や年収が高い業界です。

商社の給与が高い理由は、ビジネスモデルにあります。

1人が動かす金額が大きいからです。

資源。
エネルギー。
食料。
化学品。
機械。
インフラ。
金融。
物流。
海外事業。
M&A。
事業投資。

商社は、ただモノを右から左へ流す会社ではありません。

投資します。
事業会社を持ちます。
海外で資源を押さえます。
販売網を作ります。
リスクを取ります。
子会社を管理します。
事業ポートフォリオを組み替えます。

1人の判断が、数十億円、数百億円、場合によってはそれ以上の案件につながります。

だから、人材の質が利益に直結します。

商社の高い給与は、単なる福利厚生ではありません。

大きな案件を動かす人材への対価です。

商社は、失敗したときの損失も大きいです。

資源価格。
為替。
地政学。
海外規制。
投資先の業績。
金利。
物流混乱。

こうしたリスクを読みながら、事業を作ります。

だから、商社は人にお金を出します。

高い給料を払っても、それ以上の利益を生む人材を取る必要がある。

低利益率の労働集約型ビジネスとは、ここが違います。

保険・金融は、営業だけでは回らない

保険会社や銀行も、初任給引き上げが目立つ業界です。

ただ、金融業界の賃上げを「営業職を集めたいから」とだけ読むと浅くなります。

今の金融機関に必要な人材は広がっています。

資産運用。
リスク管理。
アクチュアリー。
法人営業。
海外事業。
データ分析。
AI活用。
システム開発。
サイバーセキュリティ。
コンプライアンス。
金融商品の設計。

