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「ウ」音


「羽人」

古代中国では仙人を、

羽人

と呼びました。「羽のある人」「飛翔する人」という意味で、仙人そのものです。

『楚辞』「遠遊」の、

仍羽人於丹丘

について、後世の注釈は、

羽人、飛仙也
羽人とは飛仙である

と明記しています。仙人が翼を持ち、雲中を飛ぶという理解は『論衡』にも確認されます。

中国音では「羽」は現在の普通話で ですが、日本漢字音ではです。

羽人=うじん
羽化=うか
羽客=うかく

特に羽客は、仙人・道士を意味する語です。

したがって、中国の神仙思想には実際に、

ウ〈羽〉=仙人化・飛翔・昇天

という語彙体系があります。

これは「于岐」の于=ウと音だけでなく、都怒我阿羅斯等の「額に角がある異形の渡来者」という性格を考える際にも、無視できない類例です。

「巫」もウ音を持つ神人集団

次に重要なのが、

です。現代中国語では 、つまりウに近い音です。

『山海経』には、

巫咸
巫即
巫朌
巫彭
巫姑
巫真
巫礼
巫抵
巫謝
巫羅

という「十巫」が登場し、霊山を通って天と地を昇降し、百薬を扱う存在として描かれます。

ここでは「巫」が単なる職業名ではなく、

人と神の間を往来する者
天地を昇降する者
薬と治療を扱う者

を表しています。

于吉も符水によって病を治し、神書を受けた道士です。『洞仙伝』系の記事では、于吉が神書を得て治病し、人々から神のように敬われたとされています。

したがって、

巫=ウ
羽=ウ
于=ウ

という三つの表記が、いずれも神・天・仙・治病に近い領域に集まることは確認できます。

「禺」も神名に現れる

『山海経』系統には、北方・北海の神として、

禺強
禺京

が登場します。

禺は中国音では yú/yù 系で、日本漢字音ではグ・グウですが、古い音を考えると、語頭に半母音を伴う「ユ・ウ」系として扱う余地があります。

禺強は北方・北海を支配し、人面鳥身あるいは海神・風神として描かれます。

これは人間の仙人名とは異なりますが、

ウ・ユ系音
鳥身
北海
神的存在

という要素を持っています。

都怒我阿羅斯等の記事にも「北海」が現れるので、比較対象としては面白い位置にあります。ただし、禺強と于岐を直接結ぶ証拠はありません。

禺→草冠をかぶると萬(卍)

「烏」も太陽・神異と結びつく

「烏」は日本音でです。

古代中国では烏、特に三足烏が太陽の精霊とされ、神仙世界の象徴になりました。また道教文献では、「烏臺」「烏角」など、烏を含む神仙的地名・異人名が見られます。『太上老君中経』にも、仙人的存在の所在地として「烏臺郷」が記されています。

ただし、烏は「ウという称号」ではなく、鳥・太陽の象徴です。このため、于岐の直接的な同類というより、ウ音に神聖鳥の観念が重なる例と見るべきです。

于吉と干吉の関係

そして核心となるのが、于吉です。

史料によって、

于吉
干吉

の両方が使われています。

『抱朴子』では于吉と記され、後世の仙伝・類書では干吉表記も併存します。

これは、

于吉=古い表記
干吉=別系統・後代の表記

という可能性を実際に示しています。



  • 于吉と干吉の表記併存

  • 羽人が仙人を意味すること

  • 巫が神人・治病者・天地の媒介者であること

  • ウ/ユ系の字が神仙語彙に複数現れること

ウ・ユ音(yu,wu)が神仙・祭祀・昇天の語彙群に集中しています。

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