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年会費10万円のクレカ。若い富裕層を引きつけるもの

年会費10万円を超えるクレジットカードと聞くと、中高年の経営者や資産家が持つものという印象があります。

私自身、年会費10万円と聞けば、まず高いと思います。

ポイントで元を取れるのか。

空港ラウンジを何回使えばよいのか。

無料や数千円のカードでは足りないのか。

どうしても、年会費と特典を金額で比べたくなります。

ところが、少なくともラグジュアリーカードでは、若い入会者が増えています。

2024年の新規入会者のうち、35歳以下が30%を占めました。

20代の入会者は、直近2年間で約3倍に増えています。

2025年も20代の入会が増え、新規会員数は前年を上回りました。

若者専用の高級カードが、次々と登場したわけではありません。

変わったのは、高級カードへ入るための入口と、持ち続けてもらうための中身です。


結論:高級カードが売っているのは、決済機能ではない

若い富裕層が年会費を払う理由は、ポイント還元だけでは説明できません。

店や旅行を探す時間を減らす。

大切な会食や家族旅行で、店選びを外す可能性を下げる。

予約しにくい店や、限られたイベントへ入る。

同じような立場の人とつながる。

高級カードは、こうしたサービスを一枚にまとめています。

カード会社が狙っているのも、毎年の年会費だけではありません。

20代や30代のうちに接点を作り、決済から銀行、証券、資産運用へ広げる。

高級カードは、これから長く取引してくれる顧客を、金融グループへ呼び込む入口になっています。

28歳以下は、ラグジュアリーカードの年会費が半額

若い富裕層を狙う動きが分かりやすいのが、SBI新生銀行とラグジュアリーカードの取り組みです。

SBI新生銀行では、20歳以上28歳以下を対象に、ラグジュアリーカードの年会費を毎年半額キャッシュバックするプログラムを用意しています。

通常年会費11万円のブラックカードなら、5万5,000円が戻ります。

通常年会費5万5,000円のチタンカードなら、2万7,500円が戻ります。

SBI新生銀行を引き落とし口座にすることが条件で、29歳の誕生日を迎えるまで対象です。

一度だけの入会キャンペーンではありません。

28歳以下と年齢を区切り、高級カードに興味はあっても、年会費を負担に感じる若い層へ入口を作っています。

同時に、カードの支払口座としてSBI新生銀行も使ってもらえます。

カード会員を増やしながら、銀行との接点まで作れる仕組みです。

三井住友カードは、最上位カードを20代にも開いた

三井住友カードは2025年9月30日、年会費9万9,000円の「三井住友カード Visa Infinite」ビザインフィニットを始めました。

申込対象は、安定した継続収入のある満20歳以上です。

招待も必要ありません。

もちろん、20歳なら誰でも発行されるわけではなく、カード会社の審査があります。

それでも、20代が自分から最上位カードへ申し込めることには意味があります。

従来の高級カードには、ある程度の年齢や利用実績を重ね、カード会社から招待されて持つイメージがありました。

Visa Infiniteは、その入口を広げています。

利用額に応じた継続特典も用意されています。

年間の利用額が大きいほど、受け取れるポイントも増える仕組みです。

年間700万円前後を使えば、継続特典だけで年会費に近い水準、または年会費を上回る水準になるとされています。

カード会社が欲しいのは、発行しただけで使われない会員ではありません。

日常の支払い、旅行、買い物、場合によっては事業経費まで、一枚へ集約する顧客です。

高い年会費を設定する一方で、高額利用者には持ち続ける理由も用意しています。

空港ラウンジだけでは、更新されない

高級カードの定番といえば、空港ラウンジ、ホテル、レストランの優待です。

ただ、こうした特典は他社も導入できます。

最初は特別に感じても、何度か使えば慣れます。

利用者が増えれば、ラウンジが混雑し、予約も取りにくくなります。

高い年会費を払っているのに、一般的なサービスと変わらなくなれば、翌年も更新する理由は弱くなります。

そこで各社は、金額で比べにくい体験を増やしています。

三井住友銀行のOlive Infiniteでは、ミシュランガイド掲載店での限定ディナーなど、会員向けのイベントを用意しています。

ラグジュアリーカードも、予約困難店での食事、会員同士の交流会、ウェルネス、旅行などへ特典を広げています。

普通には予約できない。

参加できる人数が限られている。

自分で一から探すのは難しい。

そのカードを持つ人だけが入れる場所を作り、毎年の更新につなげています。

高級カードは、決済手段というより、毎年中身が変わる会員制サービスに近づいています。

若い富裕層は、時間と安心にお金を払う

お金がある人でも、無駄な年会費を気にしないとは限りません。

必要のない特典へ、毎年10万円を払い続ける人は少ないでしょう。

それでも高級カードを選ぶ人は、年会費をポイントだけで回収しようとしていません。

忙しい経営者や専門職にとっては、数千円の割引より、店や旅行を調べる時間を減らせるほうが価値を持つ場合があります。

大切な相手との会食や家族旅行では、店やホテル選びを失敗したくありません。

カード会社が選んだ提携先や、コンシェルジュを使えば、手間と失敗の両方を減らせます。