保険会社は、保険を売る会社であり、巨大な金融機関です。

銀行は、預金と貸出だけの会社ではありません。

決済。
法人取引。
投資銀行業務。
資産運用。
デジタル金融。
海外事業。
リスク管理。

こうした領域で稼ぎます。

金融業界は、規制産業です。

規制対応が必要です。
財務の健全性が問われます。
システム障害は信用問題になります。
リスク管理を間違えると、一気に損失が出ます。

だから、人材の質が重要です。

金融は、ITやコンサルとも人材を取り合っています。

データ分析ができる人材。
AIを業務に入れられる人材。
リスクを数値で管理できる人材。
海外で事業を動かせる人材。

こういう人材は、金融だけを見ていません。

IT企業にも行けます。
コンサルにも行けます。
外資系にも行けます。
スタートアップにも行けます。

だから、金融機関も初任給を上げます。

金融の稼ぎ方が変わっているから、人材の取り方も変わっています。

初任給を上げられる会社の共通点

初任給を上げられる会社には、はっきりした共通点があります。

まず、稼ぐ単価が高い会社です。

商社のように、1人が大きな案件を動かす。
金融のように、資産やリスクを扱う。
ITやコンサルのように、人材の能力がそのまま売上に変わる。

こういう会社は、人にお金を出せます。

次に、価格転嫁できる会社です。

原材料費や人件費が上がっても、価格に転嫁できる会社は強いです。

値上げしても顧客が離れにくい。
ブランドがある。
代替されにくい。
サービスの価値が高い。

こういう会社は、人件費が上がっても利益を守れます。

三つ目は、海外で稼げる会社です。

日本国内だけで戦う会社は、人口減少の影響を受けます。

一方で、海外売上が大きい会社は、市場が広いです。

世界で人材を取り合うなら、給与も世界水準に近づきます。

ファーストリテイリングがわかりやすい例です。

四つ目は、1人あたり利益が大きい会社です。

社員数が多くても、1人あたり利益が低い会社は、給与を上げる余地が小さくなります。

逆に、少数精鋭で大きな利益を出せる会社は、給与を上げても回収できます。

五つ目は、人材が競争力そのものになっている会社です。

商社。
金融。
IT。
コンサル。
製薬。
半導体。
グローバル小売。

こういう業界では、優秀な人材を取れないことが成長鈍化につながります。

だから、給与はコストではなく投資になります。

上げざるを得ない会社は苦しい

一方で、初任給を上げていても、投資家として注意したい会社があります。

上げられる会社ではなく、上げざるを得ない会社です。

人が採れない。
辞められる。
最低賃金が上がる。
競合が上げている。
採用広告で見劣りする。
現場が回らない。

こういう理由で上げている場合、賃上げは成長投資ではなく防衛策です。

もちろん、防衛策でも必要です。

人がいなければ事業は回りません。

ただし、価格転嫁できない会社では、賃上げが利益を削ります。

人件費は増える。
売上は伸びない。
値上げもできない。
利益率が下がる。

この形になると苦しいです。

特に、労働集約型の業界では影響が大きくなります。

飲食。
小売。
介護。
物流。
宿泊。
建設。
一部のサービス業。

もちろん、この中にも強い会社はあります。

値上げできる会社。
省人化できる会社。
ブランドを持つ会社。
高単価に移れる会社。
DXで効率を上げる会社。

こういう会社は戦えます。

でも、価格を上げられず、人件費だけが増える会社は厳しいです。

賃上げ時代は、企業の差が出ます。

給料を上げられる会社。
上げざるを得ない会社。
上げたいけど上げられない会社。

この差が、利益率に出ます。

豆知識。初任給だけ上げると、社内で逆転が起きる

初任給引き上げで見落としやすいのが、既存社員とのバランスです。

新卒初任給を一気に上げると、入社2年目、3年目の社員との給与差が縮まります。

場合によっては、新卒のほうが高く見えることもあります。

これを放置すると、社内の不満が出ます。

なぜ新人だけ上がるのか。
自分たちは据え置きなのか。
数年前に入った社員が損をしていないか。

こういう問題です。

だから、本当に初任給を上げるなら、賃金テーブル全体を見直す必要があります。

新卒だけ上げるのか。
若手全体を上げるのか。
中堅も上げるのか。
管理職も上げるのか。
評価制度も変えるのか。

ここまで必要になります。

初任給引き上げは、採用広報だけでは終わりません。

会社全体の人件費構造を変える話です。

本当に強い会社は、初任給だけでなく、既存社員の処遇、評価制度、昇格制度まで合わせて変えます。

もうひとつの豆知識。初任給引き上げは、賃金カーブを変える

日本企業は、長く年功型の賃金カーブを使ってきました。

若いうちは低い。
年齢が上がると上がる。
管理職になるとさらに上がる。

この形です。

でも、初任給を大きく上げると、賃金カーブは変わります。

若手の給与を上げる。
中堅との差が縮まる。
年功だけでは説明できなくなる。
成果や役割で差をつける必要が出る。

つまり、初任給引き上げは、年功序列の修正にもつながります。

若手を安く使う時代から、最初から高く採って、高い成果を求める時代へ変わっていく。

ファーストリテイリングのような会社は、この方向です。

入口から高い処遇を出す。
その代わり、グローバルで高い成果を求める。
少数精鋭で生産性を上げる。

これは、単なる初任給アップではありません。

人材の使い方そのものの変更です。

投資家はどこを確認するか

初任給引き上げのニュースを見たとき、投資家が確認する場所は決まっています。

まず、人件費率です。

売上に対して、人件費がどれくらい重いのか。

人件費率が高い会社で賃上げが進むと、利益への影響は大きくなります。

次に、営業利益率です。

賃上げしても営業利益率を保てる会社は強いです。

価格転嫁できている。
生産性が上がっている。
高単価の商品やサービスを持っている。

こういう会社です。

三つ目は、1人あたり売上と1人あたり利益です。

高い給料を払っても、1人あたり利益が大きければ回収できます。

逆に、1人あたり利益が小さい会社では、賃上げの負担が重くなります。

四つ目は、価格転嫁力です。

人件費が上がっても、価格を上げられるか。

値上げできる会社は、賃上げを吸収できます。
値上げできない会社は、利益を削ります。

五つ目は、採用と離職です。

高い給料を出しても、人が辞め続ける会社は弱いです。

採用できる。
育てられる。
辞められない。
成果につながる。

ここまで回って、初任給引き上げは投資になります。

最後は、賃上げ後の利益です。

給料を上げたあと、利益は伸びているのか。
営業利益率は落ちていないか。
値上げできているか。
生産性は上がっているか。
株主還元は続いているか。

ここまで確認して、初任給引き上げの意味を判断します。

まとめ。賃上げ時代は、企業の稼ぐ力がはっきり出る

初任給引き上げは、単なる給与ニュースではありません。

人手不足、物価高、若手人材の争奪戦によって、日本企業の賃金の値札が変わり始めています。

ただし、すべての会社が同じ意味で給料を上げているわけではありません。

成長投資として上げる会社があります。
人が採れないから上げざるを得ない会社もあります。
本当は上げたいのに、利益が足りず上げにくい会社もあります。

投資家が確認するのは、初任給の金額そのものではありません。

その会社は、なぜ給料を上げるのか。
上げた給料を利益で回収できるのか。
価格転嫁できるのか。
1人あたり利益は高いのか。
人材を採って、育てて、成果につなげられるのか。

ここを分けて判断します。

ファーストリテイリングのように、世界で戦う人材を採る会社。
商社のように、1人が大きな案件を動かす会社。
金融や保険のように、運用、リスク管理、IT、データ人材を取りにいく会社。

こういう会社では、賃上げは将来の利益を作る投資になります。

一方で、価格転嫁できず、人件費だけが増える会社では、賃上げは利益を削ります。

賃上げ時代に差が出るのは、ここです。

給料を上げられる会社なのか。
給料を上げざるを得ない会社なのか。
上げた給料を利益に変えられる会社なのか。

初任給ニュースから読むべきなのは、そこです。

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