見出し画像

管理職が割に合わない会社は強いのか。昇進で給料が下がる時代の人材戦略

課長に昇進したのに、月収が下がる。

残業代がなくなる。
休日出勤手当がなくなる。
役職手当は少ない。
ボーナスで補うと言われたのに、実際には変わらない。

こういう話は、現場ではよくあります。

特に製造業のように、残業や休日対応が多い職場では、昔からよく聞く話でした。

一般社員のころは、残業代や休日出勤手当がつく。
課長クラスになると、それがなくなる。
責任は増える。
現場対応も増える。
でも、月収は下がる。

昔は、それでも、

「管理職になったんだから仕方ない」
「今は下がっても、将来報われる」
「課長になれただけでもいいこと」

という空気がありました。

でも、今はその前提が崩れています。

若手の初任給は上がっています。
転職市場も広がっています。
専門職で稼ぐ道もあります。
副業もあります。
管理職にならなくても収入を上げる選択肢があります。

この時代に、責任だけ増えて処遇が下がる管理職制度は弱いです。

この記事では、昇進で給料が下がる問題を入口にして、管理職の処遇、中小企業の構造、人材戦略、投資家が読むべき企業の人材力を整理します。


結論。管理職が割に合わない会社は、長期で弱くなる

結論から言うと、管理職が割に合わない会社は、長期で弱くなります。

管理職は、会社の背骨です。

現場を回す。
部下を育てる。
納期を守る。
品質を守る。
クレームを受ける。
経営と現場の間に立つ。
数字と人の両方を管理する。

この役割を担う人が報われない会社は、組織が少しずつ痩せていきます。

若手の初任給を上げる会社は増えています。

それ自体は良いことです。

ただ、入口だけ良くしても、中間管理職が報われない会社では人材は残りません。

採用では「人材を大切にします」と言う。
でも、社内では責任を負う人ほど割に合わない。

この矛盾がある会社では、優秀な人から離れていきます。

管理職になりたくない。
専門職のままのほうがいい。
転職したほうがいい。
外資やITに行ったほうがいい。
副業で稼いだほうがいい。

こう考える人が増えます。

投資家として読むなら、管理職の処遇は、会社の人材力を判断する入口になります。

平均給与だけでは足りません。

人を安く使って利益を出している会社なのか。
人に投資しても利益を伸ばせる会社なのか。

ここを分けて判断します。

課長になったら残業代なし、は本当に正しいのか

まず押さえるべきなのは、課長という肩書きだけで残業代がなくなるわけではないという点です。

会社ではよく、

「管理職だから残業代は出ない」

と言われます。

でも、法律上の管理監督者は、役職名だけでは決まりません。

部長。
課長。
店長。
工場長。
マネージャー。

こういう名前がついていても、実態が伴っていなければ、管理監督者とは言い切れません。

判断されるのは、実態です。

経営に近い立場なのか。
労務管理に重要な権限があるのか。
勤務時間を自分で決められるのか。
待遇が責任に見合っているのか。
部下の採用、評価、配置に関われるのか。
一般社員と同じように時間管理されていないか。

このあたりで判断されます。

つまり、課長でも、

人事権がない。
予算権も弱い。
勤務時間を細かく管理される。
現場作業も普通にやる。
経営判断には関われない。
役職手当も少ない。

この状態なら、「管理職だから残業代なし」と簡単には片付けられません。

もちろん、個別の判断は会社の制度や実態によります。

ただ、少なくとも、

「課長という名前になったから残業代が消える」

という理解は危ういです。

ここは労務問題としても、人材戦略としても重要です。

なぜ昇進で給料が下がるのか

昇進したのに給料が下がる理由は、だいたい決まっています。

残業代がなくなる。
休日出勤手当がなくなる。
役職手当が少ない。
賞与で補うと言われても、制度上の保証がない。
評価基準が曖昧。
責任だけ増える。

一般社員のころは、残業すれば残業代が出ます。

休日に出れば休日出勤手当が出ます。

繁忙期には、月収が大きく増えることもあります。

ところが、課長になった瞬間にその部分がなくなる。

代わりに役職手当がつく。

でも、その役職手当が少ない。

結果として、月収が下がります。

しかも、仕事は楽になりません。

部下の面倒を見る。
納期を管理する。
トラブル対応をする。
会議に出る。
上司へ報告する。
現場の穴埋めもする。
客先からの急ぎにも対応する。

プレイヤー業務は残ったまま、管理責任だけが乗る。

これが一番きつい形です。

昇進ではなく、会社の都合を受け止めるポジションになっています。

昔はなぜ成立していたのか

昔は、課長になって月収が下がっても、受け入れられる空気がありました。

理由があります。

年功序列があった。
終身雇用の安心感があった。
課長の次に部長や役員の道が見えた。
賞与や退職金で報われる期待があった。
転職市場が今ほど開いていなかった。
会社に残ることが前提だった。

