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Xperia 5は、なぜ消えたのか。「ちょうどいい商品」の難しさ

私は、スマートフォンになってからXperiaを使い始めたわけではありません。

もっと前、携帯電話にジョグダイヤルが付いていた頃から、ソニーの端末を使ってきました。

小ささを突き詰めたpreminiも、その一つです。

手の中に収まる小さな本体。

少し尖ったデザイン。

万人に合わせるより、使う人の感覚に強く刺さる。

当時のソニーには、そんな商品が多かったように思います。

パソコンならVAIOのRXやRZ。

車載オーディオならXplod。

携帯電話がスマートフォンに変わっても、選んできたのはXperiaでした。

現在使っているのは、Xperia 5 IVです。

大きすぎず、片手でも持ちやすい。

それでいて、処理性能は当時の最上位機種と同じクラスです。

イヤホン端子もmicroSDカードもあり、バッテリーは5,000mAh。

Xperia 1は大きくて高い。

Xperia 10は持ちやすいものの、処理性能やカメラでは物足りない。

その間を埋めていたXperia 5は、私にとって一番ちょうどいいシリーズでした。

ところが、2023年に発売されたXperia 5 Vを最後に、後継機は出ていません。

ソニーはシリーズの終了を正式に発表したわけではありません。

ただ、現在のラインアップはXperia 1とXperia 10が中心です。

Xperia 5は、実質的に姿を消した状態です。

良い商品だったのに、なぜ残せなかったのか。

結論から言うと、Xperia 5は人気がなかったから単純に消えたのではありません。

高性能、小型、手の届きやすい価格。

この三つを同時に成立させることが難しくなり、商品ラインアップの中で居場所を失ったのだと思います。


Xperia 5は、ただの小さい廉価版ではなかった

Xperia 5シリーズは、Xperia 1の性能を大きく落とした廉価版ではありませんでした。

Xperia 5 IVには、当時のXperia 1 IVと同じ世代の高性能チップが搭載されています。

Xperia 5 Vも、Xperia 1 Vと同じ世代のチップを採用しました。

最上位に近い処理性能を、幅の細い本体へ収めたのがXperia 5です。

イヤホン端子。

microSDカード。

前面ステレオスピーカー。

カメラ専用のシャッターボタン。

防水、防塵。

ワイヤレス充電。

ほかのメーカーが削っていった機能を残しながら、高性能も維持していました。

利用者からすれば、完成度の高い商品です。

ただ、メーカーにとっては作るのが簡単な商品ではありません。

小さいから安く作れるとは限らないからです。

高性能なチップを小さな本体へ入れれば、熱を逃がす設計が難しくなります。

大容量バッテリーやカメラ、スピーカーなども限られた空間へ収めなければなりません。

Xperia 5 IVは、発熱の強さを指摘されることも多い機種でした。

小型の高性能機は、部品が少なくて済む商品ではありません。

むしろ、性能を維持するために設計の難易度が上がります。

高性能を残すと、高くなりすぎる

ソニーがXperia 5の後継機を出さなかった理由として挙げたのは、大画面を求める人が増えたことと、価格です。

Xperia 5を検討しながら購入しなかった人では、価格を理由に挙げる割合が増えていました。

Xperia 5 VのSIMフリーモデルは、発売時に13万9,700円でした。

同時期のXperia 1 Vは19万4,700円。

約5万5,000円の差があります。

Xperia 1と比べれば安い。

ただ、スマートフォンとして14万円は十分に高額です。

一方、Xperia 10シリーズは7万円前後で買える機種でした。

利用者の選択は、二つに分かれます。

14万円を出すなら、もう少し足してXperia 1を買う。

そこまで性能を求めないなら、Xperia 10でよい。

真ん中にあるXperia 5は、多くの人に合いそうに見えます。

実際には、上位機種と普及機の両方から挟まれます。

性能を落とさずに価格を下げれば、利益が薄くなる。

価格を維持すれば、買える人が限られる。

機能を削れば、Xperia 5を選ぶ理由が弱くなる。

高性能を残すと高すぎる。

安くすると、Xperia 5ではなくなる。

この矛盾を解消できなくなりました。

Xperia 1が、Xperia 5の役割を取り込んだ

ソニーは、Xperia 5シリーズからXperia 1 VIへ買い替える人が増えていると説明しています。

既存のXperia利用者へ、Xperia 1 VIへの移行を促す「Go to 1」というキャンペーンも実施しました。

名前の通り、Xperia 5の利用者をXperia 1へ移す方向です。

Xperia 1 VIも、それまでのXperia 1から変わりました。

細長い21対9の画面をやめ、一般的なスマートフォンに近い比率へ変更。

4Kディスプレイもやめ、電池持ちと日常での使いやすさを重視しました。

以前のXperia 1は、映像やカメラへのこだわりを強く出した、かなり尖った商品でした。

Xperia 1 VIは、その尖りを少し抑え、幅広い人が使える高性能機へ変わっています。

Xperia 5が担っていた、

「高性能だけれど、普段使いもしやすい」

という役割の一部を、Xperia 1へ移したとも取れます。

Xperia 5を別に開発しなくても、Xperia 1で利用者を受け止められる。

ソニーは、そう判断したのでしょう。

ただし、Xperia 1 VIの幅は74ミリです。

Xperia 5 Vは68ミリでした。

数字では6ミリの差ですが、片手で持った感覚はかなり違います。

性能や電池持ちは引き継げても、Xperia 5の持ちやすさまでは引き継げていません。

