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スーパーオートバックスは、なぜワクワクしなくなったのか。東雲から考える、オートバックスの現在地と投資判断

昔のスーパーオートバックスは、カー用品を買うだけの店ではありませんでした。

東京ベイ東雲へ行けば、ホイール、マフラー、車高調、エアロ、シート、メーター、カーオーディオまで、カスタムパーツが大量に並んでいました。

店内にはカフェがあり、週末にはメーカーやショップのイベントが開かれる。

店員の制服や接客も今よりラフで、店舗全体にアメリカのカーショップや巨大ガレージのような雰囲気がありました。

何かを買う予定がなくても、とりあえず行ってみる。

駐車場に並ぶクルマを眺め、店内を回っているうちに、次に付けたいものが見つかる。

昔のスーパーオートバックスは、クルマ好きにとってトレンドの発信地でした。

現在のオートバックスにも、タイヤ、オイル、バッテリー、車検、整備という明確な役割があります。

ただ、昔を知っていると、便利ではあっても、以前ほどワクワクしないという印象が残ります。

オートバックスが弱くなったのか。

クルマを取り巻く時代やニーズが変わったのか。

車検や規制によって、カスタムしにくくなったのか。

今回は、昔のスーパーオートバックスがなぜ強かったのかを整理したうえで、オートバックスセブンを投資家としてどう評価するかまで掘ります。


結論から言うと

昔のスーパーオートバックスが成立しにくくなった最大の理由は、オートバックスだけにあるわけではありません。

カー用品市場そのものが縮小し、カーナビやオーディオは純正装備に吸収され、商品情報は店舗からインターネットへ移りました。

クルマの電子制御化も進み、以前のように部品を交換するだけでは済まない作業が増えています。

オートバックスは、この変化に対応するため、タイヤ、車検、整備、車販売へ軸足を移しました。

この方向転換は、経営として正しかったと思います。

しかし、その過程で、オートバックスにしかなかった「わざわざ行きたくなる店」という強みも薄くなりました。

現在の事業の完成度では、私はイエローハットを上に評価します。

オートバックスは、完成された高収益企業というより、整備による安定収益と、クルマ文化を作ってきたブランド資産を組み合わせ、利益率とROEを引き上げられるかを追う会社です。

