性悪♡悪役令嬢アンネリーゼですが、前世はお局おばさん(天野ミツコ)でした 第4話前編 フリンテッセ
前話‥→性悪♡悪役令嬢アンネリーゼですが、前世はお局おばさん(天野ミツコ)でした 第3話後編 水の力(レゼ編)|にがよもぎあんこ
軍帥総監執務室 午後3時。
オルデラ大陸のほぼ北西に位置する魔帝国ことラビリンシア連合帝国。
その帝都サンダルフォン、さらに最奥に位置する魔帝の宮殿《シュロス・アードラー》——
重厚な黒檀の扉に守られた執務室は、薄暗いながらも壁に嵌め込まれた魔水晶の灯りと、巨大なシャンデリアの残光が織りなす、妖しく煌びやかな空間だった。
巨大な黒革張りの椅子に深く腰掛けた女が、ゆっくりと魔杯茶を啜った。長い黒髪を高く結い上げ、鋭い金色の瞳をした女——
魔帝軍 軍帥総監、フリンテッセ・ヴァン・シュヴァルツだ。
「……フン」彼女は杯を静かに置くと、無感情な笑みを浮かべた。
「密偵は既に皇国の中枢近くに配置済み……。
これで、格段に仕事がやりやすくなった……。ククッ……」
指先で黒革の手袋を軽く撫でながら、彼女は静かに笑う。
そう…この瞬間が堪らない。
前世ではただの新入社員だった自分が、今や魔帝軍の最高位軍帥として、
一国の命運を握り、盤面を操っている。
「これからの策は既に十手ほど用意してある……。
女神ルミナスへの干渉、コンサル魔導連の魔晶ログの完全掌握、
そして——皇国中枢への毒の撒き方……」
フリンテッセはゆっくりと目を細め、執務室の天井に浮かぶ巨大な魔力投影図を見上げた。
先日の大敗…相応の痛みはあったが兵の動員力は尽きぬ…。クク…こちらは人間だけではないのだからな?それに…トライ&エラーは軍事の基本中の
基本である。
「すべて、計算通り」
魔杯茶の残り香を楽しみながら、彼女は静かに呟いた。
「……さあ、次はどの駒を‥‥」
ドコオオオン!!!突然、凄まじい壁ドンが執務室に鳴り響く。
フリンテッセ「‥‥‥バカ共が」
魔帝宮の暗いが煌びやかな回廊ではいつもの光景が繰り広げられていた。回廊での筋肉自慢大会の最中——
カンガルー魔闘士の山田君がいつものように元気よく跳ねながら叫ぶ。
「みんな見てくれ! 山田君のこの胸筋、ルミナスに蹴り飛ばされたあとさらにパワーアップしてるんだぜ!」
身長5mの重量級デーモンの魔将ガルデンが大笑いしながら胸を叩く。
「はっはっは! 10km吹っ飛ばされて生きてるお前はマジで化け物だな、山田君!」
フリンテッセが静かに、そして相当冷たい目でその場に現れる。
山田君「あ 軍帥さんだ! 山田君の筋肉見てー!」
若干、魔将ガルデンは察して後ずさりした…。
「…山田君。そのルミナス本人による蹴り飛ばしの話、もう何回目ですか?あなたは先の大城壁前での戦闘時、前衛の先陣として無駄に突撃した張本人ですよね?
あのときのあなたの愚行のおかげで前衛軍が2万ほど蒸発しましたよ?」
山田君が誇らしげに胸を張る。「でも山田君、生きて帰ってこれました! ルミナスの蹴り、最高に気持ちよかったです!
また軍帥さんのために、いつでも先陣切りますよ!」
フリンテッセの目が完全に死んだ。
「……はあ?通常の人間なら即空中分解する蹴りを食らって『気持ちよかった』とか言ってる時点で、あなたはもう脳筋の最終形態ですね。
次に同じことをやったら、今度は私の方からルミナスに『もう10発お願いします』と直訴しますよ?」
山田君「えっ!? 山田君、軍帥さんに褒められたいだけなのに……!」
魔将ガルデンのそばに控える対魔剣のヒョウザンは魔剣に手をかけながら呟く。「……剣があれば、蹴りなど必要ない」
フリンテッセはこめかみを押さえながら、静かに吐き捨てた。
「……脳筋バカ共をまとめるより、皇子スメラギの魔晶監視の方がまだマシだったかもしれない……」
(つづく)
次です。→性悪♡悪役令嬢アンネリーゼですが、前世はお局おばさん(天野ミツコ)でした 第4話中編 統帥の途(みち)|にがよもぎあんこ