Xperia 5 Vで、シリーズの立ち位置がぼやけた

最後のXperia 5 Vにも、シリーズの難しさが表れていました。

Xperia 5 IVまでは、

超広角。

広角。

望遠。

三つのカメラを搭載していました。

Xperia 5 Vでは、独立した望遠カメラがなくなり、2眼構成になりました。

処理性能は最上位クラスです。

カメラのメインセンサーにも、Xperia 1 Vと共通する技術が使われています。

ただ、商品としては、

高性能ではある。

全部入りではない。

それでも価格は高い。

という位置になりました。

以前のXperia 5には、

「Xperia 1に近い機能を、小さい本体で使える」

という分かりやすさがありました。

望遠カメラがなくなったXperia 5 Vでは、その説明が少し難しくなります。

若い世代や、写真や動画を気軽に楽しみたい人を意識した商品へ変えようとしていました。

しかし、その市場にはiPhone、Pixel、Galaxyなどの強い競合がいます。

従来の利用者が求めていたのは、カジュアルな高性能機というより、小さなXperia 1だったのではないでしょうか。

Xperia 5 Vが悪い商品だったわけではありません。

ただ、シリーズの個性は薄くなっていました。

Xperiaの販売規模では、3シリーズを維持しにくい

ここからは、ソニーが明確に説明した理由ではなく、商品構成からの推測です。

Xperia 5を作るには、Xperia 1と同じチップを使うだけでは済みません。

本体サイズが変われば、画面、基板、アンテナ、放熱、カメラ配置も変わります。

各国や通信会社に合わせた試験や認証も必要です。

販売後は、修理部品やソフトウェア更新にも対応しなければなりません。

販売台数が多ければ、開発費を回収できます。

しかし、Xperiaの販売規模で、

Xperia 1。

Xperia 5。

Xperia 10。

三つのシリーズを毎年開発する負担は軽くありません。

しかも、Xperia 5の利用者がXperia 1へ移るなら、Xperia全体の販売台数が増えたわけではありません。

同じソニーの商品同士で顧客を分けているだけです。

それなら、価格が高く、利益も確保しやすいXperia 1へ開発資源を集める。

持ちやすさと価格を求める人には、Xperia 10を用意する。

会社の経営判断としては合理的です。

「ちょうどいい商品」は、会社には難しい

商品は多いほど、顧客の要望へ細かく応えられるように思えます。

高価格の商品。

中価格の商品。

低価格の商品。

すべてそろえれば、取りこぼしを減らせそうです。

ただ、種類が増えれば、開発、在庫、販売促進、修理部品の負担も増えます。

似た商品が並べば、自社の商品同士で顧客を奪い合います。

特に難しいのが、真ん中の商品です。

価格を下げれば利益が減る。

価格を維持すれば販売台数が減る。

上位機種との差を広げれば、魅力が薄くなる。

差を小さくすれば、上位機種が売れなくなる。

利用者にとっての「ちょうどいい」は、会社にとっても「ちょうどいい」とは限りません。

Xperia 5は、その典型だったのだと思います。

商品を減らせば、顧客まで減ることがある

ソニーはXperia 5を外すことで、ラインアップを分かりやすくしました。

高性能ならXperia 1。

価格を抑えるならXperia 10。

会社としては説明しやすい構成です。

ただ、利用者側には穴が残ります。

Xperia 1は大きくて高い。

Xperia 10では性能が足りない。

Xperia 5を使ってきた人が、必ず1か10へ移るとは限りません。

Pixel。

Galaxy。

iPhone。

小さくて高性能な機種を求め、他社へ移る人も出ます。

商品を減らせば、開発効率は上がります。

一方で、ブランドを長く使ってきた顧客まで失うことがあります。

短期的な利益だけなら、商品を集約したほうがよい。

長期では、その判断によってブランドとの接点が切れないかも問われます。

投資家として企業を分析するとき、商品数を減らしただけで効率化と評価するのは早い。

減らした商品の利用者が上位機種へ移ったのか。

普及機へ移ったのか。

他社へ流れたのか。

その後まで追わなければ、本当に正しい商品整理だったかは分かりません。

まとめ

Xperia 5は、悪い商品だったから消えたのではありません。

最上位に近い性能。

片手で持ちやすいサイズ。

Xperia 1より抑えた価格。

この三つを同時に成立させることが難しくなりました。

性能を残せば、価格が上がる。

価格を下げるために機能を削れば、Xperia 5らしさが薄くなる。

Xperia 1は、より日常で使いやすい高性能機へ変わりました。

Xperia 10は、持ちやすさと価格を受け持っています。

その間で、Xperia 5だけが担当する役割が小さくなりました。

ソニーの経営判断としては理解できます。

ただ、preminiの頃から小さなソニー端末を選び、今もXperia 5 IVを使っている私には、残念な判断です。

Xperia 1は大きく、価格も高い。

Xperia 10では、Xperia 5の代わりにはなりません。

一番ちょうどいいと思っていた商品がなくなり、次に何を買えばよいのか分からない。

これは、商品を整理した会社が顧客へ残した問題です。

良い商品か。

売れる商品か。

利益を残せる商品か。

会社にとって残す価値がある商品か。

同じではありません。

Xperia 5が消えたのは、求める人がいなかったからではない。

その人数と価格では、高性能な小型機を作り続ける商売が成立しにくくなったからです。

自分にとって一番ちょうどいい商品が、会社にとっては一番残しにくい。

Xperia 5の終わりから受け取るのは、そこです。

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