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関税12.5%で、どの会社が苦しくなる?保有株と勤務先の見分け方

米国が、日本を含む60カ国・地域に新しい関税を発動しました。

日本は12.5%と聞くと、米国へ輸出している会社は、利益も12.5%減るように感じます。

しかし、関税率と利益の減少率は同じではありません。

日本から輸出しているのか、米国で生産しているのか。関税を誰が払い、その負担を販売価格に乗せられるのか。

会社への影響は、この違いで決まります。


すべての商品に12.5%が上乗せされるわけではない

今回の関税は、日本から米国へ輸出するすべての商品に、一律12.5%を追加するものではありません。

商品によって税率や対象の有無が異なり、通常の関税率を含めて調整されます。鉄鋼や自動車など、別の関税措置が適用されている品目も対象外です。

そのため、「日本は12.5%」という見出しだけでは、個別企業への影響までは分かりません。

同じ会社でも、輸出している製品によって負担は変わります。

関税を払うのは、まず米国側の輸入者

関税を米国の税関へ納めるのは、輸入者として登録されている会社です。

米国の顧客が輸入者なら、最初に関税を払うのは顧客です。日本企業の米国子会社が輸入者なら、企業グループの負担になります。

ただし、米国の顧客が払うから、日本企業に影響がないとは限りません。

顧客が関税分の値下げを求めたり、発注量を減らしたり、仕入れ先を他国や米国内へ変更したりすれば、日本企業の売上や利益も減ります。

税関で誰が払うかより、最終的に誰が負担を引き受けるかが重要です。

利益率が低い会社ほど、打撃は大きい

例えば、日本企業が1億円分の商品を米国へ輸出し、1,250万円の関税がかかったとします。

売上高1億円、原価8,000万円なら、粗利益は2,000万円です。

日本企業が関税1,250万円をすべて負担すると、粗利益は750万円まで減ります。

関税率は12.5%でも、粗利益は62.5%減ります。

反対に、1,250万円を販売価格へ上乗せできれば、利益の減少は抑えられます。

関税率よりも、もともとの利益率と、値上げできる立場にあるかが業績を左右します。

影響が大きいのは、価格を決められない会社

関税の負担が重くなるのは、単に米国売上が多い会社ではありません。

次の条件が重なる会社です。

・米国向けの商品を日本で生産している
・利益率が低い
・一部の米国顧客に売上が偏っている
・長期契約で価格を変えにくい
・他社でも作れる製品を扱っている
・顧客からの値下げ要求を断りにくい

特に厳しいのが、代わりの利く部品や汎用品です。

価格を上げたことで、顧客が米国内や別の国の製品へ切り替えれば、関税だけでなく取引そのものを失います。

一方、独自技術があり、別の製品へ簡単に変更できない会社は、関税分を価格へ反映できます。

関税があぶり出すのは、商品の売上規模ではなく、会社の価格交渉力です。

米国売上が多くても、現地生産なら話は違う

米国で売っている会社と、日本から米国へ輸出している会社は同じではありません。

米国内の工場で製品を作り、部品も現地で調達している会社なら、日本から完成品を輸出する会社より関税の影響は小さくなります。

ただし、米国で組み立てていても、主要部品を日本から送っていれば、その部品には関税がかかります。

保有株を調べるときは、米国売上比率だけでなく、生産場所と部品の調達先まで確かめる必要があります。

保有株は、4つの項目に絞って調べる

決算資料や有価証券報告書では、次の4点を押さえます。

1.米国向けの商品をどこで作っているか

日本から輸出しているのか、米国で生産しているのかを調べます。

会社の公式サイトにある生産拠点や、統合報告書の地域別生産体制が手掛かりになります。

2.利益率はどのくらいか

営業利益率が低い会社は、値下げや追加コストがそのまま利益を削ります。

売上が大きくても、利益率が低ければ関税を吸収する余裕はありません。

3.過去に値上げできているか

原材料高や物流費の上昇に対して、販売価格を上げられた会社は、関税でも顧客と交渉できます。

コストが増えるたびに自社で負担してきた会社は、関税でも利益を削られます。

4.関税について会社が説明しているか

決算説明資料や質疑応答で、「関税」「価格転嫁」「米国生産」「現地調達」といった言葉を探します。

影響額や対応策を説明している会社は、すでに対策を進めています。説明がまったくない場合は、次の決算で業績予想が修正されないか注意が必要です。

株価が下がっただけでは判断できない

関税のニュースが出ると、自動車、機械、電子部品などが、輸出関連株としてまとめて売られます。

しかし、同じ業種でも生産場所や利益率、値上げする力は違います。

日本から薄利の商品を輸出している会社と、米国で独自製品を生産している会社を、同じ輸出企業として扱うことはできません。

ニュース直後に株価が下がっても、実際の負担が小さい会社はあります。

反対に、株価があまり動かなくても、利益率が低く価格を上げられない会社は、決算で関税の影響が表れます。

勤務先が輸出していなくても関係する

中小企業では、「うちは米国へ輸出していないから関係ない」と思いがちです。

しかし、自社が納めた部品や装置を使った完成品が米国へ輸出されていれば、関税の影響は国内の取引先まで届きます。

完成品メーカーが米国向けの生産を減らせば、国内の部品メーカーや加工会社への発注も減ります。

関税分を取り戻すため、仕入れ先へ値下げを求めることもあります。米国生産を増やし、部品を現地調達へ切り替えれば、日本国内の仕事がなくなることもあります。

一方、米国工場を増強するため、新しい生産設備や自動化装置の受注が増える会社もあります。

関税で国内の仕事が一律に減るわけではありません。生産場所が動くことで、受注を失う会社と得る会社に分かれます。

業績より先に、現場へ変化が出る

勤務先への影響は、決算発表より前に現場へ表れます。

・米国向け案件の延期
・取引先からの値下げ要求
・内示や生産計画の減少
・国内設備投資の先送り
・米国工場向けの新しい引き合い
・現地調達に合わせた仕様変更

こうした動きが出たら、取引先の先に米国市場がないかをたどります。

自社の製品が最終的にどこで売られているのかを知ることで、関税との関係が分かります。

関税が示すのは、会社の値決めの強さ

関税12.5%という数字だけでは、どの会社が苦しくなるかは決まりません。

差が出るのは、関税分を価格へ乗せられるかどうかです。

顧客が値上げを受け入れる製品を持っているのか。それとも、取引を守るために自社で負担するしかないのか。

関税の影響が大きいのは、米国で売っている会社ではありません。

価格を自分で決められず、関税を利益から支払う会社です。

保有株では、生産場所、利益率、値上げの実績を調べる。

勤務先では、自社製品の最終的な販売先と、取引先の生産計画を知る。

関税率より、取引の中で誰が価格を決めているのか。

そこが、会社への影響を分けます。

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