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【メモ】聖とらのすけの殉教

 三世紀ローマの皇帝、クラウディウス2世は若者の結婚を禁止した。「国家のための強兵をつくる」ことが目的だそうだ。

 当時のローマは軍人皇帝時代。内戦もさながら異民族との戦いを続けており、国境付近は常に戦場と化していた。そんな中で皇帝が欲しがったのは、戦いに集中する戦士。守るべき家族を持ち、戦地に行きたがらない兵士は必要なかった。国家は、愛を『足枷』と呼んだ。

 そんな中で、皇帝の意に反し、隠れて若者同士の結婚を執り行っていた一人の男がいた。キリスト教司祭のウァレンティヌス、愛の守護聖人として知られる聖バレンタインである。

 彼は国家によって個人の幸せが力づくで奪われることを良しとしなかった。愛し合う若者たちが「人生を共にしたい」と想う気持ちを命がけで守った。

 だがそれも皇帝の知るところとなり、彼は捉えられ、獄中で最期を過ごしたのちに処刑された。それが西暦264年(または270年)2月14日のことである。

 彼の存在は歴史的根拠に乏しく、カトリック教会も公式な聖人カレンダーには載せていない。だが、彼はおそらく実在したのだろう。彼が命がけで守った未来ある若者たちの愛。その愛の結果が今に伝わっているのだと信じたい。

 今でこそ、愛の告白イベントとして使われる『バレンタイン』の名。町中にそのフレーズはあふれ、ポップなフォントで店頭を飾る。だが、その重さを、命がけで愛を守る気持ちを理解して使わねば、僕らは愛の歴史に顔向けができぬ。

 義理だなんて言っていたら、バレンタイン司祭の死に泥を塗るようなものだ。彼は義理だてのために処刑されたのではない。本気で若者たちの未来を、純愛を守るため天に召された。

 いや、僕は別にバレンタインデーが嫌いなわけじゃない。中学まで義理チョコしかもらえなかったことを負の記憶としているのは事実だが。愛を伝えるイベントの日を優しく見守りたいとは思っている。職場の若者たちが浮足立っているのを見るのも微笑ましいものだ。

 でも僕はバレンタイン司祭のように、我が身を犠牲にしようとまでは思わない。

 だから、義理チョコのお返しに有名店の高級スイーツをねだるのは、今年こそ本当にやめてください。

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