つまり、昔の管理職処遇は、月収だけで判断する仕組みではありませんでした。

今は少し下がる。
でも、将来上がる。
役職が上がれば報われる。
定年まで勤めれば退職金もある。
会社の中で地位も上がる。

この前提がありました。

だから、多少割に合わなくても我慢できた。

会社側も、それを前提に制度を作っていました。

でも、今は違います。

会社が一生面倒を見てくれる前提は弱くなりました。
転職は一般的になりました。
専門職として働く道もあります。
管理職にならないキャリアもあります。
若手の初任給も上がっています。
中途採用で外から高い給料の人が入ってくることもあります。

この環境で、昔のままの管理職処遇を続けると、矛盾が出ます。

昔は成立していた制度でも、今の人材市場では通用しません。

中小企業では、管理職が火消し役になりやすい

中小企業では、管理職の割に合わなさがさらに出やすくなります。

理由は、権限と責任のバランスが崩れやすいからです。

社長に権限が集中している。
部長や課長はいるけれど、予算権は弱い。
採用権も弱い。
人事評価も形式的。
でも、現場責任は負わされる。

これが起きやすいです。

特に製造業ではわかりやすいです。

部品が入らない。
納期が遅れる。
図面変更が入る。
客先から急ぎの依頼が来る。
現場が間に合わない。
品質トラブルが起きる。
土曜に出て調整する。
夜に客先対応する。

