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世代交代は、年齢では進まない

OKI(沖電気)が、55歳以上で勤続10年以上の社員などを対象に、「セカンドキャリア支援制度の特別措置」を実施すると発表しました。

募集人数は定めず、通常の退職金に特別加算金を上乗せし、希望者には再就職支援も行います。

OKIが挙げているのは、AI・DXの進展に伴う仕事や役割の変化への対応、成長領域への人材シフト、次世代への経験や知見の継承、事業戦略に合わせた人材配置の最適化です。

つまり、単に人件費を減らすというより、これから必要になる仕事に合わせて、組織の形を変えようとしている。

少なくとも、会社側はそのように説明しています。

一方、うちの会社には70代が3人います。

長く会社に関わってきた人たちなので、経験も人脈もあります。

過去の経緯を知り、顧客や取引先との関係を築いてきたことも、会社にとって大きな財産です。

年齢だけを理由に、会社からいなくなるべきだとは思いません。

ただ、実際に同じ会社で働いていると、問題は年齢ではないとも感じます。

役職や立場が変わっても、影響力は残る。

今の会社方針とは違う意見が現場へ直接届き、いったん決まった話が戻る。

そのたびに説明や調整が増え、現役世代の仕事が進みにくくなります。

ここで分かるのは、世代交代は在籍する人の年齢だけでは判断できないということです。

人が若くなっても、権限が移らなければ世代交代ではありません。

反対に、70代が会社に残っていても、判断を現役世代へ任せ、必要なときに経験を伝える役割へ移れているなら、世代交代は進められます。


中小企業では、人と会社が分かれていない

中小企業では、経営者の高齢化が続いています。

2025年版の中小企業白書でも、60歳以上の経営者が過半数を占めているとされています。

そのため、70代の経営者や元経営者が会社に残っていること自体は、珍しい話ではありません。

中小・零細企業で難しいのは、一人の人に多くのものが集中しやすいことです。

会社を作った。

株を持っている。

主要顧客との関係を作った。

製品や仕事の経緯を知っている。

重要な判断を長年担ってきた。

大企業なら組織や役職に分かれているものが、中小企業では一人の中にまとまっています。

そのため、社長から会長へ、役員から顧問へ肩書きが変わっても、実際の影響力までは簡単に移りません。

社員も、現在の責任者より、長く会社にいる人の意向を気にします。

形式上の責任者と、実際に判断へ影響を与える人が違う。

中小企業の世代交代が難しいのは、肩書きだけを変えても、この関係が残るからです。

経験を伝えることと、判断へ介入することは違う

長く働いた人が持つ知識は、資料だけでは簡単に引き継げません。

顧客ごとの事情や、過去に起きた不具合、設計を変更した理由、仕入れ先との関係、現場でしか分からない調整方法があります。

経験のある人が会社に残り、必要な場面で助言することには大きな意味があります。

ただし、経験を伝えることと、今の意思決定へ介入することは別です。

現役世代が決めたあとに別の指示が出る。

正式な責任者を通さず、担当者へ直接話をする。

現在の方針より、自分が慣れた方法を優先する。

こうなると、現場は誰の判断に従えばいいのか分からなくなります。

正式な責任者に従うのか。

影響力を持つ古参の意向を優先するのか。

両方へ配慮しながら進めるため、仕事は遅くなります。

一度決めても覆る可能性があるため、自分から動く人も減っていきます。

問題は、70代が働いていることではありません。

会社の中に、二つの指揮系統ができることです。

権限を残したままでは、次の世代は育たない

さらに難しいのは、判断へ口を出す人と、その結果に責任を持つ人が分かれてしまうことです。

方針を変える。

人事に意見を通す。

顧客対応を変更させる。

しかし、その後の説明や実務を引き受けるのは現役世代です。

これでは、責任を持つ側が、自分の判断で会社を動かせません。

現場にも「自分で決めても最後は変わる」「先に上の意向を聞いたほうが安全だ」という空気が広がります。

その状態で「次の世代が育っていない」と言っても、少し違います。

判断する権限を渡さず、重要な仕事も任せず、失敗しそうになれば取り上げていたら、人は育ちません。

人が成長するには、自分で決め、その結果を引き受け、失敗したら立て直す経験が必要です。

中小企業白書でも、権限委譲を進めている企業は、進めていない企業よりも、従業員の自主性が高まったとする割合が高い傾向が示されています。

また、事業承継後に主に後継者が意思決定している企業は、先代経営者が意思決定している企業より、事業再構築へ取り組む割合が高いとされています。

若手や後継者に能力がないから任せられない。

任せないから、能力が育たない。

この繰り返しでは、待っていても世代交代は進みません。

中小企業は、辞めてもらう前に仕事を引き継ぐ

OKIのような大企業は、制度を設けて人員構成を大きく動かせます。

退職金を加算し、再就職を支援しながら、必要な部門へ人材を移すこともできます。

一方、中小・零細企業では、一人が担っている仕事の範囲が広くなります。

営業と設計の両方を知っている。

主要顧客との関係を持っている。

製品の過去の経緯を把握している。

仕入れ先との付き合いや、会社独自の判断基準まで分かっている。

その人が辞めれば、人だけでなく、仕事や情報まで会社から消える可能性があります。

だから、単純に高齢の人へ退職してもらえば解決する話ではありません。

先に必要なのは、その人に集中している仕事を、個人から会社へ戻すことです。

顧客との関係を複数人で共有する。

過去の経緯を記録する。

判断基準を言葉にする。

現役世代を主担当にして、実際に決めてもらう。

前の世代は、求められたときに助言する。

これができなければ、退職されると会社が困ります。

困るから残ってもらい、残っているから、さらに仕事と情報が集中する。

中小企業では、この循環が起きやすいのだと思います。

世代交代で移すのは、席ではない

世代交代というと、社長の年齢や退職者の人数に目が向きます。

しかし、本当に次へ移さなければならないのは、人の席ではありません。

判断する権限。

判断した結果に対する責任。

顧客との関係。

長年積み上げた知識と経験。

この四つです。

肩書きを変えても、最後に判断する人が同じなら、世代交代したことにはなりません。

反対に、前の世代が会社に残っていても、この四つを次へ渡せているなら、世代交代は進んでいます。

まとめ

OKIは、55歳以上を対象に早期退職を募り、成長領域への人材シフトや、次世代への経験・知見の継承、人材配置の最適化を進めようとしています。

一方、うちの会社には70代が3人います。

この違いから分かるのは、世代交代は何歳で辞めるかだけでは決まらないということです。

70代が残っていても、経験を次へ渡し、判断を現役世代へ任せているなら、その存在は会社の力になります。

55歳で退職しても、知識が失われ、権限が一部の人に残ったままなら、組織は強くなりません。

問題は、高齢の社員や経営者がいることではありません。

役職を退いたあとも影響力を手放さず、今の方針や現役世代の判断を覆してしまうことです。

世代交代とは、人を若くすることではありません。

判断する権限と、その結果に対する責任を、次の世代へ渡すことです。

前の世代に必要なのは、会社から消えることではありません。

自分が会社を動かす立場から、次の世代が動かす会社を支える立場へ変わることです。

それができれば、70代の経験は会社の財産になります。

それができなければ、どれだけ肩書きを変えても、世代交代は進みません。

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