見出し画像

iPhoneの「目」に、ソニーがいる。

iPhoneは、Appleが作るスマートフォンです。

本体にはAppleのロゴが入り、Appleが設計したチップとiOSが使われています。

カメラを起動しても、ソニーの名前が表示されることはありません。

それでも、iPhoneのカメラを支える重要な部品には、長年ソニーの技術が使われてきました。

現在販売されているiPhone 17 Pro Maxを分解したTechInsightsの調査でも、フロントカメラからソニー製のイメージセンサー「IMX914」が確認されています。

一世代前のiPhone 16 Proシリーズでも、メインカメラにソニー製の「IMX903」が使われていました。

すべてのiPhone、すべてのカメラがソニー製という意味ではありません。

ただ、最新世代でも、iPhoneの「目」の一部をソニーが担っていることは確かです。

私は、スマートフォンになってからソニーを使い始めたわけではありません。

携帯電話にジョグダイヤルが付いていた頃から、ソニーの端末を使ってきました。

小ささを突き詰めたpreminiも使いました。

パソコンならVAIOのRXやRZ。

車載オーディオならXplod。

現在のスマートフォンは、Xperia 5 IVです。

かなり長いソニー信者だと思います。

だからこそ、少し複雑な気持ちになります。

ソニーのスマートフォンは、世界の主役ではありません。

Xperia 5シリーズも、実質的にラインアップから姿を消しました。

それでも、世界で売れているiPhoneのカメラには、ソニーの技術が入っています。

完成品では苦戦していても、その中身では世界を支えている。

これも、現在のソニーの姿です。


結論から言うと

iPhoneの強さは、Appleがすべての部品を自社で作っていることではありません。

ソニーのイメージセンサー。

TSMCが製造する半導体。

Corningと共同開発したカバーガラス。

通信を支えるBroadcomなどの部品。

Face IDに使われるCoherentのレーザー技術。

世界中の優れた技術を選び、一つの商品へまとめています。

一方、ソニーの強さは、必ずしもXperiaの販売台数だけでは測れません。

ソニーは、スマートフォンのカメラに欠かせないイメージセンサーで、世界売上シェアの半分以上を占めています。

2024年の売上高シェアは53%。

ソニーは2025年について56%を見込んでいました。

良い技術を作る会社と、その技術を最終製品として顧客へ届ける会社。

どちらが上という話ではありません。

得意な役割が違います。

Appleは、世界の技術をiPhoneという体験へまとめる。

ソニーは、ブランド名が表に出なくても、カメラの土台となる技術を提供する。

iPhoneの中身を知ると、企業の強さは完成品の販売台数だけでは測れないことが分かります。

イメージセンサーは、スマートフォンの「目」

スマートフォンのカメラには、レンズの奥にイメージセンサーがあります。

レンズから入ってきた光を受け取り、電気信号へ変換する半導体です。

人間の目でいえば、光を感じる網膜に近い役割を持ちます。

この信号がデジタル情報へ変換され、スマートフォンの処理を経て、一枚の写真になります。

暗い場所でも明るく撮れるか。

明るい空と暗い建物を同時に写せるか。

動く人物へ素早くピントを合わせられるか。

細かな部分を残しながら、ノイズを抑えられるか。

カメラの性能を左右する重要な部分です。

スマートフォンでは、薄い本体の中へ小さなセンサーを収めなければなりません。

一眼カメラのような大きなセンサーやレンズは使えません。

小さな面積で、より多くの光を受け取り、より速く信号を処理する必要があります。

ソニーは、光を受ける部分と信号を処理する回路を別の層へ分ける積層型CMOSイメージセンサーを開発してきました。

現在は、受光部と画素トランジスタを別々の基板層へ配置する「2層トランジスタ画素」などによって、小さな画素でも多くの光を受け、ノイズを抑える技術を伸ばしています。

写真を撮るとき、利用者がソニーの技術を意識することはありません。

シャッターボタンを押せば、普通に写真が残る。

暗い場所でも、ある程度きれいに写る。

子どもが動いていても、顔へピントが合う。

その「普通」を、裏側の半導体が支えています。

ソニーのセンサーを使えば、同じ写真になるわけではない

ここで疑問が出ます。

iPhoneにソニーのイメージセンサーが使われているなら、XperiaとiPhoneの写真は同じになるのか。

もちろん、同じにはなりません。

イメージセンサーは重要ですが、カメラの一部です。

レンズを通った光をセンサーが受け取る。

その信号を半導体が処理する。

複数の写真を合成する。

手ぶれやノイズを抑える。

人物、料理、空、夜景などを判別する。

色、明るさ、輪郭を整え、最終的な写真として保存する。

スマートフォンの写真は、こうした処理の積み重ねで作られます。

同じセンサーを使っても、画像処理やソフトウェアが違えば、写真の色や明るさは変わります。

iPhoneらしい写真に仕上げているのは、Appleが設計するチップ、画像処理、カメラアプリ、OSまで含めた全体の調整です。

ソニーが「目」を作り、Appleが見えた情報を一枚の写真へ仕上げる。

どちらか一方だけでは、現在のiPhoneカメラにはなりません。

iPhoneは、Appleだけで作られていない

Appleが公表した主要サプライヤーの一覧には、ソニーだけでなく、TSMC、Corning、Broadcom、Qualcomm、村田製作所、京セラ、TDK、キオクシアなど、多くの企業が並んでいます。