昔のスーパーオートバックスは、店ではなく目的地だった

スーパーオートバックスは1997年に展開を開始しました。

通常のオートバックスよりも大きな売場、豊富な商品、広い駐車場、多数のピットを備え、遠方からでも来店してもらう旗艦店として作られています。

当時の会社資料には、「ワクワク・ドキドキ」という言葉が何度も登場します。

これは、単なる広告表現ではありません。

スーパーオートバックスの店舗設計そのものを表していました。

2003年に開業したスーパーオートバックス京都ワンダーシティは、4階建て、総売場面積875坪の大型店でした。

店内には、新車やカスタムカーの展示、壁面のタイヤ・ホイールタワー、25台のピット、ドライブスルー式のオイル交換設備がありました。

さらに、シアトルズベストコーヒー、ヘアサロン、軽飲食、輸入雑貨、CD売場、キッズスペースまで併設されていました。

カー用品店にカフェや雑貨売場を入れる。

今なら、作業の待ち時間を快適にするための設備に見えます。

当時の狙いは、もう少し大きかったはずです。

クルマに詳しくない家族も一緒に行ける。

作業の予定がなくても滞在できる。

店内を長く回るうちに、予定していなかった商品にも触れる。

カフェやイベントは、それ自体で大きく稼ぐ設備ではなく、店舗全体の滞在時間と購買機会を増やす装置でした。

昔のスーパーオートバックスが販売していたのは、カー用品だけではありません。

クルマを自分仕様に変えていく時間そのものを販売していました。

カスタムパーツと店員の知識が、メディアになっていた

1990年代から2000年代前半は、クルマを購入した後に、ユーザーが手を加えられる余地が多く残っていました。

カーナビを付ける。

ヘッドユニットを交換する。

スピーカーやウーファーを追加する。

ホイールを替える。

車高を下げる。

マフラーを交換する。

ステアリングやシートを替える。

追加メーターやエアロパーツを取り付ける。

新車を購入した後にも、高単価の商品と取付工賃を販売できました。

しかも、現在のようにYouTubeやSNSで簡単に装着事例を探せる時代ではありません。

新商品の情報は、カー雑誌、メーカーのカタログ、ショップのデモカー、店員との会話から得るのが中心でした。

スーパーオートバックスへ行けば、雑誌や東京オートサロンで知った商品を実際に手に取れる。

メーカーのイベントでは、開発担当者から説明を聞ける。

デモカーを通じて、取り付けた姿や音を確認できる。

購入後は、そのまま店舗のピットで取り付けられる。

店舗には、商品だけでなく情報も集まっていました。

昔のスーパーオートバックスは、小売店であると同時に、雑誌、展示会、カスタムショップ、取付工場をまとめたメディアだったのだと思います。

だから、用事がなくても行く理由がありました。

スーパーオートバックスが始まった頃が、市場のピークだった

皮肉なのは、スーパーオートバックスが始まった1997年が、国内カー用品市場のピークだったことです。

オートバックスセブンの資料によると、国内カー用品の推定小売販売額は、1997年3月期の3兆565億円から、2014年3月期には約1兆7,670億円まで縮小しています。

17年間で4割以上減った計算です。

会社側は、主な理由として、自動車メーカーによる用品の標準装備化、カーナビなどカーエレクトロニクス商品の単価下落、部品性能の向上による交換サイクルの長期化、スポーツカーの減少、若年層の趣味の多様化を挙げています。

