SaaSの死でIT株は買い場なのか。AIに壊される会社、AIを取り込む会社
「SaaSの死」という言葉が出ています。
少し大げさにも聞こえます。
でも、市場が気にしているポイントはあります。
SaaSとは、インターネット経由で使うソフトウェアサービスのことです。
たとえば、営業管理、会計、人事、チャット、顧客対応、プロジェクト管理などを、会社が月額料金で使うようなサービスです。
昔のようにソフトを買ってパソコンに入れるのではなく、クラウド上のサービスにログインして使います。
企業向けSaaSでは、社員1人につき月額いくら、という料金体系も多くあります。
使う人数が増えるほど、会社が払う利用料も増える仕組みです。
このモデルに対して、AIエージェントが脅威になるのではないかと言われています。
AIエージェントとは、人の指示を受けて、調べる、入力する、集計する、返信する、処理する、といった作業を進めるAIのことです。
今まで人がSaaSの画面を開いてやっていた作業を、AIが代わりに進める。
そうなると、従来型SaaSの価値は変わります。
ただ、結論から言うと、SaaSが全部終わるとは考えていません。
厳しくなるのは、今までの形のまま変われないSaaSです。
人に作業画面を使わせるだけの会社は、AIに削られます。
一方で、企業データや業務フローを押さえ、AIを自社サービスに組み込める会社は残ります。
IT株が買い場かどうかは、株価が下がったかでは決められません。
AIで価値が削られる会社なのか。
AIによって価値が増える会社なのか。
ここで差が出ます。
なぜSaaSが売られているのか
今までのSaaSは、人が画面を開いて作業する前提でした。
顧客情報を入力する。 案件の進捗を更新する。 請求データを処理する。 問い合わせに返信する。 タスクを登録する。 レポートを作る。 社内承認を回す。
こうした作業を、社員がSaaS上で行います。
だから、会社は使う人数分の利用料を払います。
社員が増える。 利用部門が増える。 契約数が増える。 SaaS企業の売上も増える。
これが、従来型SaaSの分かりやすい成長モデルでした。
でも、AIエージェントが業務を代行できるようになると、企業側の考え方が変わります。
この作業は、本当に人が画面を開いてやる必要があるのか。 人数分の契約が必要なのか。 AIが裏側で処理できるなら、今までのSaaS画面はどこまで必要なのか。
この疑問が出てきます。
SaaSの死と言われているのは、ソフトウェアが不要になるという話ではありません。
人が操作する前提のSaaSが、今までと同じ料金と成長率を維持できるのか。
ここが疑われています。
AIに削られやすいSaaS
AIに削られやすいのは、単純作業を画面で処理させるだけのSaaSです。
入力する。 転記する。 検索する。 集計する。 定型文を返す。 進捗を更新する。
こうした作業は、AIエージェントが得意になりやすい分野です。
もちろん、すぐに全部が置き換わるわけではありません。
企業システムには、権限、監査、セキュリティ、社内ルール、例外処理があります。
現場では、人が判断しないと進まない作業も残ります。
ただし、作業の一部がAIに置き換わるだけでも、SaaS企業の売上モデルには影響が出ます。
今まで10人分の契約が必要だったものが、AIを使えば5人分で済む。
今まで人が毎日触っていた画面を、AIが裏側で処理する。
こうなると、使う人数に応じて売上が増えるモデルは弱くなります。
特に厳しいのは、顧客データを深く押さえていない会社です。
業務の中心ではなく、周辺作業を便利にしているだけの会社も厳しいです。
AIを入れても、料金を上げる理由を作れない会社も苦しくなります。
単純に言えば、作業を便利にするだけのSaaSは削られます。
業務そのものを押さえていないSaaSは、AI時代に価格を守れなくなってきます。
AIを取り込めるSaaS
一方で、AI時代でも残るSaaSはあります。
強いのは、企業データと業務フローを押さえている会社です。
顧客情報。 取引履歴。 請求情報。 営業活動。 サポート履歴。 社内承認。 在庫や生産データ。 人事や労務データ。
こうしたデータを持っているSaaSは、AIにとって土台になります。
AIが仕事をするには、判断材料が必要です。