こういうとき、現場の課長に負荷が集まります。

でも、課長に十分な権限があるとは限りません。

人を増やせない。
設備投資も決められない。
外注費も自由に使えない。
価格交渉にも関われない。
納期変更も勝手にできない。

それでも、現場を回せと言われる。

これは管理職ではなく、火消し役です。

本来の管理職は、仕組みを作る人です。

でも、中小企業では、仕組みを作る前に日々の火消しで終わることがあります。

そして、その火消し役から残業代や休日出勤手当まで消える。

これでは割に合いません。

中小企業が苦しい理由もある

ただし、中小企業側にも事情があります。

人件費を上げたい。
でも利益が薄い。
価格転嫁が難しい。
原材料費も上がる。
電気代も上がる。
金利も上がる。
人手も足りない。

この状態で、管理職手当を大きく上げる余力がない会社もあります。

特に下請け構造の会社では、価格を自由に上げにくいです。

大手からの発注価格が決まっている。
競合も多い。
値上げ交渉をすると仕事を失う不安がある。
人件費を上げても、売上に転嫁できない。

こうなると、賃上げや管理職手当の原資が作れません。

その結果、現場の課長にしわ寄せが来ます。

会社としては、

「課長だからなんとかしてくれ」

となる。

でも、課長個人からすると、

「権限はないのに責任だけ重い」
「手当は少ない」
「残業代も出ない」

となる。

これが中小企業で起きやすい構造です。

だからこそ、強い中小企業ほど、価格転嫁、生産性向上、省人化、業務の見直しを進めています。

人を安く使って何とかする経営は、もう限界です。

管理職が割に合わない会社で起きること

管理職が割に合わない会社では、まず昇進したくない人が増えます。

課長になっても給料が下がる。
責任だけ増える。
休みの日も連絡が来る。
部下の面倒も見る。
上司からも詰められる。

それなら、管理職にならないほうがいい。

こう考えるのは自然です。

次に、優秀な人ほど外に出ます。

仕事ができる人は、選択肢があります。

転職できます。
専門職で稼げます。
副業もできます。
外資やITにも行けます。
同業他社から声がかかることもあります。

割に合わない管理職を受ける理由が弱くなります。

その結果、会社に残るのは、

昇進を断れない人。
責任感だけで踏ん張る人。
転職しにくい人。
現場への愛着で耐える人。

こういう人たちになりやすいです。

もちろん、責任感で踏ん張る人は会社にとって大切です。

でも、その人たちを安く使い続ける会社は弱いです。

いつか限界が来ます。

管理職が疲弊すると、部下育成が止まります。

現場改善も止まります。
若手のフォローも薄くなります。
品質管理も荒れます。
納期管理も後手になります。
組織の判断も遅くなります。

管理職が割に合わない会社は、目に見えないところから弱くなります。

若手の初任給だけ上げても、人材戦略にはならない

今は、若手の初任給を上げる会社が増えています。

採用市場で見劣りしないためには必要です。

ただ、初任給だけ上げても、人材戦略にはなりません。

入社時の給料は上げる。
でも、3年目、5年目、10年目で報われない。
課長になると残業代が消えて月収が下がる。
管理職になっても裁量がない。
評価も曖昧。

これでは、入口だけ整えた会社になります。

人材戦略は、採用だけではありません。

採る。
育てる。
任せる。
評価する。
報いる。
残す。

ここまでつながって、人材戦略です。

初任給を上げるなら、次に問われるのは中間層です。

若手を採る。
でも、育てる人が疲弊している。
管理職が報われない。
中堅が辞める。

この状態では、人材投資が途中で詰まります。

強い会社は、入口だけでなく、管理職層まで処遇を見直します。

強い会社は、管理職を罰ゲームにしない

強い会社は、管理職を罰ゲームにしません。

管理職になる意味を作ります。

役職手当を厚くする。
賞与や評価に責任を反映する。
裁量と権限を渡す。
プレイヤー業務を減らす。
部下育成を評価する。
管理職と専門職のコースを分ける。
昇進しなくても専門性で稼げる道を作る。

特に大事なのは、権限です。

責任だけ重くしても、人は動きません。

人を評価する権限。
業務を変える権限。
予算を使う権限。
人員配置に関わる権限。
仕事を断る権限。

こういう権限があって、はじめて管理職です。

権限がないまま責任だけ負うなら、それは管理職ではありません。

現場の矢面に立つ人です。

そこにお金を出さない会社は、長期で人を失います。

投資家は、人件費の使い方を読む

投資家としては、平均給与だけを確認しても足りません。

平均給与が高い会社でも、実態はいろいろです。

若手だけ上げている会社。
一部の高給職が平均を押し上げている会社。
管理職にしわ寄せしている会社。
現場の人件費を抑えて利益を出している会社。

平均だけでは、人材戦略の中身は読めません。

押さえるのは、人件費の使い方です。

人件費率。
一人あたり売上。
一人あたり営業利益。
営業利益率。
離職率。
採用人数。
中途採用比率。
管理職比率。
女性管理職比率。
人的資本開示。
教育研修費。
労働時間。
有給取得率。

こうした数字を合わせて判断します。

中小企業を見るなら、社長依存も重要です。

社長が全部決める会社では、課長や部長が育ちません。

営業も社長。
価格交渉も社長。
採用も社長。
設備投資も社長。
人事評価も社長。
大口顧客との関係も社長。

この状態では、肩書きはあっても、実態は現場リーダーです。

社長が元気なうちは回ります。

でも、社長が抜けた瞬間に弱くなります。

事業承継も難しくなります。
幹部候補も育ちません。
若手も将来像を描けません。

強い中小企業は、社長だけで回しません。

現場に権限を渡す。
課長や部長に数字を持たせる。
価格交渉や採用にも関わらせる。
管理職を育てる。
次の経営層を作る。

この仕組みがある会社は強いです。

投資家として評価したいのは、人に投資しても利益を伸ばせる会社です。

人件費を抑えて利益を出している会社は、短期では良く見えます。

でも、現場が疲弊すれば長期では弱くなります。

人に投資し、権限を渡し、生産性を上げ、利益を伸ばす。

この流れを持つ会社が強いです。

まとめ。昇進で給料が下がる問題は、人材力を読むサイン

課長になったら残業代や休日出勤手当がなくなり、月収が下がる。

昔は、それが当たり前のように受け止められていました。

でも、今は違います。

若手の初任給は上がっています。
転職市場は広がっています。
専門職で稼ぐ道もあります。
管理職にならないキャリアもあります。

この時代に、管理職が割に合わない会社は、人材を残せません。

若手採用だけにお金を出しても足りません。

入社後に育てる。
中堅を残す。
管理職を報いる。
専門職にも道を作る。
責任に見合う裁量を渡す。

ここまでできて、人材戦略です。

投資家が読むべきなのは、平均給与の高さだけではありません。

人を安く使って利益を出している会社なのか。
人に投資しても利益を伸ばせる会社なのか。

この違いです。

管理職が割に合わない会社は、短期では人件費を抑えられます。

でも、長期では現場を回す人を失います。

昇進で給料が下がる問題は、個人の不満だけではありません。

会社の人材力を読むサインです。

いいなと思ったら応援しよう!