一般販売されないイベントや、人数限定の食事会へ参加できることにも価値があります。

金額を払えば誰でも買える商品とは違い、参加できる人数そのものが限られているからです。

若い経営者や事業家なら、会員同士の交流が仕事につながることもあります。

年会費10万円で、何円分の特典を使ったか。

その計算だけでは、高級カードの価値を測り切れません。

自分の仕事や生活に合い、時間や失敗を減らせるか。

そこが基準になります。

高い年会費には、顧客を選ぶ役割もある

年会費10万円は、入会の壁です。

一方、カード会社からすれば、その壁自体に意味があります。

毎年10万円を払える人なら、カードの利用額も大きい可能性があります。

旅行や飲食への支出が多く、経営者なら事業の支払いにも使うかもしれません。

将来、預金や投資へ回す資産が増えれば、カード以外の取引にも広がります。

無料カードで幅広く会員を集めるより、こうした顧客へ絞ったほうが、一人当たりの取引額は大きくなります。

ラグジュアリーカードでは、20代から40代が会員の過半数を占めています。

経営者、会社役員、自営業者なども6割を超えています。

若年層といっても、一般的な会社員を広く狙っているわけではありません。

同社の20代新規入会者のうち、約3割が経営者層だとされています。

対象はごく一部です。

ただ、若いうちから事業や所得を伸ばしている顧客なら、この先の利用期間も長くなります。

そのため、年齢条件を広げたり、28歳以下の年会費を優遇したりして、早い段階から接点を作ろうとしています。

カードの先に、銀行と証券がある

三井住友銀行の「Olive Infinite」は、高級カードが金融サービスの入口になっていることを示しています。

2026年5月に発表された、Visa Infiniteに銀行口座と資産運用を組み合わせた最上位サービスです。

三井住友銀行の預金やSBI証券の資産など、一定の条件を満たすと、年会費9万9,000円が無料になります。

SBI証券でのクレカ積立にもポイントの上乗せがあり、条件を満たせば還元率は最大6.0%、年間で最大7万2,000ポイントに達する設計です。

カード会社や銀行にとって、年会費9万9,000円を受け取ることが最終目的ではありません。

預金を置いてもらう。

SBI証券で投資してもらう。

クレカ積立を続けてもらう。

将来は、資産運用の相談へつなげる。

年会費を無料にしても、金融資産と長期の取引を獲得できれば、グループ全体で収益を作れます。

高級カードは、カードだけの商品から、銀行と証券をまとめて使ってもらう会員証へ変わり始めています。

年会費10万円でも、簡単に利益が出るとは限らない

若い富裕層を獲得できれば、そのまま高収益になるわけではありません。

高級カードは、特典にも費用がかかります。

ポイント。

空港ラウンジ。

コンシェルジュ。

ホテルやレストランの優待。

会員限定イベント。

入会時に大きなポイントを付ければ、その分の負担も発生します。

特典だけを使い切り、翌年に解約する会員ばかりでは採算が合いません。

毎年更新し、カード利用額も多く、銀行や証券まで使ってくれる顧客ほど、カード会社にとって価値が高くなります。

投資家として追うのは、発行枚数だけではありません。

翌年の更新率と、一人当たりの決済額が重要です。

特典に費用をかけすぎていないか。

カードから預金や証券へ広がっているか。

若い会員を獲得するために使った費用を、長い取引で回収できているか。

高級カード競争が利益へつながっているかは、こうした数字に表れます。

私なら、年会費10万円を払うか

私自身の今の使い方なら、年会費10万円のカードを十分に使い切れないと思います。

空港を頻繁に使うわけではありません。

高級ホテルや会食を毎月予約するわけでもありません。

特典を使うために、必要のない支出を増やしたら本末転倒です。

ただ、年間数百万円の支払いを一枚へ集約する人。

仕事や旅行でコンシェルジュを使う人。

一般販売されない体験へ価値を感じる人。

銀行や証券まで含めて、使い方が合う人。

そうした人にとっては、年会費10万円が単なる維持費ではなくなります。

高級カードは、誰が持っても得をする商品ではありません。

生活や仕事との相性で、価値が大きく変わるものだと思います。

まとめ:狙うのは、若いうちから始まる金融取引

若い富裕層を取り込む動きは、すでに具体化しています。

SBI新生銀行は、28歳以下のラグジュアリーカード年会費を毎年半額にする。

三井住友カードは、満20歳以上、招待不要でVisa Infiniteへ申し込める入口を作る。

Olive Infiniteでは、カードを銀行口座とSBI証券へつなげています。

若い富裕層が年会費を払うのは、決済機能のためだけではありません。

手配の時間を減らし、失敗を避け、限られた体験へ入る。

そこに価値を感じています。

カード会社が狙うのは、その先です。

若いうちに接点を作り、決済、預金、証券、資産運用を長く使ってもらう。

年会費10万円のクレジットカードを巡る競争は、豪華な特典の数を比べるだけの勝負ではありません。

これから長く取引してくれる顧客と、どれだけ早く関係を作れるか。

金融グループ同士が競っているのは、そこです。


※本文中の数値は、各社の公表情報および各種報道にもとづいています。

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