どの顧客に連絡するのか。 どの案件を優先するのか。 どの問い合わせを処理するのか。 どの書類を作るのか。 どの数字をもとに判断するのか。
この情報がSaaSの中にあるなら、そのSaaSは単なる入力画面ではありません。
AIを動かす基盤になります。
ここが大きな違いです。
AIに置き換えられるSaaSは弱いです。
AIを動かす土台になるSaaSは残ります。
さらに、料金体系も変わっていきます。
これまでは、使う人数に応じた課金が中心でした。
これからは、処理件数、利用量、削減できた作業、成果に近い価値へ課金が移ります。
単に画面を使わせる会社ではなく、業務をどれだけ減らせるかを売る会社。
ここに変われる会社は、AI時代でも価値を出せます。
IT株は買い場なのか
SaaSの死という言葉でIT株が売られると、買い場に見えることがあります。
今まで成長株として高く評価されていた会社が下がる。
AI不安でまとめて売られる。
そうなると、優良なIT株まで安くなっているように感じます。
ただ、下がったから買うのは危ないです。
同じ下落でも、中身が違います。
一時的なAI不安で売られているだけなら、買い場になることがあります。
でも、事業モデルそのものが削られているなら、安く見えても買いません。
私なら、まずこの5つを確認します。
・利用人数や契約数が伸びているか
・解約率が悪化していないか
・単価を維持、または引き上げられているか
・AI投資で営業利益率が大きく落ちていないか
・AI機能が売上や継続率に効いているか
ここが崩れている会社は、株価が下がっても買いません。
利用人数が伸びない。
解約率が上がる。
単価が下がる。
AI対応のコストだけ増える。
営業利益率が落ちる。
この形なら、SaaSの死という言葉に関係なく、投資対象として慎重に扱います。
IT株は期待で買われやすいです。
だから、期待が剥がれると大きく下がります。
その下げが一時的な不安なのか。
それとも、事業モデルの変化を織り込み始めた下げなのか。
ここを間違えると、成長株の下落に巻き込まれます。
買い場として考える条件
IT株を買い場として考えるなら、条件があります。
企業データを持っていること。
業務の中心に入り込んでいること。
顧客が簡単に乗り換えられないこと。
AIを使うほど、サービスの価値が上がること。
料金体系を、人数分の契約から利用量や成果に近づけられること。
この条件がある会社は、AI時代でも強いです。
逆に、作業画面を提供しているだけの会社は避けます。
人が入力すること。 人が検索すること。 人が集計すること。 人が定型処理をすること。
ここに価値が寄っている会社は、AIに削られる可能性が高いです。
SaaSは終わるのではなく、形が変わります。
画面を売るSaaSから、業務を減らすSaaSへ。
人数分の契約から、利用量や成果に近い課金へ。
人が操作する道具から、AIが仕事を進める土台へ。
この変化に対応できる会社だけを、買い場として考えます。
まとめ
SaaSの死という言葉だけで、IT株を全部避ける必要はありません。
ただし、下がってきているので何でも買い場と考えるのも違います。
AIエージェントが広がると、人が画面を開いて作業する前提のSaaSは厳しくなります。
入力、集計、検索、定型処理を便利にするだけのサービスは、AIに削られます。
一方で、企業データや業務フローを押さえている会社は残ります。
AIを自社サービスに組み込み、作業削減や成果に近い価値を出せる会社も残ります。
私は、SaaSの死を「IT株を全部避けるニュース」とは考えていません。
AI時代に残るIT企業を選び直すニュースだと考えています。
だから、見るべきなのは株価の下落率ではありません。
AIで壊される会社なのか。
AIを取り込んで強くなる会社なのか。
ここです。
株価が下がっただけでは買いません。
AI不安で売られても、利用人数、単価、解約率、営業利益率が崩れていない会社なら候補になります。
逆に、AI対応のコストだけ増えて、売上や利益に返ってこない会社は避けます。
SaaSは終わるのではなく、形が変わります。
その変化についていけない会社は厳しいです。
でも、AIを取り込んで、企業のデータと業務の中心に残れる会社は強くなります。
IT株が買い場かどうかは、そこまで確認してから判断します。
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