この一覧は、2023年度にAppleが材料、製造、組み立てへ支出した金額の98%を占める主要サプライヤーを掲載したものです。

たとえば、AppleはiPhoneなどに使うチップを自社で設計しています。

ただし、設計した半導体を実際に製造する工場は、主にTSMCが担います。

製造された半導体を、電子機器へ組み込める形に仕上げるパッケージ工程では、Amkorなどの技術が使われます。

Appleは、TSMCのアリゾナ工場で製造されたAppleシリコンを、Amkorの施設でパッケージすると説明しています。

画面を守るCeramic Shieldは、AppleとCorningの共同開発です。

初代iPhoneの時代から両社の関係は続いており、ガラスの強度と透明性を両立する技術が、iPhoneの前面を支えています。

無線通信にも外部企業の技術が入っています。

Appleは、Broadcom、Qorvo、Skyworksなどが通信機器を供給していると説明しています。

Face IDでは、Coherentが作るVCSELと呼ばれるレーザー部品が使われています。

iPhoneの箱には、こうした会社の名前は大きく書かれていません。

それでも、どれか一つが欠ければ、同じiPhoneは作れません。

それでも、なぜAppleの製品になるのか

ソニーがカメラのセンサーを作る。

TSMCがチップを製造する。

Corningがガラスを作る。

Broadcomが通信を支える。

それでも、利用者が買うのは、

「世界中の部品を集めたスマートフォン」

ではありません。

iPhoneを買います。

Appleは、部品を集めるだけの会社ではありません。

どの技術を採用するか決める。

専用のチップを設計する。

本体の形を決める。

カメラ、画面、電池、通信機能を一台へ収める。

iOSとアプリを用意する。

製品としての使いやすさを整える。

価格を決め、世界中で販売する。

優れた技術を、利用者がお金を払う商品へ変えています。

ソニーのイメージセンサーが高性能でも、それだけでiPhoneは完成しません。

反対に、Appleに優れた設計力やブランドがあっても、世界各社の部品技術がなければ製品にはできません。

技術を作る力と、技術を束ねる力。

iPhoneは、その両方から生まれています。

ソニーのスマートフォンが売れなくても、技術まで弱いわけではない

Xperiaの販売規模だけを基準にすると、ソニーはスマートフォン市場で存在感を失った会社に映ります。

ただ、ソニーの半導体事業を確認すると、違う姿が出てきます。

ソニーのイメージング&センシング・ソリューション事業では、2024年度の売上構成の75%をモバイル向けイメージセンサーが占めていました。

ソニー自身も、モバイル向けセンサーを事業全体の主要な収益源と位置づけています。

2025年度の同事業は、売上高が2兆1,515億円。

営業利益は3,573億円となり、再編費用などを計上しながら過去最高を更新しました。

モバイル向けイメージセンサーの販売増加、製品構成の改善、販売数量の増加が利益を押し上げています。

Xperiaは、ソニーの技術を消費者へ直接届ける完成品です。

イメージセンサーは、他社の完成品へ組み込まれる部品です。

同じソニーでも、商売の形はまったく違います。

完成品では、ブランド、OS、アプリ、販売網、価格、買い替えの仕組みまで競争になります。

部品では、画質、消費電力、サイズ、量産能力、価格が問われます。

ソニーはスマートフォンの完成品では小さな存在になりました。

一方、カメラの中核部品では、世界のスマートフォン市場を支える会社です。

これは矛盾ではありません。

得意な場所が違うだけです。

技術力が高い会社が、完成品でも勝てるとは限らない

良い部品を作れることと、売れる完成品を作れることは別です。

技術が優れていても、価格が高すぎれば売れません。

利用者に違いが伝わらなければ、選ばれません。

使いやすいソフトウェアや、長く使えるサービスがなければ、製品全体の評価は上がりません。

Xperia 5は、私にとって非常に良いスマートフォンでした。

ただ、良い商品だったことと、ソニーが利益を残しながら作り続けられることは同じではありません。

前の記事で書いたように、Xperia 5は、