スーパーオートバックスは、カー用品市場が拡大した結果として生まれました。

しかし、店舗を広げていく過程で、市場そのものは縮小に転じました。

大型店は、売場、駐車場、ピット、人員、電気代、在庫などの固定費が重くなります。

特にカスタム用品は、車種、型式、年式によって適合する商品が異なります。

対応する車種を増やすほど在庫は増えますが、一つの商品が売れる回数は限られます。

市場が伸びているときは、圧倒的な品ぞろえが集客力になります。

市場が縮むと、同じ品ぞろえが在庫負担に変わります。

昔のスーパーオートバックスの強みだった広さと商品数は、時代が変わる中で、そのまま維持しにくくなりました。

カーナビとカーオーディオという大きな市場が消えた

カー用品店にとって特に影響が大きかったのが、カーナビとカーオーディオ市場の変化です。

以前は、クルマを購入した後に、社外ナビ、オーディオ、スピーカー、アンプ、バックカメラなどを取り付けるのが一般的でした。

本体だけでなく、配線、取付キット、周辺機器、工賃まで販売できます。

カー用品店にとっては、売上と利益を作りやすい分野でした。

現在のクルマでは、ディスプレイがエアコン、車両設定、安全装備、全周囲カメラなどと一体化しています。

規格サイズのオーディオを取り外し、好きな製品へ交換できる車種は減りました。

ナビはスマートフォンで代替できます。

音楽もCDやMDから配信サービスへ移りました。

売れる商品が減っただけではありません。

新しいナビやオーディオを試しにカー用品店へ行くという、来店理由自体がなくなりました。

スーパーオートバックスが弱くなったというより、スーパーオートバックスを支えていた高単価市場が、クルマの純正装備とスマートフォンへ吸収された面があります。

カスタムは規制によって終わったのか

カスタム文化が弱くなった理由として、車検や規制の厳格化も挙げられます。

確かに、規制の影響はあります。

2010年4月以降に製作された車両では、交換用マフラーに加速走行騒音への適合が求められ、性能確認済表示などを使った事前認証制度が導入されました。

大手カー用品店は法令順守や企業イメージを重視するため、保安基準に適合するか判断が分かれる商品や、極端な改造を扱いにくくなります。

ただし、規制だけでカスタム文化が終わったわけではありません。

保安基準に適合したホイール、マフラー、車高調、エアロ、シートなどは、現在も販売されています。

制度以上に影響が大きいのは、クルマ自体の複雑化です。

現在のクルマには、自動ブレーキ、レーンキープ、カメラ、レーダー、センサーなどが搭載されています。

バンパーやフロントガラス周辺の部品を交換した場合、センサーの調整やエーミングが必要になることがあります。

足回りの変更も、単に車高を下げて終わりではありません。

電子制御、安全装備、診断機、メーカー保証、保険まで含めて判断する必要があります。

昔は、部品を交換すれば作業が完了するケースが多くありました。

現在は、クルマ全体の制御を把握しなければ扱えません。

カスタムが禁止されたのではなく、大手量販店が低リスクで扱えるカスタムの範囲が狭くなったという整理が近いと思います。

トレンドの発信地が、店舗からスマートフォンへ移った

昔は、雑誌で商品を知り、スーパーオートバックスで実物を確かめる流れがありました。

現在は、YouTube、Instagram、X、みんカラ、CARTUNE、メーカーサイト、ECモールから装着事例を探せます。

マフラーの音、作業手順、失敗例、長期使用後の感想まで、店舗へ行かなくても調べられます。

価格もその場で比較できます。

特定車種の専用品が地域で月に一つしか売れなくても、ネットショップなら全国の注文を集められます。

実店舗で同じ品ぞろえを再現しようとすれば、販売頻度の低い商品を大量に抱えなければなりません。

クルマ好きが全員いなくなったわけではありません。

情報収集、買い物、交流が、店舗の外へ分散しました。

スーパーオートバックスに行かなければ分からなかった情報が、スマートフォンに移った。

これが、店舗のワクワク感を弱めた大きな理由です。

オートバックスが整備へ寄ったのは、経営として正しい

市場が縮小する中で、オートバックスはカー用品販売だけに依存せず、タイヤ、車検、整備、車販売へ事業を広げました。

この判断自体は間違っていません。

カーナビやカスタムパーツは、流行や新車販売に左右されます。

一方、タイヤ、オイル、バッテリー、車検、修理は、クルマを保有している限り繰り返し需要が発生します。

作業履歴を管理すれば、次回のオイル交換、タイヤ交換、点検、車検へつなげられます。

安定収益を作るなら、用品販売よりもメンテナンスです。

問題は、整備へ寄るだけでは、オートバックス独自の強みにならないことです。

イエローハットも、タイヤ、オイル、バッテリー、車検、コーティング、工賃を扱っています。

ジェームスにも、トヨタグループの部品供給力と安心感があります。

便利で安心なメンテナンス店というだけなら、3社の違いは小さくなります。

昔のオートバックスは、イエローハットやジェームスとは違う場所でした。

整備事業を強くする代わりに、その差まで小さくしてしまえば、規模の大きなカー用品店で終わります。

A PITは、昔の復活ではなく現代向けの再設計

2018年、スーパーオートバックス東京ベイ東雲は、A PIT AUTOBACS SHINONOMEへ改装されました。

店内にはTSUTAYA BOOKSTOREとスターバックスが入り、クルマ、旅行、アウトドア、家族、ガレージライフなどを組み合わせた店舗へ変わりました。

一方で、カスタムを完全に捨てたわけではありません。

HKS GATE TOKYO BAYを設け、86・BRZ、ジムニー、スバル車など、需要の強い車種へ商品と専門スタッフを集中させています。

