果たせなかった約束
ウチには3人の娘達がいる。
たまに登場する長女と、
河童を見たことのある三女。
そして、まだ記事にはほとんど登場していない次女。
中学二年生。
そう、思春期ど真ん中だ。
小さい頃はお父さんにべったりだった。
どこに行くにも手をつないでついてくる。
仕事から帰ってきたら玄関で待っている。
寝るときも一緒。
そんな次女の事がもう可愛くて可愛くて。
溺愛していた。
子供たちが小さいときは、
手のかかった長女に嫁はんは付きっきりだった。
もちろん長女が悪いわけじゃない。
あの子にはあの子の頑張りがあった。
そんな中で、俺と次女の時間は自然と増えていった。
次女が小1の時だ。
学校の遠足で動物園に行くことになった。
楽しみで楽しみで、俺に、
「象さんいるかな?キリンさんも見れるかな?」
なんて事を、キラキラした目で話してくれた。
その時の顔が今でも忘れられない。
本当に楽しみだったんだろう。
遠足当日。
彼女は楽しみ過ぎてお腹が痛くて休んだ。
昔からそうだった。
保育園の運動会のダンスも、
楽しみにし過ぎるとお腹が痛くなった。
あの悲しそうな顔は今でも忘れない。
『お父さんが連れて行ってあげるからな。』
そう言うのが精いっぱいだった。
その後、世界は大きく変わってしまった。
そう、
コロナ禍。
学校行事は次々となくなった。
家族で出かけることも簡単ではなくなった。
あの時の「お父さんが連れて行ってあげるからな」という約束は、
果たせないままだ。
コロナ前に動物園だけじゃなく、色んな約束をしていた。
「今度連れて行ってあげる」
「いつか一緒に行こう」
そんな何気ない約束だ。
そのほとんどが、果たせないままになった。
「今じゃなくていい。」
あの日、俺はそう選んだ。
あの時は、それが一番正しいと思っていた。
いつからか、次女は俺の手を繋がなくなっていた。
話もほとんどしなくなっていった。
成長の証なのかもしれない。
でも俺には、
あの時の約束を果たせなかった父親に、
期待しなくなったんじゃないか。
そう思ってしまう。
今思えば、コロナのせいにするのは違う。
あの異常だった時代でも、もっと向き合い方があったのかもしれない。
年が離れて三女が生まれたのもあったかもしれない。
今まで末っ子だったのに急にお姉ちゃんになった。
家族の関心はそっちに行きがちになった。
次女はもう中学二年生だ。
今さら「動物園行くか?」なんて誘ったら、たぶん嫌な顔をされるだろう。
いや、返事すらしてくれないかもしれない。
あの日の約束を忘れられないのは、たぶん次女じゃない。
忘れられないのは俺の方だ。
あの日の選択は、間違っていたのかな。
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