高性能。

持ちやすいサイズ。

Xperia 1より抑えた価格。

この三つを成立させることが難しくなり、ラインアップから姿を消しました。

一方、イメージセンサーは、iPhoneをはじめ多くのスマートフォンへ供給できます。

自社の完成品だけでなく、競合他社の商品が売れても、ソニーの事業機会になります。

Xperiaだけに技術を使うより、世界中のスマートフォンへ供給したほうが、開発費や工場への投資を回収できる市場は大きくなります。

技術を自社製品だけに閉じ込めず、他社にも売る。

その結果、ソニーの名前が表に出なくても、事業として大きな収益を生みます。

ただし、部品会社にも弱さはある

世界シェアが高ければ、無条件に安心できるわけではありません。

部品を供給する側は、最終製品を売る会社の販売動向に左右されます。

大口顧客の新製品が売れなければ、センサーの販売数量も減ります。

顧客が別の供給会社を選べば、受注を失うこともあります。

性能を上げるためには、研究開発だけでなく、大規模な工場投資も必要です。

ソニーは2025年度の決算で、モバイル向けセンサーが大口顧客への出荷によって想定を上回ったと説明しました。

裏を返せば、大きな顧客への販売が業績を動かす事業でもあります。

強い技術を持っているか。

競合が簡単に追いつけないか。

顧客を増やせるか。

工場へ投じた資金を利益として回収できるか。

投資家としてソニーを評価するときは、世界シェアだけでなく、利益率、投資額、顧客構成まで追う必要があります。

「iPhoneに使われているから安心」で終わる話ではありません。

私は、それでもXperiaを応援したい

完成品として比べれば、iPhoneのほうが無難なのだと思います。

利用者が多い。

周辺機器も豊富。

OSの更新も長く続く。

家族や知人とのデータ共有もしやすい。

Xperiaを買い続ける理由を、性能や価格だけで説明するのは、以前より難しくなっています。

それでも、ソニーがスマートフォンを作っているうちは、私はXperiaを応援したいと思っています。

合理性だけではありません。

ジョグダイヤルが付いた携帯電話。

premini。

VAIO。

ウォークマン。

Xplod。

長く使ってきた製品の延長に、Xperiaがあります。

万人に合わせるのではなく、少し尖ったものを作る。

ほかのメーカーが削ったイヤホン端子やmicroSDカードを残す。

カメラや音へのこだわりを前に出す。

そうしたソニーらしさが好きです。

ただ、ソニーがスマートフォンから完全に撤退したら、私は間違いなくiPhoneへ移ると思います。

GalaxyでもPixelでもなく、iPhoneです。

Appleの製品としての完成度が高いことも理由です。

そして、そのiPhoneの中にも、ソニーが長年積み上げてきた技術がある。

そう考えると、少しだけ納得できます。

まとめ

iPhoneは、Appleだけの技術で作られているわけではありません。

カメラにはソニー。

半導体製造にはTSMC。

パッケージにはAmkor。

ガラスにはCorning。

通信や認証にも、多くの企業の技術が使われています。

Appleの強さは、それらを一つの商品へまとめ、iPhoneという体験に変えることです。

ソニーの強さは、自社の名前が表に出なくても、多くのスマートフォンに必要とされる「目」を作れることです。

Xperiaの販売規模が小さいからといって、ソニーのスマートフォン技術まで弱いわけではありません。

完成品を売る力と、部品を作る力は別です。

良い技術を持つ会社と、その技術を最も上手に商品へまとめる会社も、同じとは限りません。

投資家としては、Xperiaへの愛着と、ソニーの事業評価を分けます。

スマートフォン事業が厳しいことは、冷静に受け止める。

その一方で、イメージセンサーが世界でどれだけ使われ、どれだけ利益を生んでいるかも把握する。

消費者としては、もう少し感情が入ります。

ソニーがスマートフォンを作っているうちは、私はXperiaを応援したい。

そして、いつか作らなくなったら、ソニーの「目」が入ったiPhoneを選ぶ。

長くソニー製品を使ってきた私にとっては、それが一番自然な乗り換えなのだと思います。

いいなと思ったら応援しよう!