開発中の部品やデモカーを展示し、メーカー担当者による相談会も開催しています。

これは、昔のスーパーオートバックスをそのまま復活させる戦略ではありません。

大量の商品を全方位で並べるのではなく、一般客向けの整備とライフスタイル売場を土台にしながら、需要の強いカスタム分野を専門区画として残す。

現在の市場規模と在庫効率を考えれば、こちらのほうが現実的です。

ただし、店舗がおしゃれになっただけでは、投資家としては評価できません。

イベントの来場者が、商品を購入したのか。

高単価の取付作業につながったのか。

その後の車検やメンテナンスまで獲得できたのか。

クルマ好きの熱量を、継続的な利益へ変えられているかが重要です。

数字では、イエローハットのほうが強い

2026年3月期のオートバックスセブンは、売上高2,800億円、営業利益137億円でした。

営業利益率は4.9%、ROEは6.2%です。

2027年3月期は、売上高3,000億円、営業利益150億円、ROE7.0%を計画しています。

一方、イエローハットの2026年3月期は、売上高1,712億円、営業利益150億円でした。

営業利益率は約8.8%です。

売上規模ではオートバックスのほうが大きい。

それでも営業利益では、イエローハットが上回っています。

事業構成が異なるため、利益率だけで単純に優劣を決めることはできません。

ただ、イエローハットのほうが、タイヤ、消耗品、工賃、車検を中心とするメンテナンス企業として、収益構造が分かりやすいのは確かです。

クルマ文化の発信地にはならなくても、生活圏の中で定期的に発生する需要を取り、効率よく利益を残す。

投資先としての完成度では、私はイエローハットを上に評価します。

配当は参考程度に

2026年7月14日時点の予想配当利回りは、オートバックスセブンが約4.0%、イエローハットが約3.7%です。

利回りだけならオートバックスのほうが少し高いものの、イエローハットには利益率の高さと増配傾向があります。

この記事は、現在の株価で買うかどうかを決めるものではありません。

配当利回りは参考程度にとどめ、事業構造と収益性を中心に判断します。

良い会社か

イエローハットは、事業の軸が明確です。

タイヤ、オイル、バッテリー、整備、車検という、クルマを保有している限り発生する需要を中心にしています。

2027年3月期の年間配当予想は68円です。

2026年3月期の62円から増配となり、中期経営計画では配当性向45%を目安としています。

一方、オートバックスの年間配当予想は60円です。

安定配当ではありますが、2022年3月期から基本的に60円が続いています。

配当の安定性は評価できます。

ただし、利益の成長に合わせて配当が伸びているとは言いにくい状況です。

高配当株として比べるなら、事業の収益性、配当の成長性、事業構造の分かりやすさでは、イエローハットが上です。

オートバックスには、全国の店舗網、ブランド認知、ピット、整備士、部品メーカーとの関係があります。

しかし、その資産が利益率やROEに十分表れていません。

良い資産を持っている会社ではあります。

現時点で、資産を効率よく利益へ変えている会社とは判断しません。

投資家として追うところ

オートバックスで押さえるのは、売上高の大きさではありません。

国内オートバックス事業の営業利益率。

車検、整備、工賃収入の伸び。

買収した車販売、ディーラー、中古車事業の採算。

A PITやカスタム専門店が、継続利用につながっているか。

この4点です。

M&Aで会社を買えば、連結売上高は増えます。

低利益率の事業を集めただけなら、企業価値は上がりません。

A PITも、来場者数やSNSでの話題だけでは判断できません。

高単価商品の販売、取付工賃、車検、次のメンテナンスまでつながって初めて、ブランドが利益に変わります。

昔のスーパーオートバックスを再現する必要はありません。

昔の強みだった専門性、イベント、情報発信、コミュニティーを、現在の整備事業とつなげられるか。

ここがオートバックスの勝負どころです。

まとめ

昔のスーパーオートバックスがすごかったという感覚は、単なる思い出補正ではありません。

当時の店舗は、カー用品店、カスタムショップ、展示会、雑誌、イベント会場、飲食施設を一つにまとめた、クルマ文化の発信地でした。

用事がなくても行きたくなる。

店内を回るうちに、次に付けたいものが見つかる。

その体験が、商品販売と取付工賃につながっていました。

時代は変わりました。

カー用品市場は縮小し、カーナビやオーディオは純正装備へ移り、商品情報はインターネットへ移りました。

クルマの電子制御化によって、カスタムや整備に必要な設備と知識も増えています。

オートバックスが、タイヤ、車検、整備、車販売へ軸足を移したのは正しい判断です。

ただし、整備店へ寄せるだけなら、利益率の高いイエローハットとの差は埋まりません。

オートバックスには、昔から積み上げてきたブランド、店舗網、専門人材、クルマ好きとの接点があります。

その資産を持ちながら、営業利益率は5%前後、ROEは6%台です。

私は、ここを厳しく判断します。

現時点では、事業の質と配当成長でイエローハットを上に評価します。

オートバックスは、知名度や懐かしさだけで評価する会社ではありません。

整備で安定収益を確保しながら、クルマ好きが再び集まる理由を作り、その熱量を工賃、継続利用、利益率へ変えられるかを追う会社です。

オートバックスが復活したと判断できるのは、昔のように店内が派手になったときではありません。

クルマ好きが再び集まり、その結果が利益率とROEに表れたときです。

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