キャッシュレスの時代に、1円玉を1億枚もつくる理由
キャッシュレス決済が広がるなか、1円玉が11年ぶりに量産されます。当初は2,000万枚だった製造計画が、1億3,200万枚へ引き上げられました。
近年、流通用の1円玉はほとんど造られていませんでした。それが突然、1億枚を超える規模です。
「キャッシュレスの時代に、なぜ今さら1円玉を増やすのか」
一見すると、現金払いが増えているようにも見えます。しかし、今回の量産は現金回帰ではありません。
市中で必要な1円玉を、足りなくなる前に補充するためです。
キャッシュレスが増えても、1円単位の取引は残る
キャッシュレス決済が広がっても、少額の現金取引までなくなったわけではありません。コンビニや個人商店などでは、今も現金が使われています。
298円の商品を現金で買えば、300円から2円のおつりが必要です。現金を使う人が以前より減っても、現金払いが残る限り、店には1円玉が必要になります。
また、キャッシュレス決済の普及を示す数字は、主に支払った金額をもとにしています。高額な商品をカードで買えば比率は大きく上がりますが、少額の現金取引が同じ割合で減ったとは限りません。
1億枚でも、全体の約0.4%
1億3,200万枚と聞くと、かなりの量に感じます。しかし、市中に流通している1円玉は約364億枚です。
今回造られる1円玉は、全体の約0.4%にすぎません。1円玉を大幅に増やすというより、長く製造を抑えてきた分を一部補充する規模です。
過去には、消費税の導入とバブル景気が重なった1990年に、約27億7,000万枚の1円玉が造られました。今回の20倍以上です。
1億枚という数字だけを見ると大規模に感じますが、1円玉全体から見れば、それほど大きな増加ではありません。
家にある1円玉は、店では使えない
1円玉が全国に何枚あるかだけでなく、どこにあるかも重要です。財布や貯金箱に何十枚入っていても、使わなければ店や銀行には戻りません。
たまに現金で買い物をして小銭を受け取り、そのあとはキャッシュレス決済に戻る。こうした使い方が増えると、1円玉は家庭にたまりやすくなります。
硬貨そのものは存在していても、店がおつりとして使える1円玉は増えません。キャッシュレス化によって、硬貨が店や銀行へ戻る速さまで落ちている可能性があります。
「家には余っているのに、流通では足りなくなる」
そんなことも起こります。
古い1円玉は回収されている
硬貨は、一度造れば永久に使えるわけではありません。傷んだものや変形したものは市中から回収され、造幣局へ戻されます。
これまで1円玉の流通枚数は減少傾向にありました。キャッシュレス化などで需要が減り、新しく造らなくても足りていたからです。
ところが、2024年度以降は、世の中で使われる枚数の減少が下げ止まりました。1円玉の需要が残る一方で、古くなった硬貨の回収は続きます。
新しい1円玉を補充せず、回収だけを進めれば、店頭のおつりなどに使える枚数が不足するおそれがあります。そのため、当初2,000万枚だった製造計画が、1億3,200万枚へ引き上げられました。
需要が急増したというより、減らし続けてきた流通量を必要な水準に保つための増産です。
なお、食品の消費税減税を見越した増産ではないかという見方もありますが、財務省は否定しています。市中の流通枚数と、日本銀行にある在庫を確認したうえでの判断です。
まとめ:現金回帰ではなく、必要な分の補充
1円玉を1億3,200万枚造るからといって、現金払いへ逆戻りしているわけではありません。キャッシュレス化が進んでも、少額の現金取引は残っています。
家庭にたまって動かない1円玉もあり、古くなった硬貨は回収されます。今回の量産は、その不足を防ぐための補充です。
1億枚という数字は大きく見えますが、流通している1円玉全体の約0.4%にすぎません。
1円玉は、以前ほど使われなくなりました。
それでも、まだ必要なくなったわけではありません。
